第32話


トウジサイド


リノンが楽屋に来て俺はすぐに理解した。


あぁ…こいつは俺を見張りにきたんだろな…って。


そしたらあいつは…ねぇさんにジュイのスタイリングを手伝うようお願いして自分のそばに近づけた。


俺は嫌な予感がし…リノンのそばに行ったが俺が目を離した隙にねぇさんの痛々しい声が楽屋中に響いた。


そのねぇさんの声を聞いて俺の血の気がサーっと引いていく。


ふらつく足でねぇさんのそばに近づけば…ジュイはなぜか俺を睨んだ。


すると、さっと後ろから現れたイチさんがねぇさんを連れて洗面所に行った。


なんで俺はリノンが来てすぐにねぇさんをリノンへ近づけないように楽屋から出なかったんだろう。


俺がリノンから目を離さずちゃんと見張ってればこんな事にはならなかった。


ソラと言い合いをしながらながら俺の腕に巻きついてきたリノンが薄っすらと笑っているのが分かり、俺はそう心の中で意味のない後悔を何度も繰り返した。




〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜




ジュイサイド


昨日、ミラと愛し合ったあと俺は幸せな気持ちのまま深い眠りに落ちいていた。


しかし、その睡眠を邪魔するようにホテルのチャイムが鳴り響き、眠い目を擦りながら扉を開けるとそこにいたのはリノン ちゃんだった。


J「リノンちゃん?こんな朝早くにどうしたの?」


このホテルには後輩たちもいると昨日ミラが言っていたが、まさか俺の部屋にこんな朝早くからリノン ちゃんが来るなんて思ってもみなかった俺は、リノン ちゃんの姿を見て驚いた。


リ「ちょっと相談があって…人の目もあるし部屋の中に入ってもいい?」


一瞬、事務所のスタッフとはいえミラ以外の女をホテルの部屋の中に入れる事を考えたが、一般の人も同じフロワーを使っているとミラが言っていたのを思い出し俺は仕方なくリノンちゃんを部屋の中に入れた。


J「相談って…なに?」


そうリノンちゃんに問いかけながらベッドサイドに座ると、そこにはミラのピアスの片方が落ちていて俺はリノンちゃんに気づかれないようサッと隠した。


リ「うん…あのさ…ミラさんってさ…トウジくんとどういう関係なの?」


リノンちゃんはソファに腰掛けながらそう俺に問いかけた。


J「え?トウジくんと?」


リ「うん…実はさこれ見て?」


リノンちゃんがそう言って俺に見せたのはミラの実家である韓国料理屋の前でミラとトウジくんが熱い抱擁をしている写真だった。


信頼していた2人の思いもよらない写真をリノンちゃんから見せられた俺は頭の中が真っ白になった。


J「なんだよ…これ…」


リ「ウチのパパ週刊誌の会社の社長でね?そこの記者が撮ったみたい。私がお願いしてこの写真、表に出ないように止めてもらったんだけどね…こんな堂々と外でタレントと抱き合うなんて…マネージャーとして自覚ないっていうか…ちょっと考えられないよね。」


トウジくんとミラは確かにメンバーの誰よりも昔から仲が良かった。


そんな2人をみて俺は嫉妬した時もあったが…まさか…そんなこと…そう思いながら俺は震える声を絞り出す。


J「な…なんかの間違いだろ?」


いまだに信じられない写真に俺がそう言うとリノンちゃんは微かに微笑んだ。


リ「間違いだといいんだけどね……ごめんね朝からこんな話……」


リノンちゃんはそう言うとその写真を俺に見せるだけ見せて突然、部屋から出て行った。


どれくらい時間がたったのだろう?


写真みたショックから呆然としているとまた、インターホンがなり扉を開けると焦った顔をしたスタッフが立っていた。


ス「ジュイさんもうお時間ですよ!支度急いでください!」


そう言われた俺はぼんやりとした頭のまま身支度を整え、集合場所に向かうとそこにはミラとトウジくんが仲良くベッドサイド並んで座り楽しそうにコソコソと話をしていて、俺が来たことに気づいた途端、アッとした顔をして2人は距離をとった。


そんな2人の行動を見て俺の頭の中にはリノン ちゃんに見せられた写真が思い浮かび、俺を支配し嫌な気持ちにさせる。


今の俺はミラのそばにいると自分の感情をコントロールすることが出来ず、きっとミラに酷い言葉を言ってしまう…


そう思った俺はわざとミラを避けるようにして過ごした。



つづく

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