30 睡眠呪符

 モモカは,第3区画に来るのが始めてなので,しばらく周囲を散策してから,第5区画内の師範邸に戻った。オミレの家を出てから,すでに2時間が経過していた。


 第5師範邸の居間には,第5師範の他に,治安隊の部隊長とその部下の治安隊5名が来ていた。部隊長は直弟子で,その部下の治安隊の門弟はいずれも内弟子だ。


 モモカが居間に入ると,さっそく師範が彼女に尋ねた。


 師範「モモカか? 何かわかったか?」

 モモカ「あの,,,推薦状なんですが,どうやらなんらかの原因で,呪符が組み込まれていたようです」

 師範「何?では,わたしに呪詛をしかけたのは,オミレなのか?」

 モモカ「オミレさんが履歴書と推薦状を改めて調査したら,推薦状のほうに呪詛が組み込まれているらしいって言っていました。でも,その後,その推薦状は急に何らかの原因で発火してしまい,燃えてなくなりました」

 師範「何?それって,証拠隠滅したのか?」

 モモカ「いえ,ほんとうに自然発火でした」


 この自然発火については,モモカとオミレが打ち合わせして決めた内容だ。


 部隊長「どうやら,オミレも連行する必要がありそうですね」

 

 師範は,ちょっと考えてから,その提案を否定した。


 師範「いや,オミレは無罪だ。単に,原因を明らかにしただけだ。何もしなくていい」


 師範にとっては,推薦状に呪符が組み込まれていたという事実を見抜けなかったという失態を隠す必要がある。『師範』失格だと思われるのを避けたかった。


 師範の言葉に,部隊長は違和感を感じたものの,その通りにすることにした。


 部隊長「わかりました。オミレは無罪なので,彼女には,失踪事件を解明した功績として,治安隊に入隊することになります。特に問題ありませんね?」

 師範「ああ,問題ない。それに,わたしには治安隊の人事権などないからな」


 モモカは,この話を聞いて,失踪事件の犯人は指輪のせいになったものと理解した。しかし,その考えは甘かった。


 部隊長は,部下にモモカを拘束するように命じてから,彼女に言った。


 部隊長「モモカ,お前は,この虚道宗で起きている135名の失踪事件の犯人として拘束する!」

 

 両手首を背側にヒモで縛られたモモカは部隊長に言った。


 モモカ「わたし,犯人ではないわ。何も知りません!!」


 部隊長は,オミレから入手した録音データをモモカに聞かせた。


  -録音データー

 モモカ「わたしのせいだとすれば,それは,この指輪が原因だと思うわ」

 オミレ「あんた,わたしを馬鹿にしているの? 指輪に,人を100人以上も失踪させるような,超強力な念が込められるわけないでしょ! 9品の呪符を使ったって,一人失踪させるほどの精神支配ができたら大成功よ」

 モモカ「別に信じなくてもいいわ。すべてはこの指輪が悪いのよ。わたしから受け取ったことにしないで,どこかでこの指輪を拾ったことにしてくれたら嬉しいわ」


 録音を聞かせたあと,部隊長は,大事にケースに入っている指輪をモモカに見せて言った。


 部隊長「つまり,お前は失踪事件の罪をこの指輪のせいにしたいわけだな?確かにこの指輪から強いエネルギーみたいなものは感じる。でも,指輪は道具だ。それを使う者が処罰されなくてはならない。さて,モモカ,失踪者はどこに行ったのかな?」

 

 モモカは,オミレにハメられてしまったと思った。でも,なぜかオミレを恨む気持ちにはなれなかった。だって,実際,自分が失踪事件の犯人だからだ。

 

 モモカ「わたし,ほんとうに何もしりません!」


 モモカはシラをきり通すことにした。


 部隊長「今回の失踪事件は半端な数ではない。135名にも達してしまった。もしかしたら,まだ数が増えるかもしれん。証拠がある以上,必ず白状してもらう。お前は,今から特弟子に引き渡される」


