第27話
身体が欲で満たされた後
横で寝息を立てスヤスヤと眠る可愛いジュイの顔をみて、なんて事をしているのだろうとマネージャーとしての罪悪感とジュイに対する愛おしさの狭間で押しつぶされそうだった。
しかし、ジュイの溢れるような本心を聞いた私はジュイの言葉を信じたい…そう強く思ってしまった。
ジュイのおデコにそっと手を伸ばすと不思議なことに熱は下がっていて、私は布団をジュイの肩までかけ直し、服を着て自分の部屋に戻り熱めのシャワーを浴びた。
あの時、ジュイも言っていたけど…
不思議とジュイに触れられると私自身も我慢が出来ず抑えきないようになった。
あの感じた事のない気持ちは一体なんなんだったんだろ?
身体の中からジワジワと沸き上がるようなそんな感じだった。
シャワーから出て窓の外を眺めるともう、空は薄らと赤らみ始めていた。
そして、私は一睡もすることなく出発する身支度をした。
集合の約束は9時前に私の部屋に集まってそのまま空港に行くことになっている。
集合時間が近づき、支度を終え1番に私の部屋に来たのはハヤトだった。
H「ねぇさんおはよー。」
*「お…おはよう。」
ハヤトが中に入ると次々と他のスタッフ達も私の部屋に集まった。
H「ねぇさん大丈夫?寝不足?」
*「大丈夫…ありがとう。」
ハヤトとそう話をしているとトウジも眠そうな目を擦りながら部屋に入ってくるが、やはりまだ体調が悪いのかジュイがまだ来る気配がないので、私は扉を開けて隣のジュイの部屋に行こうとした。
すると、何故かジュイの部屋からリノンちゃんが出てきて、思わず私は自分の部屋に戻り咄嗟に身を隠した。
ス「ジュイさん…遅いな…僕呼んできますね?」
時間になっても来ないジュイを心配して、他のスタッフが呼びに行こうとするので私は慌ててスタッフをとめた。
*「あと10分して来なかったら…ジュイの部屋に行って呼んできて…」
ス「10分…ですか?了解です。」
私は部屋の中にある時計を見つめながらジュイの部屋から出てきたリノンちゃんの事を思い出していた。
なんで今は彼らの担当でもないリノンちゃんがジュイの部屋から出てきたのだろう?
こんな朝早くからジュイになんの用があったのだろう?
頭の中でそんな言葉がグルグル回り、私はジュイが言ってくれた言葉を信じようと思うのに、不安が襲いかかり悪いことばかりが頭に浮かぶ。
ス「…ラさん!ミラさん!そろそろジュイさんの部屋に行って様子見てきますね!」
スタッフにそう言われてハッと我に返った私が時計をみると9時半になっていた。
*「あ…うん…よろしくお願いします。」
そんな心此処にあらずな返事をすると私の異変に気づいたのか、横に来たトウジが耳元でボソっと言った。
T「俺がジュイの隣の部屋で良かったね…ねぇさん?」
それを聞いた私は思わず背筋が凍る。
*「ト…トウジ…」
T「詳しくは帰国してから聞くけど…ガード…甘すぎ。声…俺の部屋まで聞こえてた。そこはねぇさんが気をつけろよ。」
そう言ってトウジは私のおデコを小突き、その場を誤魔化す言い訳すら思いつかない。
*「ごめん…。」
すると、ジュイがスタッフに連れられてやって来たので私が心配でジュイを見つめると、何故かジュイは私とトウジを見て眉間にシワを寄せると、私たちから視線を逸らし避けた。
態度が急変したジュイに驚き、その態度に不思議に思いながらも、飛行機の時間が迫っているため急いで空港に向かおうと部屋を出ると、ちょうど新人アイドルのみんなと一緒になった。
「おはようございます!!」
初々しい笑顔で私たちに挨拶をする彼らに私も挨拶をしていくと、微かな視線を感じ振り返るとそこにリノンちゃんがいた。
私の脳内にはジュイの部屋から出てきたリノンちゃんの姿が浮かび、モヤッした嫌な気持ちになると何故か、リノンちゃんは私をキッと威嚇するように睨んだ。
え…なんなの?
そう戸惑っていると周りのスタッフの挨拶によりリノンちゃんは一瞬にしてキラキラの笑顔に戻り、私にわざとらしく深々と頭を下げ、メンバー達にも愛想のいい笑顔をして挨拶をし、私はジュイとリノンちゃんが一瞬、目配せをしたのを見逃さなかった。
それをみた私は不安がさらに大きく膨れ上がり、リノンちゃんとジュイの関係がどういう関係なのかと疑ってしまう。
ジュイは私と視線が合いそうになると明らかに私から視線を逸らしわざとらしく避けていく。
そんな行動が悲しくもあり虚しくて、何がなんだか分からない私は飛行機の手続きなどをしながら慌ただしい時間を過ごし、私たち無事…日本に帰国した。
朝からまともにジュイと目も合わせていなければ…ひと言も話しをしない重い空気のまま彼ら3人を寮まで送った。
*「お疲れ様…ゆっくり休んでね。」
H「おつかれ〜。」
J「………。」
T「ねぇさん…話があるから俺も一緒に事務所…行くわ。」
トウジの言葉を聞いて車から降りようとしていたジュイが振り返ると、その顔は眉間にシワを寄せて私を睨みつける。
*「話し…?」
T「そう大事な話。」
*「分かった…」
私がそう返事をするとジュイは私に聞こえるようにため息を落とし車から降りて行き、荒っぽく扉を閉めた。
私はそんなジュイの態度に胸が締め付けられる中、寮のマンションに入るまでジュイを見送るとトウジと一緒に事務所へと戻った。
つづく
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