第15話 水香の逮捕

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 翌日,水香のいる病院は,完全武装したSART隊や機動隊,さらに,強力な火力を持つ陸軍の一部隊によって包囲された。病院側は何事かとざわめいたが,水香が自主的に病院から出てきて,無人の武装車に収納されて,連行されると,その包囲網は解除された。

 病院側は,なんで,か弱い1人の少女を逮捕するのに,こんな前代未聞の包囲網を敷くのかと,まったくわけが分からなかった。


 水香を乗せた武装車は,物々しい警戒の下,富士山のある方向に移動した。その武装車の前後には,SART隊だけでなく,装甲戦闘車両を従えていて,空には攻撃ヘリコプター2機も追尾した。


 ちなみに武装車は自動運転だ。その車には水香しか乗っていない。いつでも武装車を攻撃できる状況だ。もっとも,その武装車には大量のダイナマイトが積まれていて,いつでも爆破できる。


 その武装車は,富士山麓にある火力演習場に運ばれた。そこで,水香は武装車の中でモニター画面越しに尋問を受けることになった。


 もし,変な行動があれば,武装車は爆破され,かつ,機関銃,バズーカ砲,その他,さまざまな火力によって,即座に水香を消滅させることが可能だ。


 モニター越しで映っているのは,夏江と多留真の両名だ。


 多留真は,やっと男性自身の治療が完治したので,現場に戻った。さっそく,夏江を指名した。どうやって夏江に仕返しをするか,そればかり考えていた。


 尋問をするのは夏江だ。多留真は,夏江の背後に立って,夏江の服の下から手を突っ込んでおっぱいを触っていた。夏江としても,このくらいのセクハラは許さざるを得なかった。


 夏江の尋問に,水香は包み隠さずに述べた。


 指輪を拾ったこと,指輪の中に霊魂がいて,それがメリルという女性だということ,男子寮の生徒全員に犯される時,指輪は水香に犯されるままにされなさいと命じられたことなどなど,とめどもなく話した。さらに,B学園で4名の男性が首を落とした事件と刑務所の襲撃事件については,水香はメリルによって体を支配されていたので,まったく記憶にないことも説明した。


 夏江は,話を整理するために,ひとつひとつ確認していった。


 夏江「指輪の中に霊魂?それがメリルの正体なの?」

 水香「そうだと思います」

 夏江「4名の男性の首を切り押したのは,あなたの体に憑依したメリルという霊魂なのね?」

 水香「憑依されている間は,記憶がないので,わかりません」

 

 夏江は,水香のお腹の膨らみがさっきから気になっていた。


 夏江「あなたのお腹,それって,妊娠しているの?あなた,まだ12歳でしょう?それに以前会った時は,お腹がそんなに膨れていなかったと思うけど?」


 水香は,お腹をさすりながら答えた。


 水香「服装の違いで目立たなかっただけだと思います」


 水香は適当に嘘を述べた。これくらいの嘘は許してもらおう。


 水香「それに,最初にレイプされた時に妊娠したんだと思います。父親が誰だかわかりません。でも,セイジということにしています」

 夏江「セイジ? それってあなたの復讐する相手じゃなかったの?」

 水香「はい,そうです。日々,復讐心が薄れていっています。でも,その復讐心を忘れないために,そうしたいと思います」


 夏江はしばらく考えてから,また質問した。


 夏江「空を飛べるとか,首を刈り落とした力,つまり見えない武器か何か,,,霊力だと思われるけど,その力はまだあなたの中にあるのですか?」

 水香「刑務所襲撃のときの記憶はないので,よくわかりません」


 夏江は,肝心な点を質問した。


 夏江「ところで,その指輪は今どこにあるの?」

 水香「わかりません。指輪の所在は聞いていません」

 夏江「つまり,今のあなたは,ごく普通の女性であって,なんら特殊能力はない状態ということですか?」

 水香「あの,,,記憶がないので,よくわかりません」

 夏江「・・・」


 多留真が夏江に代わって尋問した。


 多留真「水香さん,あなたは多くの男どもにレイプされたけど,その男たちがどうなったのか,知っていますか?」


 水香「最初の頃は知りませんでしたが,今は知っています。警察の方からいろいろと聞かされましたから」


 その言葉を聞いて,多留真は大きく溜息をついた。そして,手元にある資料を見て,説明してあげることにした。


 多留真「そうだよ。まず,水香さんのいたA学園の女子寮からだ。そこで,水香さんが,富士山麓から戻った日の夜に,6人の女性が死亡した。他殺か自殺かも判明していないし,仮に他殺だとしても,その犯人はまだわかっていない。水香さんには殺人動機があるものの,確実な証拠はない」


