54 セイジの疑問
ー 100番刑務所,所長室 ー
数日後,,,
コンコン!
看守長がドアをノックした。
見辺「入りなさい」
看守長はドアを開けて入って来た。
看守長「所長,報告があります」
所長「何事かな?」
看守長「実は,302号の囚人が,今日の朝,起きてこないので,彼の部屋見に行ったのですが,,,その,死体で発見されました」
所長「302号?」
所長はメモ手帳を見た。302号は水香と避妊しないで膣を使ってエッチした囚人だ。所長にとって,302号が死亡するのは十分に予想された。ともかくも,これによって,水香の体には,正確には膣部分に,まだ人を死に至らしめる呪詛が掛けられていることが判明した。
看守長「はい,302号です。健康状態はまったく問題なかったのですが,なんで死亡したのか原因不明です。結局,医者が心不全として死亡診断しました」
所長「報告ご苦労。あとの手続きはよろしく頼む」
看守長「はい,了解です。任せてください」
看守長は所長室から出ていった。所長は,これだけでは済まないのではないかと思った。
はたして,今日の午後2時頃,また看守長が報告に来た。
看守長「所長,059号が10分ほど前,急に心停止で倒れてしまいました。幸い発見が早く,傍にいた囚人がAEDを使用して心臓に電気刺激を行い,なんとか一命を取り留めました。しかし,意識はまだ戻っていません。今,保健室で医師に診てもらっています」
さらに,その翌日の朝,膣に10分挿入した2番の囚人が死亡となって発見された。
所長は再び手帳を見た。059号は水香のクリトリスや陰部を触った囚人だ。これによって,水香の陰部を触るだけで,致命的な状況に陥ることが判明した。
所長「わかった。このことで,囚人たちに動揺が走らないようにしてほしい」
看守長「大丈夫です。所内での死亡事故はたまにあることですから」
所長は,果たして,さらに被害が出るのかどうか,その後,数日ほど経過したが,一向に被害は出てこなかった。彼は,結局のところ,水香の陰部さえ触らなければ,問題ないことがわかった。
一名が死亡して,一名が意識不明の重体に陥ったことは,ほとんどの囚人には知らさなかった。だが,積極的に,絨毯の運搬に関わった10人の囚人の状況を収集している囚人がいた。
それはセイジだ。彼は,収監棟にいる少女の蒙古斑のことを,後から思い出した。かつて犯したことのある少女の蒙古斑と同じだった。あの少女は水香だったことを思い出した。
そのことを思い出して,セイジは,自分が死亡するのではないかと思った。戦々恐々とした時間を過ごした。常に,保健室の周辺にして,ちょっとでも具合が悪くなると,保健室に駆け込んだ。それ以外に,他の9人の状況がどうなったのか,情報を収集した。
その結果,302号の囚人が死亡,059号の囚人が意識不明の重体だと分った。その後,1週間ほど経過したが,他に被害者は出てこなかった。セイジは,どうやら自分は助かったのではないと少し安堵した。
セイジは,当時のことを思い出した。所長がこっそりとわれわれ10人の囚人に,水香の体を触らせたに違いない。そこで,セイジは,他の7人に,水香の体にどのように触ったのかを密かに聞いてみた。その結果,7人とも水香の体に触る場所が違っていることが判明した。
セイジは,当時の10人の囚人を使って,水香の体をさまざまな方法で触らせるという人体実験をしたものと断定した。でも,なんで,所長はそんなことをしたのか? セイジにはその答えがわからなかった。
セイジは,すぐに弁護士との面談を看守に要請した。しかし,要請は受け付けるものの,今は,別件で忙しく,面談は早くとも2ヶ月後になるとのことだった。もう,その頃になると,セイジは出所してしまう。まったく意味が無い。
セイジは愕然とした。なんとかして,外部と連絡する方法を探ることにした。いろいと他の古参の囚人に聞いて回ると,どうやら賄賂を看守に渡すと,こっそりとネットが使えるらしいことが分かった。しかし,監獄の中では,金など手に入らない。女性なら体を売ることもできるかもしれないが,男ではそれもできない。
そんなことを考えて,数日過ごしたある日,隣の刑務所で大きな爆発音がした。ふと,空を見ると,黒煙が舞い上がっていた。なにやら,大変な事態が起きていると思った。
翌日の新聞を見ると,とんでもない記事が出ていた。
『大量殺人犯の水香が爆死!ミサイルの誤発射か?!』という見出しだ。それを見て,セイジは,思わず『あり得ない!』と叫んでしまった。
周囲の奇異な眼に晒されたが,すぐに『なんでもない,なんでもない』と周囲の囚人達に言い訳をして,その新聞記事を熟読した。
その記事には,『警察の報道によれば,ミサイルの誤発射によって,100番刑務所の施設の一部が破壊され,大量殺人犯の水香が死亡した可能性が高い。現場では,さらに調査が行われている模様』と記載されていた。
何度読み返しても,それ以上の情報はなかった。
セイジは,水香が死んだとはどうしても思えなかった。きっと,何か裏があるに違いない。でも,今のセイジには何も出来なかった。
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