第12話


私とジュイのやりとりを見たトウジは私の横で少し呆れ顔を見せている。


T「まるでカップルの喧嘩だね。」


そう言ってトウジは私の前で盛大なため息を落とし、床に落ちかかったジュイのジャケットをまた、私の膝にかけ直してくれた。


*「ハヤトが目覚めたんだからユウやイチもキスしたら、きっとあの子たちも醒めるよね?」


T「ハヤトくんが醒めたからたぶんそうだろけど…他に方法ねぇの?ねぇさんだって好きでもない男とキスなんかしたくねぇだろ?」


*「そりゃ…でも、昨日あのBARに行ってみんだけどなくなってて…それしか方法ないよ。」


T「なくなってた…?ってかさ?確か昨日、ジュイとキス…したんだろ?」


*「した…1回目はみんなの前でされて2回目は会議室でされた…。」


T「え…ちょっと待って…2回もしたなんて聞いてないけど?」


*「え…っと…」


思わずジュイとの事をすべてトウジに話してしまいそうになった私は、慌てて口を閉じ焦りながら誤魔化そうとトウジにぎこちない笑顔を見せる。


T「まぁ何回でもいいけど、確かにハヤトくんはキスしたら元に戻ったけどジュイは戻ってない…なんか他に原因があるんじゃない?それが分かるまでみんなに勝手にキスしたら俺が許さん!!」


*「…わかった…」


T「で?このこと知ってるのは?」


*「魔法の角砂糖に関して知ってるのはトウジとジュイだけだよ?」


T「これ以上話大きくしない方がいいから誰にも言わない方がいい。分かった?」


*「リーダーのナオにも?」


T「言ってもナオくんは絶対信じないよ。魔法なんてね。」


*「だよね…分かった…黙っておく…でもすぐばれそうだけど。」


T「その時はその時に考えよう!!とりあえず、ちゃんとご飯食べなよ?」


そう言ってトウジは私の肩をぽんぽんと叩くと、笑顔のまま自分の作業室へと消えて行った。


ひとりぼっちになった私はゆっくりと立ち上がり、テーブルに置いたままの資料をまとめて自分のデスクに戻ろうと廊下に出た途端、いきなり後ろから腕を掴まれた。


*「ひぇ…!?」


そう変な声が出ると後ろから大きな手で口を押さえられ、後ろ向きのまま私は誰かに引きずるようにして連れ去られる。


ん…この香水の匂い…って…


ユウ!?


ヤバイヤバイヤバイ!!


必死でもがいても後ろから私を羽交締めにするユウの力には敵わない。


どうしよう!?そう思っていると私の叫び声を聞いて目の前に現れたのはジュイだった。


さっきからずっと不機嫌で気まずい空気を漂わせているジュイ。


しかしこの状況で助けを求められるのはもう…目の前にいるジュイしかいない。


私がジュイに向かって手を伸ばし助けを求めると、ジュイは私の姿を見つけて一瞬、眉間にシワが寄ったかと思ったら猛ダッシュで突進してきた。


ジュイの存在に気づいたユウもさっきより力を強めて私を引きずりどこかに向かっている。


*「ユウ……離し…て!」


ユウの大きな手で塞がれている下からそう叫ぶものの…ユウの元にその声が届くはずがない。


そしてユウの作業室の前に着き、ユウがドアノブを掴んだ瞬間…


ギリギリのところでジュイが私の腕をぎゅっと掴んだ。


J「はぁ…はぁ…はぁ…ユウくん…ミラに何やってんですか……?」


猛ダッシュしたせいで肩で息をしながらそう問いかけるジュイに平然とした顔のユウ。


私はそんな対照的な態度の2人に挟まれたままでユナはまだ、私の口を解放しようとはしない。


Y「連れ去りプレイ。」


J「ミラは俺の彼女なんで勝手に触んないでください。」


ジュイと関係を持つ前ならその言葉はユウを諦めさせる為だけの言葉だと受け入れる事が出来た。


しかし今、ジュイの口からその言葉を聞くとなぜか私の涙腺が緩み、涙が溢れそうになるのを誤魔化すようにユウの手を振り解いて言った。


*「連れ去られる前に窒息死する。」


Y「あぁ…すまん。とりあえず、ミラと話あるから中入れ。あ…ジュイには話ねぇから。」


ユウはそう言ってジュイを指差し私の腕掴んでいるジュイの手を振り払おうとすると、ジュイはそれを拒み、私の腕をグイッと引っ張って自分の元に引き寄せ、私はそのはずみでジュイの胸の中に倒れ込んだ。



つづく

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