 特弟子とは,特別待遇の弟子だ。その実力は宗主にも匹敵すると言われている。しかし,特弟子のいる第1区画がどこなのかも,知るものは少ない。


 モモカは2名の治安隊に,手首と肩部分をしっかりと捕まれて身動きできないようにされた。その後,部隊長が1枚の呪符を取り出してモモカの額に貼り付けた。


 モモカはその呪符が何なのかは分からなかったが,10秒もすると急激に眠気が襲ってきて,そのまま意思を失うように眠った。


 部隊長「さすがは5品の睡眠呪符だな。見事な効能だ。第5師範,ではモモカを連行します」


 第5師範は,まだモモカの巨乳にも触ってもいない。せめて何発かは犯してから引き渡したかった。しかし,特弟子が絡んでいるとなると,第5師範といえど,うかつには手が出せない。ある意味で,特弟子は宗主以上に怒らせてはいけない連中だ。


 師範「あっ,ああ。よろしく詮議を頼む」


 第5師範が言えたのは,この程度の言葉だった。部隊長は自らモモカを担いで,師範の家を出ていった。途中,部下を帰らせて,部隊長ひとりで,モモカを担いだまま,どこかに去っていった。特弟子に引き渡す場所は,内弟子の部下にでさえも内緒にしていた。



 一方,オミレは,失踪者を出した犯人であるモモカを見つけ出した功績により,晴れて治安部隊の一員になれた。その身分証があれば,禁地にだって出入り自由だ。


 オミレは,その日の夕方,その特典を生かして,禁地のひとつである洞窟の中に入っていった。禁地に行くには,治安隊の事務所で保管してある禁地の鍵を持って行く必要がある。鍵を持ち出す場合,鍵管理台帳に日時と名前を記載すれば持ち出しができる。特に上司の了解など必要はない。


 オミレは,その鍵管理台帳を開いて,名前を記載しようと思った。すると,30分ほど前に,部隊長がその鍵を返却していた。


 オミレはつぶやいた。

 

 オミレ「あれ?なんで部隊長が禁地の鍵なんて持ち出していたの?なんか記録に残るのはいやだな,,,やはり,合鍵を造ろう」


 オミレは,簡易合鍵を造る準備をしていた。粘土で鍵の型を取り,そこに瞬間硬化の樹脂を流した。強度的には問題があるものの,型さえできればいい。


 10分程度で,即製の硬化樹脂による鍵ができた。


 オミレ「これで記録せずに,禁地に行けるわ」


 禁地には別に門番がいるわけではない。禁地になっている場所は洞窟の入り口だった。そこは,鉄の扉で覆われていて,鍵がかかっていた。


 オミレは,硬化樹脂で造った鍵を,錠前の穴に差し込んだ。でも,回すことはしなかった。回すと樹脂が折れる。そこで,5品の強化呪符を取り出して,鍵の強度を一時的に引き上げた。強化呪符は人間でなくても,物質にまで強化することができる。


 カチャ!


 なんとか錠前を開けることができた。オミレは,しめしめと思って,洞窟の中に入っていった。真っ暗なので,懐中電灯を使った。


 洞窟の中をしばらく歩いていくと,あれ?元に戻った?オミレは,道行く途中に石ころを並べて,マークをつけていた。それによって,ぐるりと洞窟内を一周したことがわかった。ものの30分もかかっていない。


 オミレは,絶対何かあると思った。だって,部隊長が用もないのにこんなところに来るはずもない。それに,モモカが失踪事件の犯人として特弟子に引き渡されたことも気になる。


 オミレは,特別な強化呪符を取り出した。この呪符はウサギの血を使って増強している。聴力を増強させるだけでなく,人間の可聴域を超えた音も拾うこともできる。


 オミレは,右耳にこの呪符を貼り付けた。


 ヒューーーン!(耳の聴力が増強された音)


 聴力を強化したオミレの耳に,微かに人の話し声が聞こえた。


 「ふふふ,この犯人,めっちゃ巨乳だな。おまけに母乳まででるぜ」

 「おまけに犯し放題だぜ。いくらでも精子がでてしまうぜ」

 「この犯人に比べたら,他の女どもがカスに思えるぜ」

 

 オミレの強化した右耳に,ぐるっと一周した円の中心部からこのような音が聞こえて来た。つまり,どこかに中心部に至る隠し扉があるに違いないと思った。


 オミレは,壁の構造に注意しながら,再度,洞窟内を見て回った。すると,少し壁の構造が違う部分を見つけた。でも,この壁を開ける方法がまったくわからない。


 オミレは,ニヤッと微笑んで,また特別な呪符を取り出した。音波呪符だ。この呪符には鶏の血を使っている。だから,「コケコッコーー!」というような甲高い音を発すると遠くまで声が届くはずだ。オミレは,このような特殊な呪符を造るのが得意だ。もっとも,その方法は以前,姉によって教えられたものだ。


 オミレはその呪符を自分の喉の部分に貼った。効果は10秒も続かない。でも,それで十分だ。そして,自分が雄鶏になったつもりで叫んだ。


 コケコッコーーーー!


