第6話 正当防衛と室長のアドバイス
ー 夏江のアパート ー
夏江は,自分のアパートで,元上司の多留真を待っていた。約束の10時過ぎに多留真は来た。彼が夏江のアパートを訪問するのは初めてだ。
夏江の部屋は,8畳1間で,台所,トイレ,風呂別,という1人用の部屋だった。
多留真「狭い部屋だな」
夏江「1人だから,これで十分よ。まずは,一発殴らせなさい!」
多留真「ふふふ。お前のおっぱいを触わった代償としては,悪くない取り引きだ」
パチーーン!
夏江は,思いっきり多留真のホッペを平手打ちした。
多留真「いててて,,,でも,これで俺の嘘が帳消しになったのなら,安いものだ」
夏江は,いまだに怒りが残っていたが,でも,これ以上の平手打ちは止めることにした。というのも,多留真の言葉を一方的に信じた自分が悪いのかもしれないと思い直した。
夏江は,早速,5人の誘拐犯殺人事件の情報を求めることにした。
夏江「例の水香の誘拐犯の殺人事件に関する捜査状況を教えてちょうだい」
多留真は,いまだに痛さが残るほっぺに手をあてながら,ニヤッと笑った。
多留真「部外者に情報を漏らすと思うのか?」
夏江は,ここに来て,ハタと罠にはまったと思った。これから多留真に情報を提供依頼するたびに,自分の体が要求されるからだ。
多留真は,確かに優秀な刑事だが,スケベな刑事でも有名だ。庁内でセクハラまがいのことを半分公然としてのけた。でも,誰も多留真を攻めない。多留真の父親が金持ちということもあり,セクハラで訴えられそうになると,お金で解決されるからだ。中にはお金ほしさに,積極的意に多留真にセクハラを要求する女性職員もいるほどだ。
でも,夏江は身持ちを硬くしたかった。結婚するまでは処女でいたいと思っている。間違っても,多留真みたいなプレーボーイを好きになることはないと自分に言い聞かせた。
でも,夏江は,結局のところ,事件を解決したいという刑事魂が強かった。そのためなら,おっぱいを触らせるくらいならやむを得ない。
夏江は,ふたたびおっぱいを触らせることにした。
夏江「わかったわ。おっぱいを触っていいわよ。そのかわり,先に事件の情報を提供して!」
多留真は,ニヤニヤした。
多留真「OK,それで手を打とう。でも,先に,裸になって,お前のヌード姿を見せなさい」
夏江「いやと言ったら」
多留真「話は終わりだ。俺は帰る!」
多留真は,帰る振りをした。夏江は妥協した。この勝負,多留真の勝ちだ。
夏江「わかったわ。わたしの負けよ」
夏江は,Tシャツを脱いでブラジャーも外した。夏江のDカップの豊満なおっぱいが見事だった。
多留真は,ゴクッと生唾を飲んで,事件の情報を開示していった。
多留真「事件自体は単純なものだ。誘拐犯5名が水香を誘拐して,レイプしようとした。ところが,レイプが未遂に終わり,水香がナイフで誘拐犯5名の喉を刺したという事件だ。凶器のナイフも発見されてた。ただし,取っての部分が滑り止め構造になっており,指紋を検出するのは無理だ。それに,なんと言っても,水香本人は,殺人したことを否定している。
また,やっかいなことに,この事件で名を挙げたいという弁護士団が水香側についてしまった」
夏江「ということは,正当防衛で水香は無罪になってしまうの?」
多留真「このままではその可能性が高い。検察側としては,過剰防衛にしたいのだがな」
夏江「じゃあ,今回の誘拐犯の事件では,証拠に困るということはないようね」
多留真「そうなるな。凶器がナイフだとはっきりしている。霊魂とか,霊媒師の出る幕はない」
夏江はちょっとがっかりした。今回の事件も何か証拠で困るような状況だと思ったからだ。
多留真「じゃあ,おっぱいを触るぞ」
夏江「時間は3分間だけよ」
多留真「ああ,それで十分だ」
夏江は,約束通り多留真におっぱいを触らせた。多留真は,おっぱいを触りながら,没収したビデオカメラの映像解析の情報を語った。
多留真「この事件では特におかしなところはない。でも,なんで水香がレイプされなかったのかが疑問だ。ビデオでは水香は全裸になって毛布の上に横になった。水香は,犯されることを覚悟したはずだ。
