43 3種の呪符攻撃

 さて,ゲストの夏江の出番だ。


 開催側にとっては,夏江の呪符抵抗力を調査するのも,主要な目的のひとつだ。そのため,望遠カメラで夏江が演じる内容はつぶさに録画される。


 副師範「では,お待ちかねのゲストである秋江さんの出番です。すでに紹介したように,呪符攻撃に対して強い抵抗力を持っていると聞いています」


 副師範は,夏江に向かって尋ねた。


 副師範「秋江さん,あなたの呪符への耐性能力ですが,特弟子との勝負という形式で披露していただけないでしょうか?特弟子が呪符攻撃をして,夏江さんがその攻撃に耐えてみせるという感じです。いかがですか?」


 この期に及んで,イヤとは言える雰囲気ではなかったので,夏江は軽く首を縦に振って「構いません」と返事した。


 副師範「夏江さんの了解が取れましたので,では,特弟子に登場してもらいます。特弟子,ではどうぞ」


 どこからともなく,特弟子が姿を現わした。特弟子が皆の前で姿を見せるときは,かならず仮面を被っている。素顔を見せたくないという理由もあるが,それ以上に『特弟子』という神秘なイメージを演出するのが狙いだ。


 副師範「では,特弟子,あとの進行はよろしくお願いします」

 特弟子「了解です」


 この後の進行は特弟子に任された。


 特弟子は,夏江に5メートルほど離れてもらった。そして,夏江に声をかけた。


 特弟子「では,なつ,,,いえ,秋江さんでしたね。ここに,3枚の呪符があります。直弟子が準備した呪符,わたしが準備した呪符,そして第1師範が準備した呪符です。この呪符攻撃に,5分間耐えたら,あなたの勝ちになります。勝負に勝ったら,この呪符と同じものを差し上げます。もし,負けたら呪符の影響を受けるだけのことです」

 

 この説明に,「了解です」という意味で,夏江は首を縦に振った。今の夏江に拒否する選択肢はない。今の夏江は,呪符を見ただけで,おおよその種類がわかる。呪符のオーラの色で判別可能だ。


 特弟子の持っているのは,紙製,木製,さらに銀板製の呪符だ。どの呪符も,ピンク色のオーラだが,その強さに違いがあった。紙製が一番弱く,次に木製,そして銀板製が一番強いオーラを放っていた。


 ピンク色,,,エッチ系の呪符だ。催淫,ヌード,性行為等に関係のある効能があるはずだ。より具体的な効能までは見にくことができない。


 今の夏江は,美澪の霊体で憑依されていない。しかも,美澪はメリルの指輪に捕らわれているので,身動きできない状況だ。


 今の夏江は,普通の素人とほとんど変わりはない。夏江は,無理して呪符攻撃に抵抗しなくてもいいと思った。負けたら負けでいい。参加賞をもらって,メリルの指輪をもう一度,あの祭壇の上に置かせてもらえれば,当初の目的は達成できる。


 それに,呪符攻撃で呪符の『念』に支配されようと,多少の醜態をさらすだけだ。どうせ,仮名で身分を隠している。旅の恥はかきすてでいい!


 夏江は,半分,諦めの気持ちで呪符攻撃を待った。


 特弟子「では,直弟子が作成した呪符で攻撃します。準備はいいですか?」

 夏江「はい。いつでもどうぞ」

 特弟子「では,いきます。えい!」


 特弟子は,紙製の呪符を夏江に向かって飛ばした。飛ばすといっても,せいぜい数メートルしか飛ばないので,夏江の場所までは届かない。でも,それで十分だ。空中に飛ばされたその呪符は,その中に閉じ込めれていた『念』が一気に放出された。その念は,飛ばされた方向に向かって移動し,確実に夏江の体にヒットした。