 見事な『コケコッコー』だった。これなら,十分に遠くまで響き渡っただろう。


 次にオミレは,5品相当の威圧呪符を片手に5枚ほど持って壁に身を寄せて待機した。それとは別に5枚の睡眠呪符も用意した。この睡眠呪符にはネコの血を使って増強させている。猫の怠惰で長時間眠る性癖が睡眠呪符にうまく適合する。


 タッ,タッ,タッ,タッ,


 この扉に向かって来る音がハッキリと聞こえた。


 ゴゴゴーー!


 壁の扉が開いて,そこから2名の門弟が出てきた。


 「誰だ!!鶏の真似なんかしやがって!!」

 「おい,コラー!!動物たちが怖がってしまうだろ!!」


 2名の門弟たちは,叫びながら開いた壁の扉から飛び出して来た。その瞬間,オミレは,贅沢にも,彼らに5枚の威圧呪符をすべて放出させた。


 ヒューン,ヒューン,ーー


 彼らの行動は,威圧呪符によって,一瞬,怯んだ。オミレにとっては,それで充分だった。


 オミレの拳による下顎攻撃で,彼らをさらに一瞬,めまいをさせた後,5品の睡眠呪符を彼らの額に貼り付けた。こうすることで,少なくとも2,3時間は睡眠状態が続く。威圧呪符と睡眠呪符の連携プレーだ。


 彼らが意識を失ったあと,オミレは,開いた扉から中に入っていった。その通路には蛍光灯による照明があった。


 しばらく行くと,平屋で長屋のような構造の建物があった。


 どうやら,一番右側に部屋から,男どもが巨乳少女を犯しているようだった。オミレは見つからないようにその長屋に移動して,声の聞こえる部屋を扉にある小さな窓から覗いた。


 そこには,ベッドに横たわった少女がいた。しかも全裸だ。それはモモカだった。片方の乳房だけで3kg,両方で6kgにもなるKカップの巨乳なのですぐに識別できた。モモカは眼を閉じていた。意識がないようだった。3名の男どもがモモカを囲っていた。


 ひとりはモモカを犯し,ひとりは右側のおっぱいをもみしだき,ひとりは左側の乳首から母乳を吸い,ひとりはモモカの口の中に逸物を挿入していた。そこまでされていても,モモカは意識を取り戻さなかった。


 「へへへ,こいつのおっぱい,最高だぜ!母乳まで出やがる」

 「あそこの締まりも最高だ。精子が搾り取られるようだ。うっ,また出てしまう!!」

 「お前,今日で3発目だろう?まだ出るのか?若いやつはいいなぁ」


 こんな会話がオミレの耳に入った。すでに強化呪符の効果はないが,容易に聞き取れた。オミレはモモカを放置した。それよりも,他にも女性が監禁されている可能性がでてきた。そこで,身を隠しながら,モモカを犯すのに集中している男どもの眼を盗んで,さらに別の部屋を調べることにした。


 次の部屋では。やはり,全裸の少女がいて,ある男が注射器で彼女の腕から血を抜き取っていた。女性は,髪がばさばさだったせいもあり,小さな窓口から覗き見しているオミレでは,誰が誰だかを判別することは無理だった。


 オミレは,このまま覗き見しても無駄だとわかった。そこで,姉の捜索を諦めた。それよりも,この施設全体が何のためにあるのかを探ることが大事だと思った。


 さらに身を隠しながら,この長屋の奥にある別の建物を調査することにした。その道すがら,数人の門弟が巡廻をしていたが,うまく身を隠すことができた。


 その奥の建物から,遠くにいても,動物の鳴き声が聞こえた。


 「ミャアーー,ミャアーー!」

 

 猫の鳴き声だった。モモカは,その声のする方向に移動した。すると,そこは,動物たちを飼育している建物だった。猫,ヘビ,マウス,ウサギの4種類の動物がいた。この動物は,かつて姉がいろいろ実験して,最終的に選定した動物たちだった。


 オミレはつぶやいた。


 オミレ「この動物って,姉のお気に入りの動物たちだわ。もしかして,,,」

 

