20 フェリーの悲劇

 翌朝6時ごろに,北斗星は青森駅に着いた。モモカは,まったく何事もなかったかのように青森駅を降りて,フェリーのりばに移動した。

 

 3人の遺体は,そのまま寝台で横たわっているので,そのうち車掌に見つかって大事件になるのはわかっている。でも,それが原因で青函連絡船の出発に影響が出ることはなかった。


 フェリーは,予定通り青森港を出発した。


 モモカは自由席だ。20畳ほどの自由に寝っ転がることのできるスペースがあり,そこに毛布が適当に並んでいる。モモカは,適当に毛布を取ってきて,片隅に寝っ転がった。


 そこで,昨晩見た夢を思い返した。霊力と魔力を操る夢だ。聖力の夢はまだ見ていない。


 夢の中で魔力と霊力の特徴をある程度理解したモモカは,魔力よりも,霊力の確保を優先すべきと判断した。手っ取り早く戦闘力を引き上げることができるからだ。それからゆっくりと血を集めればいい。


 この状況では,精子を集めることは難しくはない。ひとり寂しく携帯をいじっていたり音楽を聞きながら横になっている気の弱そうな年若い男性旅行客が狙いめだ。家族連れや女性客のいるそばでは,そのような行動はできないし,柄の悪いおっさんも願い下げだ。大声を出されては困る。


 ターゲットを発見したら,彼の隣に陣取って,こっそりと手書きのメモを見せればいいだけだ。


 『私,財布なくしてお金に困っています。おっぱい触っていいです。あそこも触っていいです。お金は1000円でいいです』


 この状況で,このメモを見せて嫌という男性はいない。モモカも毛布を被っているので,モモカの手がその旅行客の陰部をまさぐった行動をとったところで,他の客に悟られる可能性は低い。リュックサックを背中に背負ったままなのでなおさらだ。たとえ悟られたところで,別に困ることもない。


 モモカは,客の同意を得ずに,体勢を逆にして,客のズボンとパンツを下げて,逸物を取り出してしごいていった。そして精子を口で受けて指輪に吸収させた。この作業ではターゲットを気絶させる必要はないので,指輪をターゲットの体に接触させなかった。


 モモカは,2時間かけて,なんとか10名ほどの精子を確保することができた。意外と家族連れや女性客が多く,ターゲットに近づくことが困難だった。乗客は150人くらいはいるのに,なんとも効率の悪い作業だ。


 モモカは,人を殺すのにはさほど抵抗がなかった。それでも,すきでもない男性の陰部を触るのは,かなり抵抗があった。それが10人も続くとさすがに気が滅入った。いくら,淫乱と化したイジーラのおかしな記憶があるとはいえ,モモカ本来の感覚としては,嫌悪を感じるほどやりたくないもない行動だった。


 モモカは気分転換に甲板に出た。まだ秋の時期なのだが,すこぶる寒かった。流石に寒いので,甲板に客は数人ほどしかいなった。


 モモカはひとりごとを言った。


 モモカ『もう,こんなことしてるの,嫌になってきたわ。腹いせにぱーっと景気のいいことしたいわ。そうね,,,夢で覚えた魔法の中で,もっとも美しい魔法陣を発動させましょう。花火よりも美しいはずだわ。それに魔法陣だけなら,ほとんど魔力は使わないしね。もっとも魔力がほとんど溜まっていないから実際に魔法が発動するわけもないしね』


 モモカは,夢の中で見たことのある,もっとも美しい魔法陣である虹光魔法陣を出現させることにした。モモカがすることは,指輪に『虹光魔法陣を出現させてください』と強くお願いするだけだ。


 モモカは,この虹光魔法陣が,夜空に発現させることを知らなかった。日中に発現させたところで,はっきりと見ることはできない。何よりも,太陽光がまぶしくて,まともに上空を見上げることさえもできない。


 それでも,モモカは,自分のしている指輪からに直径10cmほどの小さな魔法陣がキラキラと7色にひかり輝いているのを見た。それは,とてもゆっくりと上空に舞い上がっていった。心なしか,時間が経つにつれて,その魔法陣は大きくになっているようだった。