 通常なら見ることのできない『念』だが,夏江は,そこから発生せられるオーラで,念の動きを追った。


 夏江は,ピンク色のオーラが自分の体にヒットした時,この呪符の作用を一瞬で理解した。しかも,どのような人物の念がこもっているのかも理解した。


 この呪符は,ストリップショーに出演して人気を博している踊り子が肌身離さずつけていたものだ。その『念』,つまり,「人前で裸で踊れ」という思いを夏江は理解した。


 しかし,それ以外に雑念も混じっていた。身の上の不幸を恨む念だ。この踊り子は,もともとダンサー志望だった。でも,家庭に不幸が襲った。長女だった彼女は兄弟を養うため,自分の夢を諦めてお金を稼ぐことにした。

 水商売のお姉さんや娼婦にはなりたくなかった。人見知りする彼女には向かない仕事だ。そこでストリッパーになる決意をした。もともと踊りが好きだったことも要因だ。


 夏江は,この場で,踊りながら裸になりたいという強い衝動を感じたものの,ストリッパーの,ちょっと悲しい家庭事情に悲哀を感じた。その思いが,さきほどの強い衝動による行動を回避するのに十分だった。


 夏江は5分もの間,その場に立ち尽くしたまま動くことはなかった。


 特弟子「はい,5分が経過しました。秋江さん,見事に5品の呪符攻撃に耐えましたね。見事です。では,褒美として,先ほど使用した呪符と同じものを差し上げます」


 特弟子は,紙製の呪符を夏江に渡した。夏江は,「ありがとうございます」と言ったものの,使い道がわからないので,あまり嬉しくなかった。


 特弟子「では,2回戦といきます。7品の呪符攻撃です。準備はいいですか?」

 夏江「はい,どうぞ」


 夏江は,5品の呪符攻撃が,大したことがなかったので,7品でも大したことがないだろうとタカをくくった。


 特弟子は,木製の呪符を夏江に向かって放出した。それは2メートルほどしか飛ばなかったが,その間に,木製から『念』が放出されて夏江に向かっていった。


 その『念』は夏江を襲った。夏江は,前回と同様にその念の内容を瞬時に理解した。今回は,「裸になって自慰しろ」という強い衝撃だ。


 夏江は,内心,可笑しく思った。確かに,先ほどの5品の衝撃よりも強い衝撃ではあるものの,やはり雑念が交じっているため,その衝撃に身を任せれなかった。


 その雑念とは,この念を送り込んだ少女の家族への恨みだ。両親が離婚して母親についていったものの,母親の新しい夫は,ことあるごとにこの少女にいやらしい行為をしようとしてきた。母親は見て見ぬふりをするだけだ。なんとか,学校の先生が介入して,しばらくは平穏な日々が続いた。しかし,ある日,ある黒服の男が現れて,少女は,強制的に目隠しされて,ある場所に連れていかれた。


 後で知らされたことだが,義理の父親が少女を100万円でブローカーに売られたことを知らされた。少女は自分が娼婦にされるのでは,という恐怖心でいっぱいだった。だが,少女が連れていかれたところは,娼館よりも,もっと過酷な場所だった。虚道宗の第1区画にある少養所だ。


 そこで,監禁,リンチ,淫行,強姦などの虐待を受けることで,恨み,淫乱,快楽,恐怖などなど,さまざまな感情を強く持たされることが要求された。


 少女にとって幸いだったのは,このような感情を押し殺す必要がなかったので,自殺したいという極端な気持ちにまではならなかった。


 自殺願望も,呪符に閉じこめる対象だ。でも,自殺誘因呪符は十分に間に合っているので,自殺したいというレベルの虐待を行うことはなかった。


 この少女を犯す男性はひとりだけにした。その男性に恋心を持たせるためだ。肉体関係を恒常的に持つことで,その男性への依存性を高めるのが狙いだ。そうなってしまうと,その男性の命令ならなんでも聞くようになる。この少女も男性のいいなりになるしかった。少女は彼の言われるままに,木製呪符に『裸になって自慰しろ』という単純な思いを込めていった。


 服を脱いで裸になり,自慰するという動作を何度も何度も繰りかえすことで,その思い,つまり念がより強まる。しかし,24時間そんな思いを念じ続けることなど不可能だ。どうしても自分の不幸な身の上を恨み,義理の父親への憎しみ恨みが出てしまう。


