第39話
ソラサイド
私の歓迎会なのにどんなに待っても待っても1番来て欲しい人がまだ、来てくれない事から私は1人イライラしていた。
SR「ねぇさんは一体、何やってんの!?先輩!また、なんか仕事押し付けたりしてませんよね!?」
セ「まさか!もう、来てもいい頃なんだけどね…」
SR「もう…遅いな…」
隣に座るナオちゃんはスマホに夢中でみんなは私の歓迎よりもお肉に夢中。
そんな野郎たちを横目に私は店の入り口をじっと見てねぇさんが来るのを今か今かと待っている。
SR「あれ?そういえばジュイは?」
ねぇさんのことで頭がいっぱいだった私はジュイがいないことに今気づくと肉を焼きながらトウジが言った。
T「事務所にスマホ忘れたから取りに帰った。タクシーで事務所まで戻るって言ってたけど…ジュイも遅いね?」
N「ソラ?スマホ鳴ってるよ?」
ナオちゃんが私のスマホとカバンから取り出し私に渡してくれた。
SR「あ、ありがとう。ねぇさんからだ!もしもねぇさん?遅………え?ウソでしょ…!?分かった!!すぐ戻る!」
N「ソラ?どうした?」
SR「ねぇさんが…男に襲われて怪我したって…今、事務所でジュイが一緒にいるみたい。私、事務所戻るね。」
怪我したと聞いた私は慌ててカバンと上着を持ち立ち上がろうとすると、ナオちゃんが私の腕を掴み止めた。
N「ま…待て…ソラこれ…見ろ…」
ナオちゃんが見つけたSNSに私も目を通すと想像もしてなかった動画が流れ拡散されていて私は目を疑う。
SR「これって…」
そのアカウントからはねぇさんとジュイがこの店近くの公園で抱き合っている写真とホテルの部屋の中に入って行く動画が投稿されていた。
T「これ…リノンやっぱり消してなかったな…。」
トウジのその言葉によりその動画はリノンがトウジを脅すときに使った動画だと分かり、私はナオちゃんに指示を出して先に店を出た。
SR「そのアカウントと写真と動画、消されても残るように証拠残しておいて。この動画を持ってるのはリノンだけ…朝、ねぇさんと会った時の服装と同じってことはこの公園での写真は今日でしょ?ってことはねぇさんを襲ったのは…リノンと関係ある人間かもしれない!私ちょっと先行くから。」
セ「ちょっとちょっとなんの話!?」
N「とりあえず、騒がれるのは間違いない。俺たちもすぐに事務所へ戻ろう。」
そして、私たちは騒ぎになる前に慌てて事務所へと戻った。
事務所に着くとソファに倒れ込んでいるねぇさんと今にも泣き出してしまいそうなジュイがいた。
SR「ジュイ…何があったの?」
J「スマホ忘れて歩いて事務所に戻ってたら…公園でミラの叫び声が聞こえてまさかと思ってたらミラが男に襲われてた。たぶん…肋骨折れてる。」
SR「ねぇさん可哀想に…怖かったね…こんなに涙流して…」
人前で意地でも泣かないねぇさんの頬には涙の跡がいくつもあり私はその涙の跡を撫でた。
J「違う…それは…俺が泣かせた。」
見知らぬ男に襲われて怪我したねぇさんをジュイが泣かした?そう聞くと私の中にある何かがブチっと音を立てて切れた。
SR「はぁ!?どういうこと!?なんでジュイがねぇさんを泣かせるの!?」
ジュイの胸ぐらを掴みそう問い詰めるとナオちゃんに止められた。
N「ソラ落ち着けよ…」
SR「だって…男に襲われて怖い思いしてるのに泣かせるって…意味わからないんだけど!?」
J「俺だって…意味わかんねぇよ…」
SR「はぁ!?」
ジュイの開き直るような態度にさらに私は怒り心頭だ。
J「俺はずっとミラはみんなに好かれて誰にでも優しくて自分を犠牲にしても誰かのために動くような女だと思ってたのに、ミラは俺の知らない所で誰かに嫌がらせするような人間で、彼氏を作らねぇのも男と遊びたいからで色んな男とも体の関係があるって聞いても俺はミラのことが好きで…ミラのことが忘れられなくて…。」
ジュイの口からミラというねぇさんの名前が出てくるわりに、その内容は遥かにねぇさんからかけ離れてる内容ばかりで私はつい、泣きじゃくりながらそう話すジュイにぽかーんとしながら話を聞いていた。
SR「ねぇ、それ誰の話?今じゃなきゃダメな話なのかな?」
J「はぁ!?だから言ってんだろ!?ミラの話をしてんだよ!?」
SR「ねぇさんが誰かに嫌がらせをしたの?」
J「うん…」
SR「ねぇさんが彼氏作らないのは男遊びがしたくて作らないの?」
J「そうだって言ってんだろ!?」
泣きながらそう叫ぶジュイに私はもう、我慢の限界だった。
SR「はぁ!?いつまでも子供づらしてねぇさんに甘えてんじゃないわよ!?この人がそんな事するわけないでしょうが!!そんな事誰に聞いたの!?あんたはその大きな目で今までねぇさんの何を見てきたのよ!?」
甘ったれてピーピー泣きながらそう話すジュイにブチギレた私は怒鳴りつけた。
J「え………………。」
T「ジュイあのさ…ねぇさんと身体の関係がある色んな男って…誰?」
