第31話
ミラサイド
次の日
メンバーが出演するバラエティー番組の収録が入っていた。
私はメンバーが来る前に楽屋に入り、プロデューサーへの挨拶回りと楽屋準備をする。
続々とメンバーが楽屋に入りそれぞれ準備していった。
そんな中、たまたま目についたのはソラとトウジが暗い顔をしてお互い見つめあっている姿だった。
私はそんな2人を見て気になって目が離せない。
トウジはまだソラのこと忘れられてないんだと思うと私まで切なく胸が痛む。
もしソラがトウジとうまくいってくれたらどんなに幸せなんだろうと思いながら、ソラに話しかけに行こうとすると後ろから声をかけられた。
J「…ミラ…ちょっと話したい。」
後ろを振り返るとそこにはずっと私を避けていたはずのジュイが暗い顔をして立っていた。
私もジュイとちゃんと話をした方がいいと思っている。
でも、今から収録のあり人目の多いこの場所ではとてもそんな話はできる状況ではない。
そう思った私はジュイに言った。
*「ここじゃ話せないよ。仕事が終わったら…ゆっくり話そう?ね?」
しかしジュイは私のその対応に納得がいかないのか、今にも泣き出しそうな顔をして私をじっと見つめる。
その顔の理由がまだ分からない私はジュイの顔を覗き込むと、ジュイが口を開いた。
J「トウジくんとも付き合ってるの?」
ジュイから出たまさかの言葉に私は耳を疑い言葉を失った。
*「え?」
J「本当はトウジくんが好きなんだろ?」
ジュイのその真っ直ぐな目には涙がユラユラと揺れていてる。
ジュイは…一体…なんのを話してるのだろうか?
確かにトウジのことは好きだが、それは他のメンバーも同じ好きで、ジュイがそんな悲しそうな顔をして私を問い詰めるように言ってくる言葉の意味が分からない。
*「なに言ってるの?とりあえず、仕事が終わったらゆっくり話そう?」
そう言って涙目のジュイを落ち着かせるように私がジュイの腕を撫でようと手を伸ばすと、思いっきりその手をジュイに振り払われた。
J「触んなよ…男だったら誰でもいいのかよ。」
ジュイは私に酷い言葉を吐き捨てるように言うと私の元を離れて行きヘアメイクをする為、鏡の前に座った。
え…今の…私に言ったの?
一体…何が起きたんだろ…
ジュイは何を勘違いしているんだろう…
私はジュイの言葉に耳を疑い呆然としていると、楽屋の中にいた賑やかだったはずのスタッフやメンバー達は静まり返っていて何事かと私をじっと見つめている。
その視線が痛くてどうにかしてこの場を和ませなきゃ…そう思っているとそんな静寂を切り裂くようにリノンちゃんが楽屋の扉を勢いよく開けて入ってきた。
リ「お疲れさまです♪」
その甲高い声が楽屋中に響き渡り、私に向けられていた視線が一瞬にしてリノンちゃんに注目する。
そしてなぜかトウジはハッとし焦ったような顔をして立ち上がると、慌ててリノンちゃんのそばに寄り添い、初めて見た仲睦まじい様子のリノンちゃんとトウジをみて私は驚いた。
N「リノンちゃんどうしたの?」
突然、ここに来るはずのないリノンちゃんが楽屋に来たのでナオがリノンちゃんにそう問いかける。
リ「実は、ヘアメイクの方が1人お休みとお聞きしたので…人手が足りないと思ってオフだったんですけどヘルプに来ました。」
N「あ、そうなの?ありがとう。」
リ「いえいえ。」
そう言ってリノンちゃんはナオと話し終えるとトウジに微笑みかけてジュイの後ろに立った。
ジュイは特にリノンちゃんが来たことにも反応をする事なく、そのままじっと目を閉じていた。
その間もトウジはなぜかずっとリノンちゃんを見つめていて、そんなトウジをソラが悲しそうに見つめている事に私は気づいた。
もしかしてやっぱり…ソラもトウジのこと好きなんじゃ……?
