デスゲームマスター †暁の穢† によるロケハン
ちびまるフォイ
デスゲームにふさわしい場所
「どうです? この部屋? 広いでしょう?」
「ええ、すごいですね」
「普段はイベントスペースとして貸し出してるんですよ。
防音も完璧。キッチンだってあります」
「なんでもありますねぇ」
「まだまだありますよ。それにアクセスもしやすい。
駅から徒歩5分でこんな場所はそうないですよ」
「大事ですね」
「でしょう! ここにしますか?」
「はい! ぜひ! ここを貸してください!」
「ありがとうございます!
お客様はいい買い物をしましたよ。
で、なんのイベントに使われるんですか?」
「デスゲームをしようかと!!」
管理人は秒速で元お客様を部屋から追い出した。
「ふざけんな! 二度と来るんじゃねぇ!!」
「ええ……」
また断られてしまった。
これですでに100件を超えている。
「はあ、どうしよう……これじゃデスゲームできないよ」
創作かいわいで大人気のデスゲームをいざ始めようとしたが、
まっさきに場所をどうするかという問題が持ちあがる。
さまざまなイベントスペースを問い合わせたりしたが、
どうにも場所の確保ができない。
「もっと誰も使わなそうな場所のほうがいいのかなぁ」
思えばデスゲームといえばさびれた廃墟がイメージに浮かぶ。
きっと他のデスゲーム主催者も場所の確保に追われ、
なんとか勝ち取ったのがそんな場所なんだろう。
今度はいっそ街から離れた田舎の方へと向かった。
「おやぁ、お客さんなんて珍しいべ。
あんたこんな廃校なんか使ってどうするつもりなんだ?」
「ちょっとしたイベントのロケハンをしてまして……」
「はぁ、都会の人ぁけったいなことするべなぁ」
「でも、このあたりは静かでいいですね」
「んだんだ。人よりも鹿やイノシシのほうが多いくらいだぁ。
いっくら騒いでも叫んでも迷惑かけねぇべよ」
「そういうの最高ですね!」
デスゲームではよく錯乱した人が金切り声をあげることがある。
それに様々なデストラップで爆発や銃声も鳴る。
デスゲームの開催場所において音は最も重視する点。
「それにこの学校……すごく広いですね。
校舎も2つあるんですか?」
「んだ。昔ァ、マンモス学校でたくさん子供いたんだべ。
戦時の疎開先だったもんでよ。
あんまりにぎやかだったから近くに民家もねぇんだべな」
「広さもいいですね。ここならいいゲームができそうです」
「広さなんてなんの関係があんだ?」
「体育館なら大掛かりなしかけもできますし、
廊下にはさまざまなトラップもしかけられる。
校舎がふたつならさらに大人数で開催できます」
「よくわがんねぇけど、気に入ってくれたならよかった。
んで、ここ使うべか?」
「ええもちろん!」
やっとデスゲームの開催場所をおさえることができた。
あとは人を集めて、デスゲームの準備を進めるだけ。
そのはずだった。
「はぁ……はぁ……はぁ……。ま、まだ降りるんですか?」
「んだ。なんだ都会の人はやわだなぁ。
こんな程度でへばっとんのかぁ」
「こ、こんな山奥だと……思わ、なくて……」
「ほうれ。もう道に出るど」
山を降りること数時間。
やっとある程度舗装された道路に出た。
「バスは何分後に来るんですか?」
「今日はもう終わっただよ」
「はあ!?」
時刻表を見てみると、1日1便しかない片道切符だった。
「このあたりは誰ぁれもこねぇからよ。
みんな自分の車使うし、バスなんか使わえねぇよ」
「タクシーは?」
「そりゃ食い物か?」
「いえ……」
ここではムリだと確信した。
ここでデスゲームを開催したとき、参加者をどうするのか。
わざわざこんなアクセス悪い場所に呼び寄せる理由がない。
睡眠薬で眠らせて拉致、という方法を使うにしても
ふだん誰も使わないバスに昏倒した男女が何人も乗り込んだら
どんなににぶい人でも事件性をうたがうだろう。
デスゲームの開催場所において、防音のつぎにアクセスは大事だった。
「ああ、もうどうすればいいんだ!
いったいどこでデスゲームができるんだーー!!」
さわいでも文句が言われない。
それでいて、アクセスが悪くない。
そのうえ、自分の好き勝手に部屋を魔改造できる。
そんなデスゲームに適した場所なんてこの世にあるのだろうか。
「あ! いやある……! あるじゃないか!
どうして、あんな好き勝手できる場所を忘れてたんだ!」
神が授けたとしか思えない天啓がくだった。
そこでならリラックスして自分のデスゲームを開催できるだろう。
数日後、ついにデスゲームは開催された。
殺風景な部屋には数人の男女が寝かされている。
そのうちひとりが目を覚まし、他の人を起こしていく。
「こ、ここは……!?」
「なんで私こんなところにいるの!?」
その様子をカメラで監視していたゲームマスターは、
手元のボタンで部屋のプロジェクターに電源を入れる。
真っ白な壁にゲームマスターが投影された。
『デスゲーム参加者の皆さん、こんにちは。
私はゲームマスターの†
君たちの首に取り付けられているのは爆弾。
ゲームをクリアできなければ爆発する』
変成器による無機質な声がさらに緊張感を高める……!
「ふざけんな! 俺たちが何したっていうんだ!
ここはどこなんだ! 教えろ!!」
『君たちは質問できる立場にはない。
ここがどこであろうと、デスゲームに関係はない』
「お金ならあげるわ! ここから出して!!」
『だまれ。これからルールを説明する。騒ぐんじゃない』
「だれかーー!! ここから出して!! ここはどこなの!?」
『騒ぐなっ!! これからデスゲームをっ……!!』
参加者が騒ぎ続けたとき、下のほうからもめる声がきこえた。
/
たかし!! あんた自分の部屋でなにやってんの!!」
\
「うっせぇババア!! 何してたっていいだろ!! ちょ、入ってくんな!!」
数秒後、†暁の穢†の前に割烹着を着た
パンチパーマの母が着たことでデスゲームはやむなく終わりを迎えた。
デスゲームマスター †暁の穢† によるロケハン ちびまるフォイ @firestorage
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます