23 一樹,二樹,三樹たち

 札幌に着いたハビルたちは,ヒッチハイクで送ってもらった車から降りた。運転手に謝礼としていくらかのお金を渡した。ハビルとしても,トラブルはできるだけ起こしたくない。

 

 子供生産計画と言っても,北海道地区の場合,特別な施設はまだない。借りたマンションに誘拐した女性たちを住まわせて,獣魔族の子供を産ませる予定だ。


 これまでの例から言えば,誘拐された少女たちを従順に従わせる方法は脅迫だ。 本人を殺害するという脅し文句でもいいし,彼女の家族や親戚を皆殺しにするという脅し文句でもいい。それでもだめなら,声をでないように喉をつぶし,足に拘束錠をつけることになる。自殺する女性も多く出てくるが大したことではない。また,別の少女を誘拐すればいいだけだ。その後,ゆっくりと『君だけを愛しているよ』,『わたしのセックスは最高だよ』などと,偽りの愛の言葉で洗脳させていく。


 北海道地区で派遣された実動部隊は3名の新人獣魔族だ。他の地域と違う点は,彼らは,どうやら天才級に頭がいいようだ。それがどう影響してくるかなど,ハビルはまったく考慮するに値しない。


 ハビルが札幌市に着いてまずしたことは,ウィークリーマンションを借りることからだ。2LDKのちょっと豪華な部屋だ。ハビルたち7人が住むには狭いが,いずれ,辺鄙な場所にあるマンションを年単位で借りる予定だ。それまでの仮住まいだ。


 北海道地区の子供生産計画は,まだ緒に就いたばかりだ。末端で活動している新人の獣魔族らは,手始めに各自が少女ひとりずつ誘拐して,1DKのマンションに住まわしている状況だ。彼らの誘拐や洗脳の技量が上がれば,順次誘拐する少女を増やしてくことになる。


 ハビルは,洗脳能力に優れている。そのいい例が,東子たち4名だ。彼女らはハビルの言いなりになっている。優れていると言っても,彼女らに恐怖心を植え付けて,性の虜にするだけのことだ。


 彼女らは,ハビルの殺人行為を間近にみている。命令に背いた場合,いっさいの容赦はない。警察など,まったくあてにならないことも知った。仮に訴えたところで,地元の警察などあてにならない。


 そんなことを考えると,彼女たちにとって最善の選択は,ハビルとの性行為に快楽と生きがいを見いだすことだ。彼とのエッチは最高に気持ちよく,なんども絶頂に達してしまうほどだ。そのまま死んでもいいと思えるほどだ。


 彼女たちは,このように考えてしまい,いっさいの抵抗をすることなく,ハビルの言いなりになる道を選んだ。


 借りたマンションに着いたハビルたちは,このマンションで一泊して旅の疲れを十分に癒やすべく,すぐに眠りについた。


 ところが,他の誰も気がつかなかったことだが,真夜中に奇妙なことが起きた。モモカの体が消えてしまう現象だ。指輪のメアンが真夜中の数時間だけなのだが,モモカの体を消滅させた。


 亜空間に収納されたモモカの体は,裸になって,彼女の髪の毛によって徐徐に全身が覆われていった。その現象は,イジーラやメリルの変態と似ていた。


 指輪の亜空間は,イージラとメリルの変態の記憶を持っている。折角,その変態能力があるのなら,モモカの体で試そうというのがメアンの考えだ。メアンは2,3ヶ月しかない命だ。ならば,その限りある命を有効に使おうという発想だ。


 そんなモモカの異変には関係なく,彼らは平穏な朝を迎えた。ハビルたちは,テレビを見ながら朝食を食べた。


 テレビでは,どのチャンネルを回しても,青函連絡船が大島に飛ばされたという事件を,大々的に報道していた。かつ,乗客の死体が多数発見されたことも報じられた。各局の報道合戦は凄まじく,ある放送局は,ヘリコプターを2機も飛ばして,大島の周辺をテレビで流していた。


 死亡者リストや,行方不明リストがひっきりなしに更新されていった。行方不明リストには,モモカや東子たちの名前があった。でも,ハビルの名前はなかった。ハビルは偽名を使っていた。


 そんなテレビの報道を見ながら,ハビルは他人事のような顔をして現在直面している問題点をモモカたちに正直に語った。


 ハビル「これまで,他の地区で行われた子供生産計画によれば,誘拐するターゲットは家出少女だ。警察に通報される可能性が低いからだ。処女の可能性は低いが,妊娠していなければいい。しかし,この方法だと,適合率が10%程度と非効率的なのは明らかだ。


