第30話 嘘告ゲーム
俺はすっかり置物のと化した幼馴染を横目で気にしつつ、
「結局意味が分からないままだな」
ぽつりと呟く。
「烈矢達を競わせて憎悪を煽って呪いまで作るとか。主催者の目的はなんだ? 勝手に孤泉莉珠を賞品にして」
「孤泉先輩が主催者ってこともあるけど?」
架河森はその説を推しているようだが、俺はそうは思えない。
「でも、これで私の考えは正しかったって証明されたでしょ」
彼女はご機嫌で足元の黒いシミに目を落とす。
「悪意という形のない感情を虫に具現化させた。やっぱりこのゲームは大きな力を創り出してる。それを使えば私は旦那様とラブラブ新婚生活が送れるの!」
こいつはこいつで、主催者とは違ったヤバみがある。
しかし、あまりに非現実的過ぎて、眼の前の事象に理性が追いつかんぞ。まるで本の中の世界だ……。
「……あ」
俺はふと思いついて声を上げた。
「主催者の目的が判った」
何? と見上げてくる架河森に、自然と言葉が零れる。
「学校という箱庭に参加者を集めて競わせる」
そして、
「この状況は『
俺の声に、架河森はゴクリと喉を鳴らす。
「蠱毒って、容器にいろんな虫を入れて、最後に残った一匹を呪いの道具にする術だよね。確かにそうかも。最初から呪う目的のゲームだったから、あんなに悪意が肥大したのか」
納得、と頷いてから、彼女は俺に目を向けた。
「でも句綱君、よく蠱毒なんて知ってるね」
俺は怪異には素人だが、
「よく本に出てくるネタだから」
「さっすが読書家!」
こんな時に茶化すな。あと、一般常識の部類だと思うぞ、蠱毒は。
「烈矢の口振りだと、もうすぐ優勝者が決まる。優勝者は『賞品』を受け取りに行くだろう。つまり……」
「
道に飛び出そうとしたり、廊下で倒れたり。孤泉先輩には既に蠱毒の影響が出ていたのかもしれない。
「じゃあ、行こう!」
事態を飲み込んだ架河森は勢いよく踵を返した。
「りじゅたんに蠱毒が使われる前に力を奪わなきゃ!」
あくまで私利私欲な行動力は逆に清々しい。だが、
「どこに!?」
俺は彼女の後ろ姿を追いかけながら尋ねる。目的地も分からず走り出しても仕方がないだろと思っていたら。
彼女は迷いなくピッと人差し指で空を指さした。
「主催者なんだもの、ずっとゲームの勝敗を見守ってたはずだよ。特等席でね」
……ああ、そうか。
他人に見られず西校舎裏を監視できる場所。学園モノのラスボスが必ず降臨する場所。それは……屋上だ。
「この話のジャンルって、学園サイキックホラーだったのか?」
土足で西校舎に突撃した架河森に、俺も靴のまま問いかける。彼女は顔だけ振り向いて、白い歯を見せた。
「健気な新妻奮闘記よ!」
……絶対カテゴリーエラーだと思う。
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