第7話 歯車が動き出す時
カイは契約書にサインをした。
リム社長は不敵な笑みで拍手をした。
会場内も拍手の喝采になった。
その出来事はニュースでも取り上げられ歴史的瞬間と報道されるようになった。
その日からもう父とも一切話さなくなり顔も合わすことがなかった。
カイは会社が用意した開発所付近のマンションに引っ越すことになった。
実家から少し離れた距離にある。
カイは少し不安だった。学校も余儀なく休みにされて仕事をやらされるのだから。
次の日から業務に携わることになった。
「フォーム@フォーカス」のシステムをほんの一時間で理解し新たなチップを作るために研究を始めた。
周りの職員はみな有名大学を出ていて名のある技術者ばかりが揃っていた。
カイがまず目につけたのは寄生虫の生態である。カマキリやハエなどの寄生虫は脳を支配して体を動かす事ができる。
これを人間に例えると恐ろしい話だが現実的に実現できるという物だ。
人の脳内は神経によって動かす事ができる。ニューロンを介して情報を瞬時に伝える。感触があるのも喋れるのも神経が正常に通っているからだ。
元からあるシステムはニューロンに似た静電気で脳を動かし伝達させる。喋れたり歩くこともできるということだ。
言うなれば中継地点と言ってもいい。
脳が指示の仕方がわからないとすると同じように指示を出してあげればいいという考えになる。そして体も神経によって伝達させる。
この二つの仕組みが重なり合わないとまず動かない。
これをチップのみにするのは険しい道のりだ。
しかし、カイは思い付いた。
じゃあ、体の神経に支障あるいは脳に支障があるなら再生すればいいじゃないかと。
人の体は一度形成するとその形を保つ仕組みがある。怪我をすれば自然治癒で元に戻る。
しかし、切断されては戻すことはできない。しかし、最新の研究では疑似3Dプリンタで体の一部を作る事ができる。
しかし、神経や脳は繊細なためまだまだ発展は難しそうだ。
義手で補う事ができる。脳が発する微弱な電波を検知して動かす仕組みだ。
それらの情報を掛け合わせて約3ヶ月間は没頭し開発を進めた。
市場では、脳内没入型ゲーム「NEW WORLD」がすでに占めていた。
皆がこぞって遊んでいた。
そして契約から5ヶ月間が過ぎた時にようやくサンプルが完成した。
そのチップは失った神経や伝達の仕方を再生させて脳の代わりに動かす仕組みだ。
しかも情報を保存でき目の神経と繋がり目でみた物が映像で映し出される驚愕的な進歩だった。
被験者達は脳内に移植され、海馬に近いところに移植された。
途中死亡する被験者も現れた。
そして驚くことに夢の中まで映像で見れるという驚愕まで発見された。
まるで第二の脳となったチップである。
頭の中に映像を見させたり、強制的に動かせたり脅威的な作りになっていった。
そして驚くことに空腹状態にさせたりイライラさせたり感情までをコントロールすることができるようになった。
そして研究を重ねて約一年がたった。
カイはようやく完成させて脳内チップ「アダム@イブ」という名前を与えた。
童話のアダムとイブからそのまま名前にしたのだ。
そして世界でもっとも禁止されているクローンの開発に貢献してしまった。
人の形を型どった生命体がまるで人間のように会話をして生活を送れるものまでが出来てしまった。
しかし、その全ての情報のほとんどが隠蔽された。
市場に出すのが難しくリム社長は新たなるバーチャル空間を提供する定で「フォーム@フォーカス」のリニューアルを行った。
完成から半年後、市場に「アダム@イブ」という名前は隠蔽され「ORIGINS(オリジン)@force(フォース)」という名前をつけ販売を行った。
世界的シェアとまではいかなく怪しいという声が続々出ていたが購入を募る者が殺到した。
購入後は海馬付近にチップを移植する手術をしなければいけないリスクがあったからだ...。
ワイワイガヤガヤ(街の音)
アリ「久しぶり」
カイ「ああ、一年半ぶりだな」
アリ「調子はどうよ、あれから色々調べたけど悪い噂どころか良い噂が広まっててな。なんでも孤児院の施設だったり入院している人達に多額のボランティアをして救っているんだ。それからあのチップを欲しがる人もたくさんいてな」
カイ「そうなのか、あの怪しい社長はゲーム業界や芸能業界に精通していて情報が広まるのが早い。なんでも働かないニート達を強制的に働かせる運動まで起きてる」
アリ「そりゃ、大層な時代だな。ま、でも働くならそれでいいんじゃね」
カイ「いや、問題なのが本人の意志と関係なく動かせる事が問題なのだ。開発当初はそんなことにならないように制御してたんだが...」
アリ「してたんだが?」
カイ「親父が裏切った」
アリ「なるほどー、それでお前はどうすんの?」
カイ「とりあえず、従うさ。怪しまれないように」
アリ「そうか、頑張れ。なにかあったらサポートするよ」
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