ところが,やつらは,水香の体に触れて1,2分にしないうちに,気絶してしまったようだ。それも3人ともだ。他の2名はビデオでは映っていないから不明だ。でも,服をきたままになっていて,精子を出した痕跡もないので,レイプしていないのは間違いない」
この話を聞いて,夏江は色めき立った。夏江は,おっぱいに触っている手をはねのけた。夏江は,そのビデオをどうしても見たくなった。もしかすると,重大な秘密が隠されているのかもしれないと感じた。
夏江「もう3分たったわよ。そのビデオ見せてちょうだい」
多留真は,またニヤニヤと笑った。
多留真「アホか,お前。タダで見せる訳ないだろ」
予想された返答に,夏江はまたおっぱを触らせることにした。
夏江「追加でさらに3分間おっぱいを触っていいわよ」
多留真は,その提案を拒否した。
多留真「おっぱいはもういい。夏江,お前,ここで自慰しなさい。ビデオで録画する。いつでも,俺が自慰できるようにするためだ」
多留真は,さすがにこの要求は受け入れられないと思った。だが,夏江は条件付きでOkを出した。
夏江「サングラスをしてならOKよ。ただし,自慰行為は5分間だけよ」
多留真は,どうしようか迷った。サングラスをかけてとなると,顔がはっきりとわからない。それだと,そこら辺に転がっているエロビデオとたいして変わらなくなってしまう。やはり顔みせは必須だ。ここで妥協はできない。
多留真「顔見せは必須だよ。そうでないと意味が無いからな。ダメなら,ビデオは見せない。話は終わりだ」
夏江としても,今さら断ることはできない。ちょっと考えて別の追加条件を出した。
夏江「では,顔見せでいいけど,録画データは1ヶ月後にはかならず削除すること。もちろん,コピー,ネットへのアップロード,他人に見せるのも厳禁よ」
多留真は,これ以上ゴネないほうがいいと判断し,その条件で同意することにした。そして,没収したビデオデータのコピーを夏江に見せた。
夏江は,その映像を食い入るように見た。特に,3人が気絶していくその前後を何度も繰り返し観た。水香の動きにも注目した。
このビデオを何度も見返しして,夏江は水香の手の動きが,ちょっと不自然な気がした。故意に相手の体に接触させているような違和感を覚えた。
今まで気がつかなかったが,水香の左手に指輪がしているのに気がついた。
水香「多留真,ちょっと観てちょうだい,水香の左手!なんか,故意に相手の体に接触していると思わない?3人とも,指輪に接触して,だいたい1分くらいで気絶しているわ。もしかして,この指輪って,呪いの指輪?悪霊でも住み着いているんじゃないの?」
夏江の推論に,多留真はあながち絵空事でもないかもしれないと思った。ただし,この誘拐犯の殺人事件では,指輪のことなど,もう関係のない話だ。水香が正当防衛で無罪なのかどうかという話だ。
多留真「俺には,指輪がどうのこうのには興味がない。今,一番の興味は,お前の自慰姿を録画することだ」
多留真は,なんとか夏江の自慰する様子を携帯で録画することに成功した。彼はニヤニヤとして,この日は夏江の自慰録画データを最大の成果として自分の部屋に帰っていった。
ー 超現象捜査室 ー
翌日,夏江は,多留真から入手した誘拐犯が撮影したビデオデータを室長に見せた。そして,水香のしている指輪が相手に触ると,気絶していくという事実を観てもらった。
夏江「どう?室長,水香のしている指輪は,きっと怨念のこもった悪霊指輪なのよ! これって,わたしたち超現象捜査室で取り上げるテーマじゃなかしら」
この夏江の話に,室長は,携帯を取り出して,あるホームベージの情報を見せた。
そこには,水香の弁護団の団長の談話のコメントとともに,警察批判の内容も含まれていた。
室長「この誘拐犯の殺人事件では,もう警察はこれ以上捜査しない方針を決めたようだ。水香には,正当防衛ということで,逮捕もせずに,事情聴取だけで済ます方針だ。もし,裁判で争うことになれば,弁護団の評判をいたずらに上げてしまい,逆に,警察の評判が下がってしまうという判断だ。
なんせ,水香は,この事件では被害者であり,かつ未成年だ。検察が過剰防衛だと訴えたところで,弁護団だけでなく,マスコミに踊らされた一般市民も納得しないだろう」