 夏江はその雑念の思いを鋭敏に感じとった。今の夏江にとっては,呪符攻撃に耐性があるというよりも,鋭敏に呪符からの『雑念』を鋭敏に関知できた。


 特弟子が木製呪符を放ってから,時間が刻々と過ぎていった。


 夏江は一向に立ったままで,服を脱ぐような行動はおこさなかった。それよりも,少女が義理の父親に抱く憎しみ恨みに同情してしまい,夏江が代わりにその父親に復讐してあげたくなったほどだ。


 そんなことを考えていると,5分間などあっという間に過ぎてしまった。


 特弟子は,7品の木製呪符を使っても,夏江に服を脱がせるという単純な行為さえも誘導することができなったことにショックだった。


 同じ木製の呪符を3枚準備して,その内の1枚を使って,ある女性の内弟子に試験的に試してみたところ,5秒も経たずに服を脱いで裸になってしまった。間違いなく,超強力な『催裸呪符』だ。


 特弟子「秋江さん,お見事です。感服いたしました。2回戦も秋江さんの勝利です。では,未使用のこの木製の呪符を受け取りください」


 特弟子は,その呪符を夏江に渡した。夏江はニコッと笑って受けとったものの,人を裸にさせるような呪符をもらったところで,なんの使い道もないと思った。


 特弟子「では,最後の3枚目です。銀板の呪符です。9品という最高レベルの呪符です。秋江さん,準備はいいですか?」

 

 9品だろうが何品だろうが,今の夏江にはどうでもよかった。


 夏江「はい,いつでもどうぞ」


 特弟子は,第1師範が準備した銀板の呪符を放出した。


 その呪符から放たれるオーラは,これまでの紙製や木製のものとは格段に違っていた。どす黒いピンク色を強烈に放っていた。

 

 その『念』攻撃が夏江の体にヒットした。夏江は,この攻撃が以前受けたことのある強烈な催淫攻撃であることがわかった。しかも,純粋な催淫攻撃であり,気絶させるような作用まではないことも瞬時に悟った。その念攻撃に雑念はなかった。


 念攻撃を受けて間もなく,強烈に下半身が濡れていった。


 夏江は,このままではヤバイと思った。強力な催淫剤を取り込んだような感じだ。今すぐにでも自分の手で陰部を愛撫して絶頂に到達したい衝動に駆られた。


 夏江「ううううーー,,,」


 夏江は,体中がほてってきた。というよりも,体中に激しい激情が渦巻いた。これまで平然としてその場に立っていた夏江は,初めて跪いた。


 夏江はとうとう我慢が出来ずに,ガウンを脱ぎ捨て,マタニティードレスを脱いだ。そこには,ブラジャーの上から,さらにサラシを巻いた姿が露わになった。片方で5kgにもなるOカップのおっぱいは,いくらサラシを巻いたところで,張りのあるおっぱいの膨らみを隠しきれるものではない。


 「おおおーー!!すっげーーー爆乳だ!!」

 「吸いてーーー!!」

 「サラシが湿っているぞ!母乳じゃねえのか?」

 「おっぱい見せろーー!!」

 「そうだ,そうだ! おっぱい見せろーー!!」 

 「おっぱい!」

 「おっぱい!」


 門弟から「おっぱい見せろ」のシュプレヒコールが湧き上がった。その歓喜など,今の夏江には耳に入らない。このたぎる激情をどうやって沈めたらいいのか?!!


 今できることは,裸になって火照りに火照った体を冷やすことだ。


 夏江は,サラシに手を廻して,ゆっくりと外した。サラシを外す時は,そのサラシがグチャグチャにならないように折りたたむ必要がある。こんな非常時の時でも,几帳面な性格が出てしまった。

 

 サラシが取り除かれると,そこには,ブラジャーとパンティーだけの下着姿が露わになった。


 パシャ!パシャ!ーーー


 携帯を持ってた門弟たちが,一斉に携帯を取りだして,夏江をできるだけ望遠にして撮影していった。


 ここまで来ると,夏江は裸になる覚悟を決めた。裸になって,自分のおっぱいを揉むことで,この激情を少しでも和らげたかった。


 夏江は一気にブラジャーを脱いだ。ついでにパンティ-も脱いだ。


 「おおおーーー!!」

 「なんという爆乳だーー!!」

 「シャッターチャンスだ!!」


 パシャ!パシャ!パシャ!ーーー


 さらに,一斉に携帯のカメラが鳴った。


 だが,,,

 