 ただ,モモカをガッカリさせたのは,日差しが非情に強い日だったため,まともに上空を見上げることができなかったことだ。偏光サングラスをかけていたら,まだ多少とも,その美しさを堪能できたかもしれないが,そんな気の利いた物はなかった。


 モモカ『なんかがっかりだわ。気分が晴れないわ』


 モモカは,気落ちして自由席に戻り,ふて寝することにした。


 『虹光魔法陣』が,その後どうなるのかなんて,今のモモカにわかるはずもなかった。


 『虹光魔法陣』・・・それは,新魔界では,子供が最初に習う魔法陣だ。夜空に展開するとその美しさが際立つ。その魔法陣は実害がないため,初級者用のちょうどいい練習台となっていた。


 実は,この魔法陣には知られていない機能があった。それは,太陽光から魔力に変換させて,術者に転送させるという大変優れた機能だ。


 しかし,新魔界の太陽光は日差しが強くなく,常に曇りのような天気のため,太陽光からの魔力変換効率は非常に悪かった。そのため,いつしかこの虹光魔法陣は,夜空に発現させて観賞用にする用途にだけ使われるようになった。


 日差しが強いこの月本国にあっては話が別だ。強烈な太陽光のエネルギーを吸い取って,どんどんと魔力を変換していき,さらに魔法陣を大きくしていった。30分もすると,直径10kmにもなる巨大な魔法陣となった。その魔法陣が吸収する太陽光のエネルギーは膨大なものとなった。


 その魔法陣が蓄えることのできる魔力に限界が来てしまった。


 シューシューシューーーー!


 魔法陣の中央にある核から,徐々に風が噴出しだした。それは螺旋を巻いた。その竜巻のような風は,ゆっくりとこのフェリーを包み込んだ。


 ゴゴゴゴゴーーー!!


 フェリーは,竜巻に巻き込まれて,ゆっくりと反時計回りに旋回しだした。


 「ええ?どうしたの?」

 「突風に巻き込まれたようだ?!」

 「もしかして,このフェリー,旋回してるの?」

 「もしかしなくても旋回している!!」


 フェリーは,左右に揺れながらも,徐徐に海面から離れていった。そのフェリーは,旋回をしながら上空高く舞い上がっていった。その旋回は,意外とゆっくりだったので,フェリー内の乗客は,ジェットコースターに乗っているようにぐらぐらと揺れたものの,天井にぶつかるとかというひどい状況にはならなかった。


 上空に舞い上がったかと思うと,今度は徐徐に高度を下げていった。


 ズドーーーン!!


 そのフェリーは,陸地に飛ばされて着地した。さすがに着地したショックで,船内の乗客は,天井や壁に激突した。だが,幸いにも死者や重症者がでるほどのことはなかった。


 操舵室では,いったい何が起こったのか,まったくわからず,事態の収拾につとめた。


 船長に指示で,とにかく警察とフェリーの本社に連絡するように航海士らに指示した。


 航海士A「船長,電話が通じません!」

 航海士B「船長,GPSによると,われわれは,函館から西方約50キロメートルほど離れた渡島大島に飛ばされたおようです。ここは無人島のようです!」

 航海士C「船長,無線が使えません。いや,使えるのですが,まったく応答してくれません!!」

 

 船長は,しばらく考えてから言った。


 船長「ということは,この辺は,磁場が狂っているのかもしれん」


 航海士A「船長,上空を見てください。何やら,SFで見るような巨大な魔法陣が浮かんでいます!!」


 この航海士Aの言葉に,船長たちは,上空を見上げた。それは,直径10kmにも達するかと思うほどの魔法陣だった。しかも半透明ながらも7色に輝いていた。


 彼らは,言葉を失った。


 乗客の様子を確認してきた職員が船長に報告した。


 職員「船長,乗客150名全員,無事です。かすり傷を負ったものや体を強打したものは,多少いましたが,大事には至っていません。彼らは今,救護室で応急手当を受けています」