夏江は,室長がなんとも事情通であることにびっくりした。
夏江「どうして室長は,そんなに詳しいのですか?」
室長「今朝,早々に多留真君から情報提供があったよ。たぶん,夏江君が知りたがると思うと言っていたよ」
夏江は,誘拐犯の殺人事件が,正当防衛になるかどうかなんて,あまり興味がない。それよりも,指輪が怨念を帯びていて,それを証明することができれば,もしかすると,女子寮殺人事件の真相解明に大いに役立つのではないかと期待した。
夏江「誘拐犯の殺人事件で,水香は正当防衛で逮捕もされないということはわかりました。でも,指輪が呪われているかもしれえないという点については,わが超現象捜査室で追求すべきです。それが究明できれば,暗礁に乗り上げている女子寮殺人事件だって,解決するかもしれません」
室長は,のんびりとコーヒーを飲んだ。
室長「夏江君,この部署はね,わたしと夏江君しかいなんだよ。実質,夏江君だけだ。茜さんは,ある意味部外者だ。彼女に仕事を依頼することはない。つまり,何もわざわざ仕事を創ることはしなくていいんだよ。のんびりして,合コンのアレンジでもして,結婚相手を探すのがいいんじゃなかな?」
室長の言葉には,それなりに説得力があった。でも,夏江が希望するような職場ライフではない。
夏江「室長,わたしは,ここに仕事をしに来たのです。水香の持っている指輪が呪われているかのかどうか,わたしが捜査します!」
夏江は,自分がしたい仕事を明言した。
室長もこれまでいろいろな事件を扱ってきた。その経験から言えば,この指輪を追求するのは,非常に危険だということは,見せてもらった映像から容易に判断できた。夏江がひとりで対応するような問題でないことも直感で悟った。
室長はやんわりと諦めるような話をした。
室長「夏江君も知っていると思うが,基本的に非科学的な現象による事件で,難しいそうな案件はα隊にお願いすることになっている。もし,この指輪を追求したのなら,α隊にお願いするのが筋だよ。われわれは,α隊の補佐をすればいいと思うが,どうかね?」
夏江は,『補佐』という言葉が気に食わなかった。そこで,次の提案をした。
夏江「室長のいうことももっともだと思います。確かにこの部署では,わたししか動くスタッフはいません。当然,『補佐』という立場になると思います。でも,わたしは,『補佐』の立場には甘んじることはしたくありません。なんとか,『共同』で捜査するということろまで引き上げたいと思っています」
室長「ビデオで見る限り,気絶させるパワーが指輪から発せられたとすれば,まったく未知のパワーと向き合わなければならない。つまり,これまで経験したことのない,未知のパワーに挑む覚悟が必要だ。もしかすると,この国の軍事力すべてを投入するくらいの覚悟が必要になるのかもしれない」
室長は,ちょっとコーヒーを飲んで一息ついてから,言葉を続けた。
室長「まあ,それは大げさかもしれないが,それなりの準備と装備も必要だし,もっと正確な情報も必要ということだ。α隊に依頼するのは当然だが,依頼する内容を具体的にする必要がある。しばらくは,情報をもっと整理して,α隊に依頼する具体的な内容と,われわれがすべき仕事の内容を整理したまえ。話は,それからだよ」
室長の言葉に,夏江は感動した。やっと前向きに対応してくれそうだ。夏江は,大きな声で返事した。
夏江「はい!! ありがとうございます。今,やっと理解しました。わたしが,この超現象捜査室に転属願いを出したのは,けっして間違ってなかったのだと!!」
室長「ふふふ。夏江君がこの部署に転属になったのが正解かどうかなんて,そんなに早く結論を出しては困りますよ。それと,老婆心ながら言っておきますけど,この気絶させるほどのパワーがあるかもしれない指輪については,かなり危険な匂いがします。その匂いをいち早く察知して,回避することも大事だと思いますよ」
夏江「はい!はい!わかりました!!」
ここに来て,夏江は,初めて室長をちょっとだけ尊敬した。
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