 「あれ?なんかボケているぞ?」

 「あっ,ほんとうだ!曇りガラスから見ているようだ」

 「ええ?ーーどうしてはっきり見えないの?」

 「ちゃんと,見せてーーー!!」


 門弟たちの悲痛な叫び声が響いた。


 特弟子も,急に夏江の周囲に曇りガラスのようなものが覆ってしまい,いったい何事かとびっくりした。


 メリルの指輪に閉じこめられた美澪が,状況を把握して夏江の周囲に霊力による曇りガラスを展開した。さすがにこのまま夏江の片方で5kgにもなるおっぱいや,お尻廻り120cmにもなる美しくも醜い裸体を人前で晒すのを避けたかった。


 美澪にとって,夏江は自分だけのものだ。多留真は別として,他の男どもに夏江の裸体を晒させるのは絶対にイヤだ。本来なら,もっと濃い曇りガラスにしたかった。でも,ちょっとくらいはサービスも必要だろうと思って,ややぼやける程度の曇りガラスにした。


 夏江は,片手で5kgにもなるおっぱいを掴み,かつ,10cmにもなる異様にデカい乳首に刺激を与えて母乳を勢いよく放出させた。もう一方の手は陰部を愛撫した。なんとも変態じみて淫乱な姿だ。だが,それをはっきりと見る者は誰もいなかった。


 時間が優に5分を過ぎた。特弟子は,夏江の姿をはっきりと見ることはdけいないまでも,裸になっているのがわかった。銀板呪符による効果だとわかった。でも,夏江の周囲に展開している曇りガラスのようなバリアはいったい何なのか??


 特弟子がどうしたものかと躊躇している時,ある1人の門弟は,驚きを隠せなかった。それは,ボタンと名前を変えたモモカだ。


 モモカは,夏江が繰り出した曇りガラスのバリアが霊力であることを瞬時に理解した。しかも,曇りガラスを構築するという高度な霊力の操作に驚かされた。モモカは,心の中でつぶやいた。


 モモカ『あの女性刑事,霊力を扱っているわ。しかも,かなりの高度な扱いができるみたい。これって,なんらかの方法でメリルの指輪を蘇生させたのに間違いないわ。ここまま彼女を放置するのはまずい,,,今のうちに彼女を殺すのが得策だわ』


 モモカは,目の前で霊力が展開されているのに驚きつつも,夏江をどうやって人気のいない場所に誘い込めばいいかを考えた。


 モモカは,シモベにしたオミレに夏江を白樺広場に誘うように指示した。オミレは夏江とも面識があるので,夏江を誘いこむにはちょうどよかった。それに,オミレがモモカのシモベであることなど,夏江は知る由もなかった。


 特弟子は時計を見た。すでに10分が経過した。


 特弟子「はい,ここまでです!3枚目の呪符については,秋江さんは,このような異様な行動をしたことから,抵抗できなかったとみなします。秋江さんとの勝負はここまでとします」


 この特弟子が試合の終了を宣言したものの,観客である弟子たちからブーイングが出た。だって,もうすぐ,あの爆乳が見えるかどうかというところに来ているのに,完全に身ることが出来ないのだ。欲求不満甚だしい。


 「あの曇りガラスを解除しろ!」

 「爆乳をみせろ!!」

 「そうだ!そうだ!見せろ!」

 

 この「見せろ!」というシュプレヒコールが会場で沸いた。でも,そんなことでこのバリエを解除する美澪ではなった。なぜ曇りガラスが発生したかなど,その原因を考えるような殊勝な者はいなかった。


