第2話神殿・風神ヴェンティ

数日後、王とカイトは神殿へと向かった。

祭壇に供物を上げ暫くすると、ものすごいエネルギーを感じ、二人は思わずひれ伏した。


『二人とをもおもてを上げ』声が頭に直接聞こえ二人は声の方を見た。

『王よ、そなたがここに来た理由は解っておる。近頃思い悩んでいたようだし、個人ではなく国の将来の為に願っているのも承知した。そなたが必要な者を転移することは出来る。だがな王よ、そなたの願いはそれで叶うが、無理やり転移されたものはどう思うか考えているのか?』

王はそれを聞いて絶句した。転移させられた者の事は考えていなかった。

『その様子では、相手のことを考えていなかったようじゃな。王ともあろうものがそれで国が治まるか?』王は何も言えずひれ伏した。

『転移した者の心が壊れるような事態になれば、何もかも無駄になる。それほどそなたの望んでいることは重いのだ。私のせんによると転移者は少女だ、そなたの娘よりも年若い!』


王はしばらく考えたのち顔を上げ

「風神ヴェンティよ。私の考えが至らぬことは認めよう。だが国の為我が願いあきらめるわけにはいかない。私には考えが及ばない。どうしたらいいか教えていただきたい、そうすればやれることはやる!」と答えた。


『そうか、それなりの覚悟はあるようだな、まず、郊外に居心地のいい家を用意し不自由の無いよう整えろ。そして、料理が上手で思いやりのある女性を世話人として置け。そして…カイトを護衛としてその者と、王の連絡などをさせろ』


「カイトをですか?」王は思わず声に出し、カイトは自分が呼ばれたのに驚いた。


『そうだ、我はこの者達を転移者に付けるつもりでいる』ヴェンティが手を上げると二つの影が降り立った。

『この者達が側にいても大丈夫な能力者はカイトぐらいだろう。だからだ』その影はいるだけで人を威圧するような力を持っていた。神が再び手を上げると影は去った。


「解りました。さっそく用意致します」王はそう答えた。

ヴェンティはその答えに頷き、カイトの方を見た。

『カイトよお前はどうだ?』

「承知いたしました。神の意向に沿うように致します」

二人の答えを聞いたヴェンティは満足げな顔をして

『それでは準備を急げ、転移の日が決まったら連絡する』そう言い残すとヴェンティは祭壇から消えた。


光が消えると、二人は思わず息を吐いた。二人伴国では高い能力を持っている方なのだが、神に直接会うのは思ったよりも力を使う。


二人は落ち着くと神殿を後にした。









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