 ここにきて,オミレは,この施設と姉は何らかの関連があると思った。


 一方,侵入者の情報は,この施設の管理室にあるモニターにしっかりとオミレが映し出されていた。


 管理室にいる女性の特弟子は,ニヤッと微笑んで,用心棒役の剣客に命じた。


 特弟子「ねずみが一匹侵入したようだわ。生け捕りにして捕まえてきなさい」


 この虚道宗は,既存の武術に呪符を組み合わせたものだ。その武術が剣技であっても構わない。ただし,剣技の場合,刀という武器を使うので,呪符に頼る必要性が下がる。事実,彼は呪符に頼っていない。


 剣客「毎日,貧相な女ばかり抱いているんで,自分が用心棒だって,コロッと忘れていた」

 特弟子「たまには,報酬に見合うだけの仕事をしてちょうだい」

 剣客「へいへい。わかりやした。うまく仕事したら,褒美をもらえますか?ぜひ,あなたと一発させてほしいのですがね」


 特弟子は,スケベで女ばかり抱いている剣客をバイ菌でも見るかのような目つきで見た。


 特弟子「わたしに性的魅力はないはずよ。出るべきところはほとんど出ていないわ」

 剣客「へへへ。美人の処女がいいのですよ。美人の処女が。へへへ。あの侵入したネズミと一発させてくれてもいいですぜ」

 特弟子「処女は実験に使うからだめよ。巨乳なら,今日来た失踪事件の犯人でも犯しなさい。母乳だって出るそうよ」

 剣客「へへへ。わしは,ちょっと鼻が効くんでね。あいつには,近づかない方がいいって,直感が言っていますぜ。長年ヤクザどもの用心棒をしてきて,いろんなやつを見て来たけど,あの巨乳少女はやばいやつですぜ。ふふふ」

 

 剣客は直感が鋭かった。彼が今日まで生きてこれたのは,この直感によるところが大きい。危ないとみるや,すぐに逃げる。これが彼のモットーだ。用心棒としてこれまで生きながらえた処世術だ。


 特弟子「へーーぇ,そうなの?まぁ,いいわ。とにかくネズミを生け捕りにしてきてちょうだい。傷つけてもだめよ。犯すのもダメよ。わかった?」

 剣客「では,成功報酬として,あなたのおっぱいを触ることで我慢しましょう」

 特弟子「・・・」


 特弟子はBカップしかない。もちろん,いまだかつて男に触られたこともない。ここで拒否しようものなら,たぶん用心棒を止めてしまうだろう。彼はすでに女を抱くのも飽き飽きしているし,ほかに楽しみもないからだ。彼をつなぎ止めるには,自分の体を餌にしておくくらいだ。代わりの用心棒がすぐに見つかればいいのだが,そう簡単には見つからないのもよく知っている。


 特弟子「わかったわ。1分間だけよ」

 剣客「へへへ,5分は触りたいですぜ」

 特弟子「じゃあ,3分まで妥協してあげましょう。どう?」

 剣客「3分ですか,,,じゃあ,成功報酬ではなく,前払いで,今から触らしてほしいですな」

 特弟子「・・・」


 剣客のハマルが,この閉塞感のある職場にいるのも,超がつくほどの美人の特弟子がいるからだ。特弟子は超美人だった。ハマルはなんとしても特弟子を抱きたかった。ここにいる家畜のように監禁されている女たちには,毎日のようにこの職場にいる男どもに犯されて,全身精子で汚され,まったく性的欲望がわかなかった。それでも射精だけはしたいので,美人の特弟子を犯しているつもりで彼女らを犯していた。


 特弟子「わかったわ」

 剣客「では,遠慮なく」


 特弟子は,白のTシャツの上に道着を着ている。道着といっても,機動性を重視した運動着のようなものだ。剣客のハマルは,特弟子を懐に寄せて,右手で彼女のBカップになるおっぱいを服の上から鷲づかみのように握った。


 特弟子「うっ!」


 おっぱいを触られた瞬間,特弟子は全身の力が抜けたかのように感じてしまった。自分でも,なんで力が抜けるのかわからなかった。


 ハマルは,特弟子が力が抜けたようになっているのをいいことに,道着とTシャツをまくり上げて,さらにブラジャーも上に追いやって,隠れていた乳房と乳首をハマルの目の前に晒した。


 ガブッ!


