【幕間】 決意

 相も変わらず真っ白な視界に昨日ほどの驚きはなかった。が、おもむろに目を開けると、そこにはすやすやと寝息を立ててぐっすりと眠っているクロの顔があった。


 シロは、この世界に来てからずっとクロに頼ってばかりだった。だから、どこかクロに自分よりも大人びた印象を持っていた。

「なんだかこうしてみると、クロも子供みたいだな」

 いつも先に眠りにつくのがシロで、先に起きるのがクロだった。そのため、シロはクロの寝顔を初めて目にした。

 初めて見たあどけない表情のクロに、今までとは違った親近感を感じた。

「いつか、私がクロのこと助けたいな」

 クロにいつも助けられた。自分がわからないこともまだまだたくさんある。そんなこの世界で、自分よりクロの方が困るビジョンは全く思いつかない。それでも、いつかそんな事態に直面したら、自分がクロのことを助ける。シロは、この世界で生きる上でのささやかな目標を、胸に宿した。


 シロは、クロの頭に自然と手を寄せると、優しく撫でだした。クロは少しこそばゆそうに身体を揺らしたが、やがてまたすやすやと寝息を立て始めた。

 クロの家にはお風呂がついていないため、温めたタオルで全身をぬぐった。本来はもっと綺麗に拭くべきだったが、二人とも疲れが溜まっていたため、翌日に泉で全身を洗う約束だけして、すぐに眠ってしまった。

 そのため、海水が拭き切れておらず、クロの髪は少しだけ軋んでいた。

「今日、泉に行くときに、髪の毛洗ってあげるか」

 自分もクロと同じくらいの長さの髪なため、丁寧に洗うことの大変さが容易に想像できた。そのため自分が髪を洗うことで、少しでもクロの負担を減らし、肩代わりしようと考えた。

 そう決めると、シロはクロが目を覚ますまで、髪を洗うシミュレーションを始めた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る