獅子牡丹 ふと掛け違い 着崩れて 赤い糸ごと 千切って投げた

 獅子と牡丹は、獅子の堂々たる姿に、絢爛豪華な牡丹の花を配した図柄で、とりあわせ、配合のよいことのたとえに用いられます。

 獅子は百獣の王、牡丹は百花の王とも呼ばれますし、人を例えるなら、美男美女のとりあわせを示すでしょう。

 これがただの図柄であれば、それは変わらず配色よく、とりあわせの良いまま、色褪せてゆくこともできますが、人であれば、動かずにはいられないものです。

 距離が近くなればなるほど、些細なことが気になって、かける言葉を間違えて、悪い想像だけが膨らんで……どんなに素晴らしいふたりだって、ほんの少しの擦れ違いを積み重ねて、嚙み合わせを悪くしてしまう瞬間は訪れます。

 何をやってもうまくいかなくて、かつて辿った素晴らしい日々から遠のいていく、今の自分たちの姿を許すことができなかったなら。

 すべてを投げ打って、初めからやり直してしまうこともあるでしょう。


 ただぼたんをかけ直せば良かったと気付くのは、たぶん大人になってから。

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