 その言葉を聞いて,船長は安堵した。


 船長「そうか。それはよかった。報告ご苦労様」


 その後,船長はクルーたちと相談してから,船内放送をおこなった。


 船長の船内放送


 『乗客の皆さん,落ち着いてください。


 われわれは,竜巻のようなものに,このフェリーごと吹き飛ばされました。そして,どうやら,函館から西方約50キロメートルほど離れた渡島大島という無人島の真ん中に不時着してしまいました。


 現在,海上保安庁に連絡をつけようとしています。しかし,無線が通じないことが判明しました。その原因は不明です。磁場が乱れている可能性があります。


 このままここにいても,救助が来る可能性は低いと思われます。仮に,漁船が寄港しても,このフェリーを発見する可能性が低いからです。


 この船内に備蓄している食料や水は,数日で尽きてしまいます。


 そこで,皆様にお願いがあります。まず,至急にすることが2点あります。水を節約するため,船内でのトイレ使用を禁止します。そこで,至急に,野外に仮設トイレを建設することにします。


 今から30分後に,その作業に協力してくれる方は,前方の甲板に集合してください。皆様の協力を得て,数時間ほどで,なんとか完成させたいと思います。


 明日からは,食料と水を調達する食料調達班を組織します。かつ,この島の漁港を見つけて,そこに常時人を配置して,漁船が来るのを待つ人員を配置したいと思います。


 それと,もし,乗客の中で,磁場について詳しい知識のある方,もしくは,無線の知識に詳しい方がおられましたら,操舵室まで来てください。なんとしても,海上保安庁に連絡をとる方法を考えたいと思います。なんとか皆様と協力して,この困難な状況を打開していきましょう』


 船長の船内アナウンスは終了した。


 乗客たちは,携帯でネットを見ようとしたり,ラインなどで連絡しようとしたが,まったく繋がらなかった。ましてや電話が繋がるはずもなかった。


 彼らも,現在,どのような状況におかれているのかやっと判明した。


 乗客150名中,女性や子供らが50名ほどで,成人男性は100名ほどだ。


 成人男性ほぼ全員が参加して,仮説トイレの建設を完了させた。地面に穴を深く掘って,そこをテントで覆うだけのことだ。この仮説テントを10基作製した。


 夜は,午後7時から9時までの2時間だけ船内の電気がつくようにした。こうすることで,2週間は重油がもちそうだった。


 夜になると,上空に浮かんでいる虹光魔法陣が鮮やかに映えた。このときなって,乗客たち全員が,魔法陣の存在を知った。


 「え?これって,オーロラ?」

 「いや,虹色しているがオーロラではないだろう」

 「じゃあ,花火?」

 「花火なら,すぐに消えてしまうはずだ」

 「じゃあ,何?」

 「・・・,わからん」


 この魔法陣を知っているのは,モモカだけだった。いや,正確には,モモカも具体的にはよくわかっていなかった。


 モモカは,独り言を言った。


 モモカ『なんか,あの魔法陣が原因のようね。でも,あんなに大きくなるなんて,,,わけわかんないわ』


 モモカは,夜,寝れなくて,ときどき甲板に出て,あの魔法陣を見上げた。すると,魔法陣が大幅に小さくなっているのに気がついた。


 モモカ『え?夜になると小さくなるの?じゃあ,このまま消えてしまうの?』


 モモカはそう思った。それは,正解だ。夜の間は魔力の供給がないので,その魔法陣はだんだんと小さくなって消えてしまう。だが,巨大になりすぎて,夜間に小さくなっても,消えるほど小さくにはならなかった。


 翌日の日の出直前までは,その魔法陣は直径10メートルほどにまで小さくなったが,そこまでだった。そこからまた太陽光を浴びたので,徐々に大きくなりはじめた。


 季節は秋。秋晴れが続く天気だ。もし,日中曇だったら,昼間充分な大きさにならず,夜間の間に消滅してしまっただろう。そんな知識など,モモカにあるはずもない。


 モモカは,なかなか寝れなかったが,それでも少しは寝た。なぜか気持ちが高ぶっていた。夢の中で,自分がこれから何をなすべきか,当初の目的はなんだったのかを,はっきりと再認識した。


 それに,あの天空に浮遊している虹光魔法陣は,指輪が制御していることを夢の中で知った。このフェリーを無人島に飛ばしたのも,かつ,あの魔法陣から地場嵐現象を発生させて通信機器を機能不全にしていたのも指輪の指示だった。