 美澪は念話で夏江に伝えた。


 美澪『夏江!夏江!!呪符の念に身を任せている状況ではないです!すぐに服を着てください!わたしのバリアの維持が限界です!」


 美澪が放ったバリアは,すでに10分以上も持続していた。霊力はふんだんにあるものの,こんなしょうもないことで貴重な霊力をこれ以上消費したくなかった。


 夏江は,すでに快楽に身を任せていて体を海老反りにしている真最中だった。それでも,美澪の念話が強く頭の中に響いてきた。


 夏江は,もっとこの快楽を味わいたかった。でも,今はそんな状況ではないことも頭のどこかで理解していた。


 夏江『美澪,もう大丈夫よ。でも,今回の念攻撃には,雑念がまったくなかったわ。恐れ入ったわ。いったいどうやったらこんな念を呪符に注入できるのかしら?』


 そんなことを考えつつも,念攻撃から脱した夏江は,ブラジャーとパンティーを穿いて服を着た。サラシはそのまま捨て置いた。今は,サラシを巻くような時間はないと思ったからだ。


 スーッ!!


 この時,曇りガラスのバリアが消失した。


 「おお,バリアが消えた」

 「これではっきり見えるぞ!!」

 「えーー?服を着てるぞ!1」

 「ああーーー!!爆乳が見えない!!」


 門弟のがっかりした声が会場一杯に拡がった。


 特弟子「皆さんのがっかりした思いはよく分かりますが,ここはストリップ劇場ではありません」


 特弟子はどこかホッとしてから,言葉を繋げた。


 特弟子「秋江さん,これまでの3回の試合に付き合っていただいてありがとうございました。ゲストとして参加いただいた秋江さんへのお土産として,最後に使用した9品の呪符を贈呈します。どうぞ受け取ってください」


 夏江は9品の催淫呪符を受け取った。結局は,夏江が3回目の呪符攻撃に耐えようが耐えまいが,その呪符を入手することができたのだ。


 夏江はもらってもあまり嬉しくもない9品の催淫呪符を受けとった。その後,門弟から拍手を受けて,会場から去った。


 夏江は,この後,どうやって祭壇に近づいたらいいか分からなかった。ふと周囲を見渡すと,顔見知りの門弟がいた。オミレだ。夏江はオミレに声をかけた。


 夏江「あなた,オミレさんですね?」

 

 オミレは,夏江が名前も素性も隠していることを知っていて,かつ,厚化粧で素顔を隠していることも知っている。でも,夏江のことを分からない振りをした。


 オミレ「あの,,,秋江さんですね?どうして,わたしのことを知っているのですか?面識はないと思うのですが?」

 夏江「ふふふ,ごめんなさいね。わたし,刑事の夏江です。ちょっと,素性を隠していました」


 オミレは,さも,びっくりしたのように口に手をあてた。多少,巨乳になっていて,厚化粧をしているとはいえ,オミレは彼女が夏江であることはすぐに分かった。


 オミレ「え?あの夏江さん?びっくりですー!」

 夏江「わたしも,知り合いに会えてうれしいわ。どう?どこかで,一緒にコーヒーでも飲む時間ある?」

 

 オミレは,ちょっと間をおいてから返答した。


 オミレ「ちょうどいい場所を知っているわ。白樺広場よ。景色もいいし,今なら誰もいないから落ち着けると思うわ」

 夏江「じゃあ,その白樺広場に案内してちょうだい」


 オミレは夏江を連れて,人気のない白樺通りを歩いていった。しばらくすると,かなり開けた場所に来た。白樺広場だ。


 オミレ「夏江さん,あそこに木製の長椅子があるから,そこでお茶にしましょう」

 夏江「わかったわ」

 オミレ「わたし,ちょっと,あそこの自販機からコーヒーを買ってくるわ。ブラックでいい」

 夏江「できればミルク入りでお願い」

 オミレ「了解でーす」


 オミレは,そう言って,自販機のある方に歩いて行った。


 夏江は,長椅子がいくつか並んでいるところに来て,適当に座った。目の前には池があり,そこで小鳥たちが戯れていた。小鳥たちが池で泳ぐ際にできる波紋をゆっくりと眺めた。


 夏江は,やっと一息つけると思った。今でも催淫を受けた後遺症が残っている。この落ち着いた時間を利用すれば,完全に払拭できると期待した。


 ーーー

 

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