泡沫と水面

 水面は、日光を静かに乱反射させている。水は透き通っており、水底の石ころや、水中を踊りまわる魚たちの様子がはっきりと見て取れるほどだ。

 そんな中、二人は海水に濡れたワンピースを洗っていた。

「これ中々大変だね」

 シロは、上気する頬に真っ白な泡を乗せて、ゴシゴシと手をこすっている。

「そうだよ。この世界だと、滅多に服が汚れないから、普段あまり服を洗わない分、余計大変に感じるよ」

 クロは、シロに向けて苦笑しながらも、泡にまみれた手だけはせっせと洗濯を続けていた。

 黙々と、洗濯を続けていた二人だったが、突然クロが口を開いた。

「そういえばシロってこの世界に来てから、まだ水辺にしか行ってないのか」

「ホントだ。今日も昨日も水に関わってるとこしか行ってないね」

「それじゃあ明日は水に関係しないようなところに行こうか」

 クロは目線を上にあげ、どこが良いのか考えだした。

「……私見てみたいものがあるんだけど良いかな」

 シロは、クロの表情を窺うように目線を送った。すると、クロは嬉しそうに「なにが見たいの?」と、問いかけた。

「私、この世界のお花畑が見てみたい。モノクロの世界だと、ホントに白黒写真みたいなお花なのか、興味があるの」

 シロは、頬を染め、少し恥ずかしそうに手をもじもじさせた。

「了解‼ それなら良い場所があるよ」

 クロは自信に満ちた表情を浮かべ、軽く胸を張った。それを見て、シロは「楽しみにしてる」と、クスリと笑った。

「さて、そろそろ汚れも落ちてきただろうし、水洗いしようか」

 クロが、ワンピースを大きく振ると、わっと沢山の泡があたりに漂った。

「この泡って泉に流していいの? 洗剤なんかは自然を汚染するって聞くけど」

 シロは表情に陰りを見せた。

「これは自然由来の物から作ったものだから、大丈夫みたいよ。私も少し気になって実験してみたけど、魚は元気に泳いでたよ」

 クロの言葉に、シロはホッと安心したような表情をした。

 二人は泉に、泡まみれのワンピースを浸けると、手のひらで優しく泡を落としていった。

「これで綺麗になったね。あとは乾かすだけか」

 クロは辺りを見回すと、近くにあった大きな岩にワンピースを広げた。シロもそれに倣って隣にワンピースを広げた。

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