第25話 告白(5)

 かくんと顎が下がる。

「烈矢が……?」

 震える声で聞き返す俺に、架河森は事もなげに頷く。

「今日、私を西校舎裏に呼び出したのは須崎君だよ。句綱君は須崎君と仲良いでしょ? だから何か知ってるんじゃないかって……どうしたの? 句綱君」

 急に頭を抱えてうずくまった俺を、架河森が怪訝そうに覗き込んでくる。

 ……ああ、そうか。そういうことか。

「りじゅたん」

 ため息と共に吐き出した言葉を、架河森が「え?」と聞き返す。

「弧泉莉珠。烈矢が関わってるなら、嘘告ゲームの『賞品』は彼女だ」

「コイズミって、あのゆるふわ可愛い二年の先輩? 背の小さい」

「架河森も小さいだろ」

 俺がツッコむと、

「弧泉先輩は145cmくらいでしょ? 私は151あるもん!」

 謎にマウントを取ろうとする。180の俺から見れば変わらない。

「なるほど、弧泉先輩か〜。確かに誰かを陥れても手に入れたい『賞品』かもね」

 架河森は何度も頷いてから、俺に顔を向けた。

「ほら! やっぱり句綱君は情報を持ってたでしょ。私が毎日探し歩いてた答えを知ってたんだから」

 ドヤるな。これだって偶然……を引き寄せてるってことか? 俺の能力が。

「話を総合すると。嘘告ゲームに優勝すれば、賞品として弧泉莉珠が貰えるのか? 貰うってなんだ? 付き合うってことか?」

「そこまでは知らないけど、知ってる人に聞けばいいんじゃない?」

 それもそうだが。

 俺はスマホを出してメッセージアプリの烈矢の画面を開く。文字を打とうとして、指が止まる。

「烈矢に『お前、嘘告ゲームに参加してるのか?』って訊いて、答えると思うか?」

「さあ? 証拠を残すのを嫌がる人達みたいだし。今日の呼び出しも、昼休みにこっそり伝えられたしね」

 下手に探りを入れて誤魔化されたら元も子もない。

「明日、直接訊いてみる」

 スマホをしまう俺に、架河森がニヤニヤ笑う。

「急に協力的になったね」

「一応、幼馴染だからな」

 俺の知る烈矢は、調子に乗りやすいがいい奴だ。妙なことに関わっているのなら止めたいと思う。

「須崎君に訊く時、私も一緒にいていい?」

「好きにしろ」

 ダメと言っても来るだろうし。

「でも、賞品が弧泉先輩なら、主催者は誰だ? ゲームで悪意を煽る目的は?」

「分からない。賞品が主催者ってこともあるかもしれないしね」

 弧泉先輩が架河森に植木鉢を落としたというのか? あの人はそんなことするタイプには見えんが。

 ……うーむ。謎だらけだ。

 とにかく、明日烈矢に話を訊かないと先に進まない。

 架河森が土地神の嫁って言い出した時点で帰れば良かったのに、がっつり巻き込まれてしまった。

 話が一段落したところで、丁度部屋の電話が鳴る。利用時間終了のお知らせだ。

「延長する?」

「もう十分堪能した」

 色々とな。

 俺の返事にへらっと笑って、架河森は受話器の向こうに「出ます」と告げた。

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