 ここで,一息ついて,多留真は話を続けた。


 多留真「次に,5名の男どもによる水香さん誘拐事件では,これは,携帯ビデオで映像に残っているが,匕首のようなもので首を切られて殺された。

 さらに,A学園の男子寮で水香さんは,その寮生全員に犯された。つまり,水香さんは200名全員に犯された。そして,その男子寮の全員が死亡した。理科の教員も死亡した。転校したB学園では,もっと悲惨だ。男子学生の3分の1,つまり,300人ほどが死亡した。さらに,周辺の住民にまで被害が及んだ。


 水香を犯して,死亡した男どもの累積数は,現在までのところ,1150名にも達している」


 この時になって,初めて水香は反応した。


 水香「あの,,,それって,ほんとうですか?」

 多留真「ほんとうだ。日に日に死者が増えている。それも,死ぬ場所が決まっていない。授業中に急に声を出して死亡する者,寝ている間に死亡する者などさまざまだ。死ぬ予兆はまったくない。中には,植物状態になってICU装置で生きながらえている者もいる。


 その寮生の場合,全身をMRI,つまり,磁気共鳴画像によって検査した結果がある。それによれば,頭部の一部が何かで破壊されたような跡があったそうだ。まるで,小さな爆弾が頭部の中で爆破したような状況だ。その結果を受けて,他の死亡した寮生の頭部を同じくMRIで検査したところ,同じように,頭部の中が何かによって破壊されていることが判明した」


 この話を聞いて,水香はさすがにびっくりした。


 水香「それって,わたしがしたことですか?わたしがそんなことしたのですか?!」

 

 多留真は険しい顔をして言った。


 多留真「そうなるだろうな。寮生たちは,あなたを犯すことで,つまり,あなたの肌と接触することで,頭を破壊するような『何か』を植え付けられたものと推定される。霊魂による仕業ではないのは明らかだ。霊魂が危害を加えることができるのは,同じく霊魂だけで,肉体へ直接働きかけることはないそうだ。つまり,指輪とは関係がないということだ」


 そう言われると,水香はショックだった。水香の体にそんな爆弾のようなものがあるとは思ってもみなかった。水香は悲しくなって涙が’出てきた。それは,メリルを恨む涙なのか,自分の体を呪う涙なのか,よくわからなかった。


 水香が絶望的な気持ちでいるのを見て,夏江がこの会話に割り込んだ。


 夏江「水香さん,あなたは別に悪くないと思うわ。人間の体にもともとそんな危険なものはあるはずないからね。わたしは,メリルという指輪が,あなたの体に何かしらの細工をしたんだと考えているわ。でも,わたしたちには,それを解明する方法がないのよ」


 多留真「水香さん,あなたがB学園に移って以降も,そこで死亡した男たちは,頭が破壊されるという死に方で死んだ。もっとも,4名だけだが,水香さんからかなり離れた距離にも関わらず,男たちの首が刎ねられた事件もあった。それも水香さんの仕業だとすると,いや,メリルという指輪のせいだとすると,メリルの指輪には,3通りの殺し方を持っていることになる」


 多留真は,だんだんと核心に迫っていった。メリルという未知の化け物を,未知ではく,既知の化け物にしていくとことに,多留真は少し誇らしくなった。


 多留真が,意気揚々とその3通りの殺した方を説明しようとするとき,夏江が,横から割り込んで,そのおいしい部分を奪った。


 夏江「つまり,こうゆうことね?まず一つ目は,女子寮の6名の死亡事件の場合です。頭部を攻撃されたような形跡があるが,直接の死因は不明。しかも,霊魂を呼ぼうにもどうしても呼ぶことはできなかった」


 夏江は,自分が超現象捜査室に転属するきっかけの事件だったことを思い出した。今,こうして水香を確保することが出来たのだ。しかし,この死因を解明することは出来ていない。


 夏江が話を中断したので,多留真がその続きをした。


 多留真「二つ目は,水香の体に接触することによって,相手の頭部の中を破壊するという方法。そして,三つ目は,離れている相手の首を刈ることができるという方法だ」


 多留真は,一息入れてから話を続けた。


 多留真「特に離れた相手の首を狩るという人間離れした能力には驚愕に値する。今回の水香の逮捕劇については,物々しい包囲網を敷いたが,それでも,不十分ではないかと心配したほどだ」


 コホン,コホン!