 そうまでしてこのような状況をアレンジしたのも,すべてモモカのためだ。


 モモカは,夢の中で,自分が人殺しをしたことを後悔した。決してしてはならないことだ。でも,目覚めると,イジーラやメリルの記憶が優先してしまい,モモカの性格が彼らに近いものに変わった。人を殺したことなど,今は,まったく後悔などしていないし,そんなの日常茶飯事のことだ。もともと,月本国の人間など,ゴキブリと対して変わらないと思っている。モモカが能力を得るための糧でしかない。


 それに,もう男どものあそこは舐める気がしない。それは,メリルとモモカの気持ちだ。イジーラだったら喜んでしたかもしれないが,今のモモカにはメリルとモモカ本人の思いが優先したようだ。


 渡島大島に飛ばされた翌日,希望者による食料調達班が組織された。希望者は80名ほどいたが,そのうち女性は5名ほど参加した。彼らを8班に分けて,船員8名がそれぞれ班のリーダーとして,この渡島大島全体を調査することにした。


 モモカは,適当に7班に加わった。他の女性4名は,8班に加わった。彼女らたちは,モモカが女性ひとりになるからと,8班に加わるように言ったが,モモカは,別に気にしませんと言って断った。


 食料や水の調達以外に,臨時に設けられた漁港を探すことも役目に入っている。

 

 フェリーのある場所は,渡島大島のほぼ中央だ。8組の版は,そこから放射線状に東西南北,さらに,北東,北西,南東,南西の8つの方向に分けて,探索するように指示した。途中,火山口や崖などで進行が阻止された場合は,もちろん迂回ルートを探ることになる。


 モモカのいる7班は,西のルートだ。途中で,険しい道にであったので,モモカの近くにいる中年の男性が,モモカに声をかけた。


 中年男性「この道は険しいから,わたしの手をとりなさい」

 モモカ「はい,ありがとうございます」


 モモカは,無意識に指輪のしている左手を出しだしてしまった。


 1分後,その中年男性は,意識を失って,足場を外して,2メートルほど崖下に落ちてしまった。


 ドン!


 その中年男性は,崖下に落ちてしまった。手を繋いでいたので,モモカもそれに引っ張られる形で,崖下に落ちた。


 でも,モモカは,この中年男性の体の上におしりから落ちたので,無傷だった。


 他の7班のメンバーは,2人が崖下に落ちてしまったので,崖下に安全に行くルートを探して,救出することにした。そのうち,2名がなんとか,崖の高さが低い場所を見つけて,そこから崖下に降りて,モモカのところに来た。


 モモカは,左手を少しあげた。それを見た男性のひとりは,その手をとって,モモカの体を支えて,モモカを抱きかかえながら,立たせようとした。モモカの左手の指輪がその男性の手に接触した。


 モモカ「あっ,足をくじいたみたい」

 

 モモカは,そう言って,歩けないフリをした。そんなことをしていると,魔の1分が過ぎた。


 ドン!


 その男は意識を失った。


 救助に来たもうひとりの男性は,何が起きたのかよくわからなかった。ともかく,モモカよりも,今しがた倒れた男性の様子を見ることにした。


 モモカ「何らかの原因で,意識を失ったようです。息はしているので,命に別状はないようです。わたしも足をくじいて動けません。すいませんが,わたしをちょっとそこの岩の上にまで移動させていただけませんか?その後,この方たちの様子をみていただけませんか?」


 モモカが,息がしていること,そして命に別状はないと聞いて,救助に来たもうひとりの男性は少し安心した。そして,モモカの言う通り,モモカを抱きかかえて,移動させようとした。モモカは,その時,左手の指輪をその男性の首もとに接触させた。


 また,魔の1分が過ぎた。


 ドン!