 ハマルは,思わず,そのまったく汚れを知らない可憐な乳房と乳首を,自分の何日もゆすいだことのない汚い口で噛んだ。


 特弟子は心の中でつぶやいた。


 特弟子『いったい,どうしたというの?体から力が抜けていってしまいそうだわ。それに,なんだか,体が熱くなってきたわ,,,』


 それも当然のことだった。剣客は,いざっという時のために,この施設で製造している5品相当の催淫呪符をこっそりと盗んでいた。そして,それを今,特弟子の背中の部分に服の上から貼り付けたのだ。直接,肌には接触しないので,効果は大幅に下がるが,それでも3品相当の効果は期待できる。


 ハマルにとって,この機会にエッチまでできれば存外の儲けものだ。仮にできなくても,それなりに特弟子の体を舐めまわすことができればいい。


 5品相当の催淫呪符を正規に購入するとすれば,20万円もしてしまう。ハマルが自腹を切って購入したとすれば,こんなもったいない使い方は決してしなかっただろう。


 ハマルは,特弟子が抵抗しないのをみて,彼女を床に押し倒した。そして,彼女の邪魔になるブラジャーを首元にまで押し上げて,ほんのり膨らんだBカップのおっぱいを,両手で鷲掴みにした。


 この時になって,特弟子は少し正気を取り戻して,太もものバンドに忍ばせている『3品の憤怒呪符』を取り出して,自分の膝の部分に貼り付けた。


 催淫状態から切り抜けるには,もっと強烈な感情を自分に叩き込めばいい。今,彼女がしたように憤怒呪符が手っ取り早い。


 ハマルがおっぱいを3分以上も弄んでから,彼女の下半身を裸にして,股を拡げさせて,まさにあの部分を挿入しようというとき,,,


 やっと,憤怒呪符の効果効き始めた。


 パチーン!


 特弟子はハマルの顔を思いっきり平手打ちした。


 特弟子「こらーー!!ハマル!!お前,わたしに催淫呪符を使ったわね!!お仕置きよ!!」


 特弟子は,少女たちを痛めつけるための鞭を取り出して,ハマルを攻撃しようとした。


 ハマルはここまでと観念して謝った。


 ハマル「ごめん,ごめん。ちょっとしたでき心だよ。たまたま催淫呪符を拾ったので,試しに使ったまでさ。まさか服の上からでもそこそこ効果があるなんでびっくりだ」

 

 彼の言葉に,特弟子はさらに怒って鞭を彼に振るった。でも彼にとって,その鞭を回避することなど容易なことだった。


 彼は,何度か鞭を回避した後,特弟子に言った。


 ハマル「では,ネズミを生け捕りに行ってきます」


 彼はそそくさとこの場から逃げるように去った。

 

 それを見た特弟子は,怒りの感情はもう必要ないので,服装を整えてから,あぐらを組んで,精神を落ち着かせることにした。



 ーーー

 管理棟を出たハマルは,この施設を観察しようとしているオミレを,遠巻きにして近づいていった。


 オミレは,女性たちの監禁区画と動物の飼育区画を観察して得た結論は,この施設では,上位の呪符制作を造る,もしくは呪符の研究施設だろうと推定した。その制作に,姉が関与している可能性が高いと思った。


 そんなことを考えていると,オミレのすぐ背後に人がいることに気がついた。


 オミレ「え?いつのまに?」


 剣客のハマルは,気配を殺して近づいていた。オミレは彼がかなりの手練れだと思った。それに,長さ50cm程度の短い木刀を持っていた。剣術を得意とする者だと判断した。


 オミレは,彼の服装から彼が門弟ではないと判断した。


 オミレ「わたし,この虚道宗の治安隊のひとりよ。あなたは誰なの?門弟には見えないけど?」

 

 ハマル「治安隊なのに,なんでこそこそとしているんだ?やましいことでもあるのかな?それに,入り口を調査しに行った連中が帰ってきていない。さては,お前の仕業かな?」

 

 オミレは彼と戦うかどうかを考えた。彼は木刀を持っている。ということは,殺すことまでは考えていないはずだ。ならば,彼の技量を見定めるのも悪くないと思った。


 オミレ「わたしをどうする気?」

 ハマル「フフフ,決まっているだろう?捕まえて実験材料にする。処女の血は呪符造りに有用らしいからな」

 

 そのことはオミレもよく知っている。でも,女たちを犯してしまえば,価値が下がってしまう。じゃあ,どうして監禁区画の女性は犯されているのかと疑問に思った。

 

