第25話


数日後


いよいよ韓国でのプロモーション活動のため私はハヤト、ジュイ、トウジと共に韓国へ出国した。


チラッとスマホをみるとナオからメールが入っていた。


頼れるリーダーナオ

ねぇさん、ジュイはまだその変な薬から醒めてないから今回の韓国でのプロモーションで細心の注意を払うようにね?

何かあったらハヤトに頼りな。

あいつはもう醒めてるから安心して話せばいいよ。

じゃ、俺たちは台湾へのプロモーション行ってくる。



頼りがいあるナオらしいメッセージで見て、危なっかしい時期もあったけど今じゃ本当に信頼できるリーダーになったんだなと思う反面…何も成長出来ずにいる自分が情けなくなった。


*「じゃ、韓国でのプロモーション!気合い入れて行きますか!」


弱音ばかり吐いていても仕方ないと思った私は気合いを入れ直すと、まだ寝起きで眠そうな3人は私の声にぼや〜っとした顔をして私を見上げた。


無事、韓国に着き打ち合わせをしてスタジオに入ると、眠そうだった彼らのその顔もプロの顔となり、思わずウチのアーティスト凄いでしょ?っとスタジオ内にいるスタッフ達に自慢したくなるほどのオーラを漂わせる。


そして、3日に渡る雑誌撮影とインタビュー収録、そしてバラエティ番組の収録も順調に終え、最終日、彼らの疲労も頂点に達するころ事件は起きた。


*「ハードだったけどよく頑張ったね…お疲れ様!」


T「疲れた〜!!」


トウジはそう言って車の中で背伸びする。


*「時間外だけどルームサービスに連絡してるから…あと、ホテルだけどね?新人の子達と同じホテルだから。」


私は助手席から後ろを振り返り、後ろに座る3人と話をする。


いつもなら1番にお腹が空いたと騒ぐジュイが何故か今日一日中、大人しくて私は不思議に思っていた。


H「あいつらも今、日本なの?」


*「そうそう!韓国デビューして今、握手会してるの。」


T「あいつらもついに韓国デビューか〜。」


*「あの子達も凄く頑張ってる…先輩に負けないようにってね…ほんと可愛いよね。」


まだ、デビューしたばかりの10代半ばの子たちがあまりにも初々しくて可愛らしかったので、ついそう話をしていると車内の空気をピリッと変える声が聞こえた。


J「俺の前で他の男…可愛いとか言うのやめて。」


ジュイのその言葉により車内は静まり返った。


ハードだったから疲れて不機嫌なんだと私は勝手にそう思っていたが、ジュイのその威圧感ある話し方に私は言葉を失う。


H「はぁ……(ため息」


T「男って…俺たちの後輩じゃん?」


車内の空気が悪くなったことに気づきハヤトとトウジが気を遣ってジュイをなだめるようにそう言ってくれたのが、私としたらそれがまた申し訳なくて私は謝りすぐに切り替えて業務連絡をした。


*「…ご…ごめん…次から気をつけるね。あ…あと、今回のホテルはワンフロワー貸し切りじゃないからちゃんと鍵…ロック掛けてね?危なそうな人がいたら相手にしないで私に連絡すること。絶対に近づいちゃダメだよ?あと、いつもみたいにふらふら廊下で遊ばないこと。あとは〜」


H「ねぇさん…もう、俺たちそこまで子供じゃないから大丈夫だよ。」


*「あ…ごめん…ついね?」


彼らは10代の頃、目を離すといつも貸し切りにしていたワンフロアの廊下で走り回って遊んでいたからつい、未だにホテルに入る前はそんな事を言うのが癖となっている。


J「ハヤトくん…..鎮痛剤持ってる?」


今までなら常備薬がほしいときは私に言ってきたはずのジュイが、何故か私にではなくハヤトに問いかけたので、私は振り返り後部座席に座るジュイの顔を見つめた。


暗闇の中、目を凝らしてみると暗闇の中でもジュイの顔が赤くなってるのが分かった。



*「ジュイ…ちょっとこっち来て!」


私は助手席から熱を確認するためジュイのおデコに手を伸ばすがジュイはそれを拒む。


J「いい。こんなカッコ悪い姿、ミラに見られたくない。」


ジュイは潤んだ瞳でそう言って私から顔を背けるが、その態度の方がはるかにカッコ悪いぞと心の中で呟きながら伸ばした手を引っ込める。


すると、横にいたハヤトが呆れた顔をしてジュイのおデコに触れるとハヤトの顔色が変わった。


H「え…こいつめっちゃ熱あるんだけど…」


*「やっぱり……」


ジュイが朝から静かだったのは機嫌が悪いんじゃなくて体調が悪かったのか…そばにいながら気づいてあげれなかった私は自分の不甲斐なさに呆れながらハヤトとトウジに言った。


*「ハヤトとトウジはすぐマスクして!ジュイはいつから体調悪いの?」


J「……わかんない…気づいたらふらふらしてた…」


*「もうすぐホテル着くから…我慢してね…」


J「うん……ごめんね…」


まるで子供のようにそう言うジュイに私は可愛さあたまって小さなため息を落とした。



つづく

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