第36話
ミラサイド
イチが帰ってから何度かジュイに連絡してみたけど…やっぱり折り返しはなかった。
*「自分がちゃんと話そうって言ったくせに…リノンちゃんと一緒にいたら…どうしよう……」
私の頭の中には韓国での光景がぐるぐると周り余計なことばかりが膨らんでいった。
そして次の日
事務所に出勤すると慌ててソラが私の元へやって来た。
SR「ねぇさんおはよ!ヤケドまだ痛む?」
*「おはよ。うん…まだ少し痛むかな。でも、後も残らないみたいだし大丈夫だよ。ごめんね心配かけて…」
SR「ううん。ねぇさんあのね?ねぇさんに報告があるの。」
*「報告?」
SR「うん…私ね?ナオちゃんと婚約したよ!」
*「そっか…彼氏とついに婚約したんだね……ん?ナオ!?え…ソラの彼氏って…ナオだったの!?」
ソラに恋人がいるとは知っていたけど、ここ最近のソラの行動を見ていたら私はてっきりもう彼氏とは冷め気味でトウジに気持ちがいっているもんだと思っていたから婚約と聞いて私は驚いた。
SR「うん…今日の夜に歓迎会してくれるでしょ?そこで報告する予定なんだけど………」
*「ダメ!そんなの…ダメだよ…」
もし…ソラが自分の本当の気持ちを隠してナオと一緒になろうとしているなら…そんなの3人とも不幸になるだけだと思った私はソラの両手を包み込み必死で止めた。
SR「え?」
*「ソラ…あのね?ちゃんと自分の気持ちに素直にならなきゃ後悔…するよ!?きっと…トウジも…」
SR「やっぱり勘違いしてると思った。ねぇさん?あれ嘘だから。」
私の深刻な言葉をあっけらかんとした顔でそう言ったソラに私は頭の中にクエスチョンマークが浮かんでは消えていく。
*「え?嘘?」
SR「トウジが私の事好きっていう噂あれ嘘だよ。私はナオちゃんを本気で愛してるしトウジは私のこと何でも話せる親友としか思ってないよ。」
*「え…でも昨日とかなんか2人とも切なそうな目で見つめあってたじゃん?」
SR「それは…まぁ、色々あったのよ。私はナオちゃんひと筋だからね!ねぇさん祝福してくれるよね?」
*「もちろんソラがナオを愛してるなら祝福するけど…でも、なんでトウジはそんな嘘ついたんだろ?」
SR「トウジもトウジなりに色々考えた結果よ?じゃ、ねぇさん!夜、楽しみにしてるからね?」
*「あ…うん。おめでとう!じゃ、あとでね?」
ソラに手を振り私はデスクに座り直して仕事を片付けながらスマホをチェックする。
ジュイに送ったメッセージは既読にすらならず私は深いため息を落とした。
スケジュール帳を確認するとメンバーたちはレコーディングの修正が終わり、ダンスホールで振り付けの練習をしている頃だろうか…?
ヤケドが落ち着くまではデスクワークで大人しくしてろって先輩に言われたけど私は気になって仕方ない。
落ち着かない私は立ち上がってダンスホールへと向かい窓からこっそりダンスホールを覗くとみんなのすごい熱気が漂っていた。
すると、私に気づいたハヤトがニコッと笑って手招きする。
私もそれに応えるようにニコッとしてダンスホールの中へと入った。
H「来たなら入ればいいのに。あんな所から覗いてさ?」
ハヤトはタオルで汗を拭きながら笑った。
*「邪魔になると悪いなと思って…ごめん。」
H「ううん。ちょうどもう終わろうかって話してたんだよ。ソラの歓迎会までまだ少し時間あるけどね?みんなそれまでどうすんの?」
ハヤトは水を飲みながら休憩しているメンバー達にそう問いかけた。
Y「俺は作業室で少しだけ作業してからソラの歓迎会行く。」
ユウはスマホをチャックしながらそう答えた。
M「俺はトウジとナオさんと一緒に生配信しようと思って。」
マサトはそう言って2人と顔を合わせる。
I「俺は今からまた、レコーディングだよ。」
H「ジュイはどうするの?」
J「俺はまだ体調悪いんでもう少し、作業室で寝ます。」
H「そっか…」
*「ジュイまだ、体調悪いの?大丈夫?」
私がジュイの腕に手を伸ばしながらそう言うとジュイにサッとその手を避けられ、その場にいたメンバーもそれに気づき一瞬、緊張感が漂った。
J「大丈夫だから…」
*「ちょっと話しがあるんだけど作業室に行ってもいい?」
J「…………分かった。」
そして、私は重い足取りのジュイと一緒に作業室へと向かった。
緊張のせいで血流が良くなってるのか昨日ヤケドした所がザクザクと痛む。
ガッチャっと音を立てて開いた扉の中に入って行くとジュイは私に背を向けて座った。
J「で?話って何?」
*「うん…あのね…その…私たちそういう関係になったじゃない?でも…私あの時…」
J「なかった事にしたい?」
私はジュイの予想外の言葉に思わず言葉を失う。
…そんなわけない…なかった事にしたいんじゃなくて、なぜジュイの部屋からリノちゃんが出てきたのか、なぜジュイが私を避け当たりがキツくなったのかちゃんと知りたかっただけ。
*「違う!そうじゃなくて!」
私が振り絞るように否定するとジュイは遮るるように言葉を返す。
J「トウジくんともヤったの?昨日、ミラの家行ったらイチさんが中から出てきだけどまさかイチさんともそういう事ヤってんの?俺が知らなかっただけで前から他のメンバー達とそういう事ヤってたの?だから平気でみんなとキス出来たのかよ…?」
背中を向けていたジュイは振り返り言葉を畳み掛けるように言ってまるで私を問い詰めるような目をしていた。
*「ジュイ……何言ってんの………。」
J「俺、ミラのこと…かいかぶってたわ…俺はセフレなんて…そんな相手いらねぇから。」
*「誰がそんなこと言ったの…?」
J「そんなことどうでもいいだろ?軽々しく男と寝る女に俺は興味ねぇから…」
そうジュイに言われた瞬間…私の中で信じようとしていたものが崩れた瞬間だった。
*「トウジが言ったの?私とヤったって?イチが言った?私と寝たって?誰がそんなこと言ったのか知らないけど…こんなに長い間一緒にいてジュイは私がそんな事する女だと思ったんだね…。やっぱり私たち間違えたね今までの事は忘れよう。ジュイの言うように…なかった事にしよう。じゃね…」
悲しかった…他の男とジュイは違うと思っていた。
本気で私のことを好きでいてくれてると思っていたのに、ジュイは私の事をそんな女だと思っていたんだと思ったら苦しくて耐えられなかった。
私は震える身体でジュイの作業室を飛び出し涙が出そうになるのを深呼吸して落ち着かせ歯を食いしばった。
つづく
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