 オミレ「女性が犯されていたけど,どうして?呪符造りにメリットがなくなってしまうわ」

 ハマル「呪符のすべてが強化呪符や威圧呪符とは限らないさ。それ以外にいろいろな用途がある。例えば,催淫呪符とかな。アレの最中に呪符を造れば,最高の催淫呪符の完成だ。もっとも,この知識は特弟子からの受け売りだがな。フフフ」

 オミレ「・・・」


 オミレは知らなかった。この施設で造る呪符は,虚道宗で消費するだけでなく,外販用にも製造していた。その主要な商品のひとつが催淫呪符だ。ほかにも,安産呪符,恋愛成就呪符,別離呪符,嫌悪呪符などいろいろある。


 ハマル「では,おとなしくわたしと一緒に来てもらおうかな?いやなら,力づくで連れていくだけだが」

 オミレ「では,力づくでお願いします」


 そう言ってオミレは,すぐに5品の威圧呪符を発動させて,ハマルに向けて放った。


 ハマルは,自分は呪符使いではないが,呪符使いとの戦いには慣れている。威圧呪符対策は基本だ。


 ハマルは,すぐに数歩後退した。威圧呪符は距離が遠ざかると,急に効果が低減してしまう。数歩引き下がるだけでその効果は大幅に低減する。


 ハマル「呪符使いはバカのひとつ覚えだな。攻撃呪符は威圧呪符しかないのかな?

 どうだ?勝負の勝ち負けで賭けをしないか?俺は,この木刀しか使わん。もちろん呪符などは使わない。俺が勝ったらお前を抱かせろ。お前が勝ったら,そうだな,,,1日だけだが,お前の奴隷になろう。なんでも言うことを聞こう。どうだ?いいだろう?」


 『抱かせろ』という意味を,ただ単にハグするという意味に無理やり理解したオミレは,なんのリスクもないので,彼との賭けに同意することにした。


 オミレ「了解よ。では勝負です!」

 

 オミレは,3品の低レベルの威圧呪符を5枚ほど取り出して,ハマルに向けて放った。


 ハマルは,5枚も呪符が飛んでくるので,回避は無理だと判断して,木刀で叩き潰すことにした。


 シュパー!,シュパー!,シュパー!,シュパー!,シュパー!


 5枚の呪符は,一瞬でことごとく粉砕された。ハマルがちょっと気になったのは,叩き潰すときに,少し閃光が走ったことだ。


 ハマル「この呪符,普通の威圧呪符ではないな?」

 オミレ「正解よ。わたしが何ヶ月もかかって造った特別性の呪符よ」

 

 そうは言っても,ハマルには特に何の変化もないので,気にせずに,木刀で攻撃することにした。


 ハマル「どうやら呪符の効果が発現するには,少々時間がかかるようだな。では参る」


 ハマルは,さきほどの呪符の閃光には気にせず,オミレに向かって木刀を振るった。だが,その際,目が少しかすんでしまい,ハマルを正確に捕捉することができなかった。かすむというよりも,目から涙が湧き出てきた。

ハマルは,慌てて袖で目を拭いた。


 ハマル「お前,いったい何をした?」

 オミレ「どう?降参ですか?その目では,もう戦うこともできないでしょう?」


 ハマルは,まさか涙を出せるような呪符があるとはおもわなかった。これでは,まともに相手を見定めることもできない。


 ハマルはもともと目がいいほうではない。そのため,目隠し状態でも敵と戦うすべを練習していた。


 ハマル「まだ,勝負はついていない。試合続行だ」


 ハマルは,目を閉じたまま言った。


 オミレ「目も見えないのに,このまま戦うというのですね?そのおごった考えを叩きのめしましょう!」

 

 目の見えない敵など敵ではない。オミレはハマルの背後に回って,威圧呪符を彼に放とうとした。


 だが,オミレに威圧呪符を放つ機会は得られなかった。彼は,オミレが背後に回ったことなど足音で容易にわかった。そして,木刀を水平に繰り出した。


 ダッ,ダッ!