 俺は,適合率を20%,できればそれ以上に引き上げたい。そのためには,これまでの他の地域での適合率データを精査に解析しなければならない。当面,俺はその作業に集中する。そこで,モモカには,密香マンションにいる住人の管理を任す。時には力でやつらを押さえ込むことも必要だ。頼むぞ」


 このハビルの言葉にモモカは,すぐに返答した。


 モモカ「ご主人様,任してください。力で抑えることは,まだ無理かもしれませんけど,でも,霊力ならそれなりに使えるようになりました。なんとかやってみます」


 ハビルはモモカをどこまで信用していいかわからないが,どうせ失敗したところで,仕切り直せばいいだけのことだ。彼はニコニコとして住所が書いてある紙をモモカに渡した。


 ハビル「この住所にある蜜香マンションは,われわれが借り上げている場所だ。そこに新人の獣魔族と誘拐してきた少女たちが暮らしている。その管理をお前に任す。マンションの賃貸料は俺が支払うが,やつらの食費などの経費は,自分たちで稼ぐようにしなさい」

 モモカ「・・・」


 軍資金は豊富にあるのに,ハビルはけちくさかった。彼は,さらにモモカに注意事項を説明した。


 ハビル「いいか,くれぐれも警察の厄介にはなるな!!もし,厄介になりそうだったら,この場所には帰ってくるな。お前の失敗で,獣魔族全体が危険な目にあってしまうからな」

 モモカ「ご主人様,了解ですーー」


 ハビルはモモカに注意事項の内容を宣誓契約させた。獣魔族にとって,死活問題だからだ。モモカは,『前世の記憶』で,宣誓契約の欠点を理解した。それによれば,宣誓契約など,忘れてしまえば,何の効力もないのだ。そのことを知ってから,モモカは,ハビルと宣誓契約したことを忘れることにした。忘れることはモモカにとっては朝飯前だ。


 食事を終えた後,モモカは仕事に行く直前に,かっこよく敬礼のスタイルでハビルに挨拶した。


 モモカ「ご主人様,ではお仕事に行って参ります。吉報を待っていてください」


 その言葉にハビルは答えた。


 ハビル「うむ。よし,全権をお前に委ねる。俺の名代としてやつらを管理して来い。なにかトラブルがあれば,すぐに報告しなさい。勝手な行動は慎むように」

 モモカ「はい,ご主人様!任せてください!!」


 モモカは,元気よく部屋から出ていった。ミツルは,ハッカーの勉強を命じられたので,それに集中することにした。幸い,彼は頭脳明晰なので,どんどんとハッカーの基礎を身につけていった。


 ハビルの仕事は,モモカに任せた内容もあるが,それは彼のほんの一部に過ぎない。少女1000人体勢に拡充していくのが彼の本来の仕事だ。だが,適合率をアップさせる要因がまだ不明な段階では,むやみに少女を誘拐するのは得策ではない。適合率のデータ解析を待ってから,本格的に行動を起こす算段だ。



 ー 蜜香マンション ー

 モモカたちの住むマンションから20分も歩くと,蜜香マンションがある。モモカは,101号室のドアをノックした。その部屋には,新人の一樹がいる。3人の新人獣魔族のリーダーだ。


 一樹以外の二樹と三樹も事前にハビルから連絡を受けていたので,一樹の部屋に集まっていた。


 一樹は管理者が来るとは知らされていたが,まさかモモカがその管理者だとは思わず,なにかの新興宗教の勧誘だと思ってすぐに断る体勢に入った。というのもハビルの代理というからには,それなりに威厳のある管理者だと思ったからだ。ところが眼の前にいるのは15歳になるかならないかのガキに毛が生えた程度の少女だ。


 一樹「なんだ,お前?」


 一樹の反応を見て,モモカはすぐに自己紹介をした。


 モモカ「あの,,,わたし,ご主人様,,,あっ,その,ハビル様のことですけど,ご主人様の言いつけでここに来ました」


 一樹はちょっとびっくりしてしまった。まさかこんなクソガキだったとは,,,一樹はちょっと腹が立って嫌味を言った。


 一樹「ふん!ボスの性奴隷のくせに!どうせその巨乳でここの管理者の役職をねだったんだろう?」


 一樹はモモカの服の上から巨乳をがっつりと掴んだ。モモカは,念話で指輪のメアンにお願いした。


 モモカ『メアン! このわたしのおっぱいに触っている手に凍結魔法を発動させて!』


 ヒューーー!!


