灰の道

「ねぇ、ちょっと休憩しない?」

 先へ先へと歩を進めるクロの背中に、シロは息を荒くして語り掛けた。

「あー、確かにそろそろ休憩しようか。これは登り慣れてないと、キツイよね」

 シロの方へと振り返ったクロは、眉尻を下げ、申し訳なさそうな表情を浮かべた。その言葉を聞くと、シロは道のわきに茂る灰の草たちの上に、勢いよく腰を下ろした。

「そんなに疲れてたのか。気づかなくてごめんね」

 シロは、額に滲む水滴を、細い腕でグッとぬぐった。そんなシロを見て、クロは気がつけなかった自分に少し苦笑を浮かべた。

「大丈夫だよ。こっちこそすぐに疲れちゃってごめんね」

 シロは、火照った頬を手のひらで仰ぎながら、クロと同じように少し曇った表情を浮かべた。

「いや、仕方ないよ。この道は舗装がされてないから歩きづらいし、サンダルだと余計疲れちゃうよね」

 クロは、シロの足元に目を遣った。そこには、この世界に来てから使い続けている黒いサンダルがあった。使い続けているとはいえ、まだ数日程度しか使っておらず履きなれたとは言い難いサンダルでは、舗装されていない坂道は応えるものがあった。

「まあ舗装なんてやり方がわからないし、できる人も居ないだろうから仕方ないね」

 困ったような表情をするシロに、クロも同じような表情を返した。

「流石に難しいだろうね。私も舗装の仕方何て一切わからないよ。それに、夜にはアイツ等が出てくるからね」

 クロは忌々しそうに、歯を噛みしめた。

「そのアイツ等って、前言ってた夜になると出てくる生き物ってやつ? そういう呼び方するってことは、クロはそれらのことを何か知ってるの?」

 シロの問いかけに、クロは困ったような顔をして頷いた。

「とてもよく知ってるってわけじゃないよ。だけど、アイツ等が暴れたり徘徊したりするせいで、何か長期的に大きなものを作ろうとしてもなかなか難しいんだ」

 実感の籠ったセリフに、クロの抱える苛立ちが、ひしひしとシロにも伝わってきた。

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