 その音は,みかけは50cmの長さだが,遠心力を加えることで,差し込み式になって隠れていた部分が出てきた。3段式の木刀だ。そのため,長さが1.5mにもなった。


 ドン!(木刀がオミレの横腹にヒットした音)


 オミレは,まさか木刀が3倍の長さになるとは夢にも思わず,横っ腹にまともに受けてしまい,激痛に耐えきれずその場に倒れてしまった。オミレは,強化呪符を取り出して,打たれた部分に貼った。強化呪符は,体力や筋力を増強させる作用がある。そのため,早く回復させるときにも使える。


 だが,回復する余裕を与えてくれなかった。ハマルは,この隙に,目を何度も擦って,視力を取り戻した。そして,剣先をオミレの喉元に突きつけた。


 ハマル「勝負あったな。では,約束を果たしてもらおう」

 

 ハマルは,特弟子からオミレを犯すことも傷つけることもしてはならないという指示をすっかり忘れていた。


 オミレは,あっさりと負けを認めることにした。ここで喚いても何の益にもならないからだ。


 オミレ「約束は果たします。でも,抱かれるだけで,エッチはしません」

 ハマル「何言っているんだ?お前?抱くという意味はエッチに決まっているだろ!」

 

 オミレはこれ以上強情をはってもまずいと思ったので,妥協することにした。


 オミレ「わかりました。では,避妊具だけはつけてもらいます」


 オミレはそういって,太ももバンドに備え付けていた小さなケースからコンドームを取り出した。


 オミレ「あそこが元気になるまで,手でしごいてあげます。嬉しいでしょう?」

 ハマル「・・・」


 ハマルは,ちょっと気に食わなかったが,エッチできることに満足することにした。


 ハマル「わかった。それでいいとしよう」


 ハマルは,特弟子を抱こうとして,あそこが勃起状態になったばかりなので,一刻も早く射精したかった。


 かくして,オミレはその場でハマルのズボンを脱がせて,もう何日も風呂に入っていない,汚い不潔な臭いのするあの部分をいやいや触った。男性のあの部分を触るのは初めてのことだ。でも,どうすればあの部分が勃起状態になるかは知っていた。


 でも,そんな考えは無用だった。すでに,あの部分は勃起状態だった。


 オミレは,慣れていない手つきで,コンドームをなんとかあの部分に装着することに成功した。

 

 ハマル「よし,これで準備OKだな?おまえも,さっさとパンツを脱いでお尻を出せ」


 オミレはもじもじしながら,ゆっくりとした動作でパンツを脱いでいった。パンツを脱いでも,まだパンティがあった。さらにパンティをゆっくりと脱いでいった。


 いらいらしながらハマルは叫んだ。


 ハマル「さっさとしろ!もう立ちっぱなしで,我慢できん!!」

 オミレ「はいはい。もうすぐ準備できますよ」


 そういいつつも,オミレは相変わらずゆっくりとパンティを脱いで,ハマルの前で四つん這いになった。


 ハマルは,ニヤッと笑って,自分の逸物をオミレのお尻に近づけて,まさに挿入しようとする時,,,


 ドタッ!


 ハマルはその場に倒れてしまった。それをみたオミレは,ほっとしてひとりごとを言った。


 オミレ「気絶するまで意外と時間がかかってしまったわね。でも,犯されないでよかったわ。万一のために,避妊具に睡眠呪符の効能を植え付けて正解だったわ。フフフ」


 オミレは,基呪符を造る職人にコンドームを渡して,5品の基呪符相当になるように依頼していた。そのコンドームに睡眠機能を持たせるため,それを猫の血で何ヶ月も浸漬させ,かつ,オミレが寝る前に,毎日,今感じている眠気をそこに念写して造ったものだ。その性能は,7品レベルにも相当するものだ。ちょっとやそっとの抵抗力では,睡魔から打ち勝つことができるものではない。


 オミレは,脱いだパンティとパンツを穿き直した。


 オミレ「さて,姉を探すのはちょっとやっかいだわ。モモカを助けて,彼女と一緒に姉を探すことにしましょう」


 オミレは,モモカを助け出すため,一番右側の部屋に急いだ。



 ーーー

 10分もすると,ハマルはゆっくりと起き上がった。


 ハマル「ふーー,まさか,コンドームに睡眠呪符の効果を仕込んでいるとは思わなかったな。日頃から,呪符耐性の訓練を積んでいなかったら,何時間も眠りっぱなしだった」


 ハマルは脱いだパンツとズボンを穿いて物陰に隠れた。というのも,廊下の奥の方から,周囲を警戒しながら迫る一団が来るのをいち早く察知したからだ。

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