両想いかもしれない2人を見つめているとなぜか、マネージャーの私がリノンちゃんに呼ばれた。
リ「あ、あの〜ミラさん?ちょっとお手伝いしてもらえます?」
*「え…私?あ…うん分かった。」
内心、なんでスタイリングも出来ないマネージャーの私がリノンちゃんのヘルプをしなきゃいけないんだろうと思ったが、スタッフが1人休んで人手が足りないのは事実。
私は少しでも作業が円滑に進むのであればそれでいいと思い、リノンちゃんの横に立つとソラが少し怖い顔でリノンちゃんに言った。
SR「手伝いが必要なら私が入るけど?」
リ 「私はミラさんにお願いしたの。」
いつもよりトーンの低い声のリノンちゃんとソラの声に私はドキッとし、楽屋に張り詰めたなんとも言えない空気をかき消すために笑顔で言った。
*「大丈夫だよ。何を手伝えばいいかな?」
リ 「ジュイさんの髪を巻くのでアイロンを私が手を出したら渡して貰えますか?で、私がアイロンを渡したら受け取ってください。それの繰り返しだけです。」
*「あ、うん。それぐらいなら大丈夫!」
そして、私は言われた通りリノンちゃんが手を出したらヘアアイロンを渡し、ヘアアイロンを差し出されたら受け取り、それを数回繰り返していた。
その作業にも慣れてきた頃、リノンちゃんが手を滑らせてコームを落とした。
リ「あ…ミラさんコーム拾ってもらえます?」
*「うん…」
私は何も考えず床に落ちたコームを拾おうと少し屈み、リノンちゃんの手元から目を少し離したその瞬間…
私の腕に激痛が走った。
*「熱っ!!」
あまりの熱さと激痛に私はそのままその場にしゃがみ込んだ。
恐る恐る、痛みが走る腕をチラッとみると赤くタダレたようになっていて、私の声を聞いたメンバー達が驚いて私に近づいてくる。
i「ねぇさん!?こっちにおいで!!」
イチが慌てて私を立ち上がらせ洗面所に連れて行ってくれた。
i「ちょっと痛むだろうけど我慢…してね?」
私は激痛からイチの言葉に首を縦に動かす事しかできず、イチは遠慮気味に私の腕に手を添えて水でそっと優しく火傷した所を冷やした。
あまりの痛さに身体がビクッとなるとイチはもう片方の手で私の背中をさすった。
i「……痛いよな…冷やさないと跡残るから…ごめん…」
何も悪くないはずのイチが私にそう言って謝り私は必死に首を横に振った。
すると、私たちの背後からリノンちゃんとソラの揉めてる声が聞こえてきて、私の意識が自分の怪我よりもそちらに向かう。
SR「あんた、ねぇさんに何したのよ!?」
リ「私は何もしてないわよ!!あの人の不注意でしょ!?私のせいにしないでよ!?トウジ…怖いよ…私が悪者にされる…」
その言葉を聞いて2人の元に行こうとするとイチに動かないようにしっかりと腕を掴まれ、私は仕方なく遠くから揉めている2人ことを見ることしか出来なかった。
i「ねぇさん、今は自分の怪我の心配しな…。今すぐ病院に行っておいで。」
*「でも……」
i「大丈夫だから。セイジさんもいるし…あとは任せて病院に行った方がいい。跡が残ったら大変だ。」
セ「ミラ、ここは大丈夫だからイチの言うように病院行っておいで…」
騒ぎを聞きつけたのか、プロデューサー達と話をしに行っていたはずのセイジ先輩がいつのまにか楽屋に戻ってきていた。
*「すいません…ご迷惑をおかけして…」
セ「今日はそのまま家帰って休みな。」
*「はい…。」
今もなお私のことで揉めているソラとリノンちゃんを見つめながら、私はセイジ先輩にテレビ局の外にまで連れて行かれ、タクシー乗せられるとそのまま病院へと向かった。
つづく
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