 多留真は,まったく関係ない話になってしまったので,咳をしてごまかした。


 水香が悲しそうに言葉を発した。

 

 水香「そうですか,,,この体は,,,相手を殺す武器だったのですね?」

 多留真「そう理解せざるを得ないだろう。何せ,日々,死者が増え続けている状況だ。

 水香さんにとっては,残念なことだが,あなたには,裁判という方法はとらず,尋問が終了したら,このまま刑務所に直行してもらう。あなたが安全だと確認できるまで,つまり,普通の人間だと確認できるまでは,いつでも,あなたを殺せる状態にしておく。すまないが理解してくれ」


 そう言われても,今の水香にそれを拒否できる権利もない。


 水香「お話を聞いて,わたしの罪の重さが十分に理解できました。わたしは,,,生きてはいけない人間だったようです,,,すぐにでも自殺したい気持ちになりました。でも,,,お腹の子が,,,」


 この言葉を聞いて,夏江が慌ててフォローした。


 夏江「水香さん,お腹の子に罪はありません。無事に出産するまでは,死刑になることはありません。それに,あなたは何も悪くはないのよ。ずべて,メリルという指輪が悪いのよ。あなたは,メリルの指輪によって魅了された犠牲者なのよ。今は,こうやって厳重な警戒をしているけど,あなたが安全だと分かれば,正常な裁判だって受けることもできるし,無罪にだってなる可能性があるのよ。死ぬなんて,考えないでちょうだい」


 この言葉を聞いて,ほんの少しだけ気持ちが楽になった。


 夏江と多留真による尋問が終了した後,他の刑事からの尋問があり,それは数日間に及んだ。


 一連の尋問が終了した後,水香はそのまま無人の武装車で,陸路とフェリーを乗り継いで,一番警護の厳しい刑務所に収容された。それは,北海道の網走市にある俗称『100番刑務所』と呼ばれている100番外地の女性用刑務所だ。



 ー 夏江のアパート ー

 尋問を終えた多留真は,夏江のアパートでベッドで横になっていた。隣には夏江がいた。もちろん全裸だ。あいかわらずのDカップで,かつ体を鍛えているためか,おっぱい以外は引き締まった肉付きをしていて,美しい裸体を維持していた。


 夏江は,多留真への罪滅ぼしに,多留真と添い寝してあげることにした。


 多留真にとっては,これを機に,一気に夏江の処女を奪うつもりだ。しかし,悲しいことに,逸物が勃起することはなかった。勃起機能が回復するには,さらに数ヶ月要すると医者から言われた。


 それでも,夏江に手で逸物をしごかせ,口でなめさて,それなりに満足した。


 いちゃいちゃの時間が終わると,彼らはおのずと水香の話題になた。


 多留真「水香の言っていることはすべて真実だろう。もう嘘を言う必要はないからな。でも,指輪がどこにいったのかがわからないとまずい。同じことがまた起こってしまう」

 夏江「そうね。でも,探しようがないわ。それに,指輪,いえ,メリルとか言いましたけど,彼女は,今度はもっと慎重に行動するでしょうね」

 多留真「そうだろうな。でも,セイジを殺せなかったから,いずれ,セイジを殺しにいくだろう。もし,俺がメリルだったら,,,セイジに関係する誰かに持たせるだろう。セイジの居所を知るためにも,セイジの母親あたりだろうな」


 夏江「セイジの母親は,しばらくアパートに帰っていないらしいわ。海外旅行にでも行ったのかしら?」

 

 多留真「人出があれば,セイジの母親を徹底的に追跡するんだが,連日の突然死事件が片付くまでは,手が回ららないのが現状だ」


 夏江「近々,指輪の捕獲対策の会議があるけど,α隊は対策できているの?」

 多留真「あそこは,霊力対策の有効な方法を提案できると言ってきた。夏江は,悪霊払いの状況を提案しないと,恰好がつかないぞ」


 夏江「ちょっと,情報収集に手間取ってしまったけど,明日にでも,京都や奈良に行って,入手しようと思っているのよ」

 多留真「じゃあ,数日後に行われる指輪捕獲対策会議には間に合いそうだな」

 夏江「任しといてちょうだい。これこそ,超現象捜査室の仕事だからね」


 夏江は,自慢げに胸を張った。それと同時に,乳首が少しだけ大きく見えるようだった。多留真は,その乳首をむちゃくちゃにしたい衝動に駆られ,コーヒーカップをベッドの横にある棚に置いて,その乳首を囓るようにして舐めた,,,


 夏江がベッドで添い寝してくれるので,多留真は逸物が囓られた甲斐があったかもしれないと自分を慰めた。


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