第四章 雷の化身
28.白い髪の少年
暗い世界。曇天より暗い真っ黒な雲を敷き詰めている。その空の闇を時折、鳴り響く雷が顔を出した時には、青白い稲妻が空を割る。広い荒野は静まり返り、森は深く、ざわめく。そんな中にも街があり、雷に負けじとネオンがギラついて暗黒の街を着飾っていた。そんな世界を見下ろしながら一人の白い髪の少年、ジークがつぶやいた。
「あいつが町を出た」
その肩で白い大きなコウモリが高い声を発した。
「お前も分かるかディグズリー?」
ジークの黒くとがった爪が白いコウモリのあごをなでた。コウモリは嬉しそうなそぶりは見せず、また相槌のごとく甲高い声と鳴く。
「そうか。お前もあいつに会いたいか」
ジークは白く長い髪を指に巻きつけはじめた。すぐにほどく。
「でも待て。あいつはまだ血に目覚めちゃいない。ちゃんと導いてやらないと」
ジークに薄い笑みが広がった。空も答えるように雷を光らせた。
「ちゃんとあいつに渡してくれたか?」
真っ暗な場所の、何もない所に向かってジークが語りかけた。その闇の中から滑り出るようにして歩幅を見せずに長身の紳士が現れた。シルクハットを深くかぶり直している。
「言わなくても分かるはずでしょう? いつも見ているのですから。私は監視されているようで肩が凝るような思いがしますよ」
紳士は手袋をいじろうとしたが、きちんと着こなせているのでやめたようだ。
「あいつ喜んでたか?」
紳士は微笑んで言った。
「ええ。怪しまれないように念のため、もう一人の方にも渡しておきました。でも私のことを信用しているか、分かりませんけどね」
ジークは白い髪を指に巻きつけて遊んでいる。
「お前のその変な顔じゃな。でも問題ない。あの薬を使う機会を増やしてやればいいんだ。たとえ使いたくなくても、使わないと死ぬような状況なら、あいつも使うだろう」
ジークは突然立ち上がった。背中まである長い髪が乱れる。
「ひらめいた。みんなをいつもの広場に集めろ」
紳士はフフッと笑った。
「またいつものゲームですか。今回は賞金をいくらにするんです?」
ソファーに置いていた革のジャケットを着て、少年はバルコニーに歩いていく。後ろから白い大きなコウモリのディグズリーが飛んできて、後を追う。
「
ジークはバルコニーから飛び降りた。背に生えたコウモリのような黒い羽を使って、闇に浮かぶ街に降りていった。
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