トウジにとってもねぇさんは好きな人で、自分の好きな人のことをそんな風に言われたのが勘に触ったのか、トウジは少し不満げな顔をしてジュイに問いかける。
すると、ジュイの視線がトウジに釘付けとなり私もトウジも固まった。
J「え…………っと……。」
T「え!?もしかして俺!?」
J「え…違うんですか?」
T「いや…俺は…」
キョドキョドしながらそう否定するトウジと状況が把握出来ないというような顔をするジュイに私の雄叫びが襲い掛かる。
SR「トウジはまだ、童貞だからねぇさんとそんな関係なんてありえないわよ!むしろ、トウジにそんな根性あったらこんな何年も苦労してないわよ!ジュイもね!?ねぇさんを部屋に連れ込む根性あるなら少しくらいねぇさんを信じなさいよーーー!!!!」
N「ソラ落ち着きな…。」
ナオちゃんが荒れ狂う私の肩を優しく持ち私を落ち着かせる。
J「え…………その事…なんで知ってんの!?」
T「SNSでその時の動画が流されてる。たぶんリノンの仕業だと思うけど…ねぇさんを襲った男ももしかしたらリノンと関係あるかもしれない。」
トウジが落ち着いた声でそう話すと、ジュイの顔色が真っ青になっていき壁にもたれ掛かって今にも倒れそうになっている。
J「え!?リノンちゃんが!?リノンちゃんって…あのリノンちゃんですよね?」
SR「そうだけど…あんたもしかして…リノンにそんな変なこと吹き込まれたんじゃないでしょうね!?」
私はこれはすべてリノンの仕業だということがすぐに分かった。
J「吹き込まれた…ってことは…全部リノンちゃんの作り話…ってこと…?」
SR「あぁー腹立つ。作り話に決まってんでしょーが!こっちに帰ってきて早々なんなのマジで!!それで、ねぇさんよりもリノンの事を信じた。というわけ!?もう信じられないよ!!」
J「いや、だってあれは…信じるだろ……普通………。」
I「いや…何があっても好きな人を信じるだろ…普通。」
私が1人大騒ぎしてブチギレ倒している後ろで、大人しく話を聞いていたイチくんがジュイの前に立って静かに言った。
I「ねぇさんもジュイの事大好きみたいだし、ジュイだからねぇさんのこと諦めようと思ったけどやっぱりお前にはねぇさんを任せれないな。」
イチくんはそう言ってソファに倒れ込んでいるねぇさんを抱きかかえた。
J「イチさん!それは!」
I「自分の感情に任せてねぇさんに酷いこと言ったんじゃない?こんな顔させて…幸せにするつもりがないなら好きなんて初めっから言うなよ。」
イチくんはそう言うとねぇさんを抱きかかえたまま連れて行き、その背中を追うようにトウジも付いて行った。
すると、少し離れたソファに座るユウが言った。
Y「あぁ〜あ。1番怒らせたら面倒な人を怒らせちゃったな…ジュイ?イチさんがあぁなったら…なかなか許してくれないぞ?」
少し楽しんでるかのように見えるユウはSNSを見ながら言った。
SR「SNS炎上して大変な事になってるよね?」
ユウと一緒に見ているハヤトにそう問いかけるとハヤトは深刻な顔をしている。
H「大変どろこじゃないよ…ねぇさんの顔…隠してないからすぐ、俺たちのファンにあの女マネージャーだ!って身元がバレた。」
M「この調子だとねぇさんしばらくは外…歩かれないな…」
N「1人にさせるの不安だな…もし、またなんかあったらって考えるとゾッとする。」
マサトとナオちゃんが並んでそう話しているとジュイがまた、とんでもない事を言い始める。
J「俺の買ったばかりのマンションにミラを住まわせます。」
N「はぁ!?」
J「俺が買ったマンションだとセキュリティーもしっかりしてるし…こうなったのは俺の責任なんで。」
Y「責任なんて言葉を知ってるなら…もう少し考えて行動しろよ。」
ユウがさらにジュイを追い詰めるように冷たい視線でそう言う。
H「でも、あの時はジュイも熱出してて体調悪くてねぇさんが看病してくれたんでしょ?あの動画はキスはしてるように見えるだけだよね?」
ハヤトは追い詰められたジュイを庇うようにそう言った。
J「しました…。」
M「え?」
J「俺…我慢できなくて…何度かミラに関係を迫りました…拒むミラに…」
ジュイがそう言いかけた時、ユウの重い拳がジュイの頬にめり込んだ。
SR「ユウ!!ちょっと…ジュイ大丈夫!?」
床に倒れこむジュイに近づくとユウは冷たい目をして言った。
Y「お前何やったか分かってんのか?そんな事も我慢できねぇ男が…責任なんて言ってんじゃねぇよ…!!」
その言葉を残してユウは消えていき…慌ててその背中をハヤトが追いかけた。
J「…こんな事だったら…もうミラを好きになる前に…戻りてぇよ…」
ジュイはそう呟き、下を向いて涙をポロポロとこぼした。
つづく
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