 その男性は,モモカを脇に抱きかかえたまま倒れた。モモカも一緒になって倒れた。


 モモカは,『残り6人!』と心の中で叫んだ。


 崖の上では,救出に難攻しているのを見て,残りの6人のうち,5人が崖の下に来た。崖の上に残ったのは,船員で7班の班長だ。彼は,船員といっても,高校卒業してすぐに就職したので,まだ18歳という若さだ。


 モモカの作戦は決まっている。足をくじいた風を装って,抱き抱えられている間に,指輪を相手の体に接触させて,相手を気絶させていくだけだ。


 この方法で,モモカは彼ら5人をうまく気絶させた。


 ここにきて,崖の上で待機していた7犯班長は,絶対おかしいと思った。


 7班班長「おい,お前!彼らを気絶させたのはお前だな?」


 そう言われて正直に話すモモカではなかった。モモカは,倒れた体勢のまま,崖の上にいる彼を見上げた。


 モモカ「あの,,,助けてください。足をくじいてしまって,,,」


 この状況では,そんな言葉に騙されるものはいない。


 7班班長「お前,,,いったい,何者だ?」


 モモカは,もう騙しきれないと思った。でも,班長が崖の上では手の出しようがない。モモカができることは,なんとか彼に口止めをお願いすることだ。


 モモカ「わかりました。正直に話します」


 モモカは,指輪を彼によくみえるようにした。


 モモカ「この指輪には,魂が宿っています。あのフェリーをこの島に飛ばしたのも,この指輪のパワーです」


 この話を聞いて,その男性は信じられなかった。


 7班班長「そんな話,信じられるか!」


 その言葉を聞いて,モモカはニヤッと笑った。


 モモカ「では,証明してあげるわ」


 モモカは,その指輪をそばに倒れている男性の首部分に接触させた。


 5分ほど経過した,,,


 その男性は,干からびでミイラ状態になってしまった。それを見た7班班長は,恐怖のあまり少し後退りをした。


 モモカ「班長,もう,逃げられないわよ。逃げたら,確実にあなたを殺す。隣にある岩を見なさい」


 モモカは,指輪にお願いした。


 モモカ『指輪さん,お願いです。あの班長の隣にある岩を破壊してください。まだ,班長には生きてもらいます。うまくいけば,効率よく男どもを捕獲できますから』


 今の指輪は,かなりの魔力を有している。日中,虹光魔法陣によって得られた魔力の一部が,指輪の方に流れていったからだ。


 その意味では,もう男性から血液を採取する必要はない。


 でも,こんな魔法陣は,本土では絶対にできない。そんなことをしようものなら,すぐに,ネットにあげられ,α隊など特殊部隊に知られて,破壊命令が出されてしまうのが落ちだ。



 ボァーー!


 7班班長の隣にある岩の上空に魔法陣が出現した。 その直後,,,


 ボン!


 その岩は,粉々に砕けた。それを見た班長は,モモカの言葉が真実であることを知った。


 モモカ『班長さん,状況を理解しましたか?』


 7班班長は,ある程度状況を理解した。それでも,もし,ここから逃げれば助かるかもしれないと,一瞬そんな考えがよぎった。


 でも,モモカが自分を殺そうすれば殺せたのに,そうしなかった。ここは,しばらく様子見するのが最善だと判断した。

 

 7班班長「わかった。言うことを聞こう。俺は何をすればいい?」

 モモカ「今日のところは,このまま戻っていいわ。とにかく,わたしのことは内緒よ。またすぐに会うことになるでしょう。そのときにお願いするわ。ところで,あなたの名前は?」

 7班班長「ミツルだ」

 モモカ「わたしはモモカよ。じゃあ,また会う時によろしくね?」

 7班班長「わかった。では,そのときに,,,」


 7班班長のミツルはその場を去った。気絶した8名の連中がその後どうなるのか容易に想像ついた。どのような方法にせよ,殺される運命なのだと,,,



 モモカは,折りたたみ式果物ナイフを取り出して,気絶した男の睾丸を切り取っていった。そこから精子を取り出して,指輪に吸わせた。魔力は当面足りているので,指輪に血を吸わせる必要はない。8人の睾丸を切除するだけで事足りた。その後,男どもがどうなったのか,モモカに興味はない。

 ただ,夜はかなり冷えるので,体温を冷やして,かつ出血多量で死ぬ運命が待っているだけだ。


 ーーー

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る