 一樹「冷てぇーー!!」


 一樹は思わず,おっぱいを握っている手を離してモモカから数歩離れた。


 一樹「お前!人間のくせに魔法が使えるのか?! 道理でボスがお前にここの管理を任せるはずだ」

 モモカ「今のは警告です。これ以上無礼を働いたら,即刻,あなたの首を刎ねます!」


 ここで事を荒立てる必要などまったくないので,一樹は彼女の言う通りにした。

 

 一樹「分かった,分かった。とにかく中に入れ。話はそれからだ」


 部屋といっても一部屋しかない。その部屋には,小さなちゃぶ台のそばに二樹と三樹があぐら座りをして,ともにパソコンで何やら忙しくキーボードを叩いていた。


 一樹は,モモカのためにコーヒーを準備して,そのちゃぶ台の上に置いた。この部屋には座布団もない。モモカとミツルは同じく床に直接座って,差し出されたコーヒーを一口飲んだ。


 一樹も床にどっかりと腰を据えて,モモカに質問した。


 一樹「まず,あなたから自己紹介をしてください。あなたは人間なのでしょう?どうして魔法が使えるのですか?ボスとの関係は?」


 一樹の言葉使いが少し丁寧になった。というのも,モモカはもしかしたら,『強者』なのかもしれないと思ったからだ。


 モモカは自分の自己紹介をした。


 モモカ「わたしはモモカといいます。この国の人間です。15歳,今は無職です。この札幌で少しお金をためてから,祖母が住んでいる女満別に戻る予定です」

 

 一樹は,モモカの説明を一生懸命聞いていたが,二樹や三樹は,パソコンをしながら聞いているので,どこまで真面目に聞いているのかわからなかった。特に三樹は,2台のノートパソコンを駆使して何やらしていたので,まともに聞いているような感じはしなかった。


 そんなことはお構いなしに,モモカは自己紹介を続けた。


 モモカ「わたしは,透明の腕を繰り出せます。その腕は刃に変形させることができます。か弱い一般人相手なら,わたしは無敵でしょう。それに,この指輪を使えば魔法が使えます。つまり,わたしは,霊力と魔法が使えます」

 

 ここまで話をすると,パソコンに夢中だった二樹と三樹は,タイピングするのを止めた。モモカという存在に少し興味を持ったようだった。


 二樹と三樹は,お互い顔を見合わせて渋い顔をした。一樹はそれが何を意味するかはよく理解していた。


 一樹「モモカさんは,つまり,魔法使いであり,霊力使いということですね?」


 一樹は,モモカをさん付けして,丁寧な言葉使いをした。一樹たちは,新魔大陸の状況は,基礎知識として教えられていて,霊力についてもある程度の知識を有していた。


 モモカ「そう理解して結構です」


 一樹「霊力も使えるということは,雪生さんや,メリルさんと関係があるのですか?」


 一樹は,新魔大陸の知識をかなり持っていた。


 モモカ「わたしは,前世の記憶をときどき夢の中で思い出します。でも,あなたのいう雪生さんとかメリルさんにつてはよく知りません」


 これは本当のことだ。前世の記憶といっても,その思い出すは,『前世のモモカ』,つまりイジーラやメリルのことだが,彼女らが体験したことの一部分だけだ。具体的な名前まではよく分からない。


 一樹「なるほど。ところで,その魔法と霊力ですが,レベル的にはどの程度ですか?」

 モモカ「魔法は中級レベル,霊力に至っては,まだ初級レベルといったところです。これから,レベルアップを図っていくつもりです」


 この点については,モモカは冷静に自己判断ができていた。


 一樹は,モモカに戦闘とは関係のない,基本的な価値観について質問した。


 一樹「あの,しょうもない質問ですが,モモカさんとって,この国の人間は,もしくは外国の人間でもいいですが,そのような印象を持っていますか?」


 モモカは,なんともヘンテコな質問をするもんだと思った。だが,正直に返答した。


 モモカ「別に,何も思っていません。特に男どもは,わたしの魔力や霊力の餌ですから」


 その言葉を聞いて,二樹と三樹はまたパソコンを打ち始めた。一樹は,なんかがっかりしたような感じで言葉を発した。


 一樹「そうですか。さすがはボス,いえ,ハビルさんの代理の方ですね。発想が新魔界の獣魔族の方々と変わりありませんね」


 モモカは,一樹に何か非難を受けているような印象を受けた。


 モモカ「あの,,,わたし,何か変なこと言ったでしょうか?」

 一樹「いえ,何も。ただ,ボズの代理の方が,ボスと同じ価値観であることを確認しただけです。それによって,わたしたちの対応も変わりますから」


 一樹の説明に,モモカはまだしっくりと来なかった。何か隠し事があるのかもしれないと感じた。


 モモカ「では,一樹さんたちの自己紹介をお願いできますか?」


 一樹は,ちょっとコーヒーを飲んでから話し始めた。


 一樹「正直に言うと,自己紹介はしたくないです。でも,,,そうですね,,,ここでのわたしたちの話は,ボスに内緒ということにしてくれるのなら,正直に話すことを約束しましょう」

 モモカ「そんなことでいいのなら,まったく問題ありません。必要なら宣誓契約してもいいですよ?」

 一樹「そうですか,,,では,申し訳ないのですが,ここでの話は,絶対に他の誰にも口外しないという宣誓契約をしてもらえませんか?」

 モモカ「もちろんです」


 モモカは,彼らの話を口外しないという宣誓契約を行った。それを確認した一樹は,自分たちの置かれた状況も含めて,自己紹介を始めた。


 一樹「では,われわれのことを話します。すでに知っていると思いますが,本州や九州,四国では,子供生産計画が順調に推移していて,年間200人もの新しい獣魔族が生まれます。われわれは,人間と比べると5倍ほど速く成長します。生後,1年を経過した時点で,その本人の知的レベル,魔力操作力,運動能力の3点を評価します。ほとんどの子供は,戦士の補充要員として新魔界に行くことになります。ですが,ごくわずかですが,そのままこの国に残る子供もいます。それは,特に知的レベルが高い子供です。そのような子供は,新魔界に行っても戦士としては使えません。軍師になろうと思っても,新魔界出身者が優先的採用されてしまいます。


 つまり,知的レベルの高い子供は,このまま月本国に残って,月本国の経済を勉強して,金儲けの方法を検討するスタッフに割り振られます。そして,われわれ3名も,そのスタッフ要員でした」


 一樹は,ここまで説明してから,コーヒーを一口飲んでから言葉を繋げた。


 一樹「ですが,金儲けをするには,経済学だけでなく,株関連の知識が必要です。そして,株の世界は,コンピューターによる株取引が一般的です。コンピューターが株価の予想をシミュレーションしていきます。そのあたりの知識を習得するためには,電子物理学,量子物理学,統計学,確率論,AI理論,などなど,現在,全世界で研究開発されている最先端の知識が必要になってきます。ですが,われわれは,それらの知識を驚異的な速度で理解していきました。その結果,,,」

 

 一樹は,二樹を指刺した。


 一樹「二樹は,語学の天才になりました。現在使われている言語だけでなく,古代の文献も読むことができます。あらゆる言語を理解できると言ってもいいでしょう。最近では,古代の未解明の文字のひとつであるインダス文字の解明に貢献して,英国のオックスフォード大学から,客員教授にならないかと誘われています」


 この話を聞いて,モモカには,ちょっと理解が及ばなかった。でも,真面目に聞く姿勢だけは崩さなかった。


 一樹「三樹は,理論物理学の天才です。反重力場理論が確実に存在するという論文を発表して学会で騒がれました。彼も麦国のハーバード大学から客員教授の誘いを受けています。そして,わたしは数学に才能があるみたいで,フェルマーの最終定理をアンドリュー・ワイルズとは別の解法によって証明することに成功しネイチャーの電子版に掲載されました。現在,海外の有名大学10校から客員教授の誘いが来ています」


 モモカは,まったく次元の異なる話を聞いているようで,まったく理解が追いつかなかった。


 モモカ「あの,,,わたし,この密香マンションの管理に来たと思うのですけど,,,それに,あなた方,獣魔族の方々は,種付け要員として,女性を誘拐してくるのが任務なのでしょう? 客員教授の誘いって,,,まったくわけがわからないのですけど,,,」


 一樹「モモカさんの理解は正しいです。わたしたちは,この札幌に1週間前に赴任してきました。女性を誘拐して種付けをするためです。それは表向きの仕事です。わたしたちは,さきほど言いましたように,密かにと言っても,別に隠してはいないのですが,われわれはそれぞれ数学,物理学,言語学の分野で傑出した才能を発揮してきました。


 わたしたちは,まだ5歳になっていません。まだ4歳半です。でも,われわれに残された時間は,多くありません。寿命20年とすると,あと15年しかありません。その限りある時間を,このしょうもない誘拐してきた女性たちの種付けに終わりたくないのです。すぐにでも客員教授に招聘されて実績を残していきたいのです。


 しょうもない,いや,言い間違えました。大事な仕事ですが,誘拐してきた少女たちの『子守』は,モモカさん,あなたに任したいというのが,わたしたちの本音です」


 ここまで話を聞いて,モモカは,やっと彼らの要望が理解できた。ぐちゃぐちゃ難しいことを言っていたが,要は,誘拐してきた少女の面倒をモモカに押しつけたいということだ。


 モモカ「わたしは,このマンションの管理に来たので,当然,あなた方や少女たちの管理がわたしの仕事です」


 モモカは,ちょっと考えてから,素朴な疑問を一樹にぶつけた。


 モモカ「あの,,,毎年200人って,そのうち半数は女性なのでしょう?なんでわざわざ月本国の女性を誘拐する必要があるのですか?」

 一樹「どうも,あなたはまだ獣魔族のことが十分に理解していないようだ。獣魔族の子供は,すべて中性で生まれる。厳密には全員女性なのだが,まだ性が決まっていないと言ったほうが正しい。1歳を迎える時に,9割以上は男性になるべく処置される。その方法は獣魔族の種族によってばらばらだ。われわれオークの場合,体温を10度に保って3日間ほど過ごすことで,男性に変わってしまう。

 200名の内1割だけは,そのまま放置されて女性にされる。彼女たちは女性と言っても,子孫を産む能力が十分に発達しない。彼女たちが待ち受ける未来は,戦士たちの性処理をするという悲しい運命だ」

 モモカ「・・・」


 モモカは,返す言葉を失った。そこで,話題を変えることにした。


 モモカ「あの,,,誘拐してきた少女たちの情報を教えていただけませんか?」


 一樹は,溜息をついて返答した。


 一樹「誘拐,誘拐と言っているけど,実際は誘拐ではありません。誘拐すると,犯罪になってしまいます。この北海道地区では,まだわれわれの組織がしっかりしていませんので,警察のお世話になることは避けなければなりません」

 モモカ「ということは? つまり,誘拐しないでここに連れて来たというの?」

 一樹「はい,そうです。わたしの場合,たまたま目の前で倒れた少女がいたので,すぐに救急車を呼んで一緒に病院に行きました。その縁で,彼女にここに住むようになりました。

 二樹は,わたしの予想確率理論にしたがって得られた自殺の名所と日時から,そこで自殺を思いとどまった少女を連れてきました。

 三樹も,同様に予想確率理論から,ある地下鉄駅のロビーで,うろうろしていた家出少女を連れて来ました。全部で3名の少女がこのマンションに住んでいます」


 一樹たちは,それなりに最低限の仕事をしていた。


 メアン「それで?種付けは終わってもう妊娠しているの?」

 

 一樹「彼女らはいずれも16才未満です。無理に種付けをすれば犯罪行為になります。ボスからは少なくとも各自1名の少女を連れて来いと言われたので,それを実行したまでです。ましてや種付けなんてとんでもない。手さえも握っていません」


 モモカは一樹たちとこれ以上,話すと頭がおかしくなると思った。


 モモカ「もうだいたい理解したわ。あなたたちは,もう各自,部屋に戻っていいわ。あとは直接,彼女たちと面談するわ」


 モモカのこの言葉を聞いて,一樹たちはニヤッと微笑んだ。一樹たちの作戦勝ちだ。このマンションの管理をすべてモモカに押しつけるのに成功した。一樹たちは,自分の自由時間をすべて自分の好きなことに打ち込めるのだ。

 

 一樹は,このマンションのマスターキーをモモカに渡した。


 一樹「この鍵ならどの部屋にも入れます。女性たちの名前は,めんどいので,一から三の数字に美をつけて,一美,二美,三美と呼んでいます。では,あとはよろしく」


 一樹たち3名は,さっさとこの部屋から出ていった。どこに行ったのかはわからない。研究論文の作成に忙しいのかもしれない。もしかしたら,このままどこかの大学に行ってしまうのかもしれない。


 モモカは,とりあえず一美のいる102号室に行くことにした。

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