#3 ロケット

あと1つなのだが、部品が全く見つからない。


もうこの倉庫を14周くらいはしているはずだ。



そろそろ見つかってもおかしくないんじゃないかぁ?





さすがに疲れてきた。座ろう。


どこかに椅子でもないか?………なさそうだな。



白い円の中には15個の部品が揃っている。


あと1つありゃ終わるのに、全然見つからない!


腹も空いてきたし、休憩でもしようか。



俺は白い円の横に座って、水筒とせんべいを出した。








……あれ?


………俺以外誰もいないはずなのに、足音がどこからともなく聞こえる?



ガサッッ





近くにあった箱が動いたかと思うと、その上には誰かの手が乗っていた。



……一瞬心臓含む、全ての内臓の動きが停止した。












「…………やはりいたか………」


鬼の仮面を被った男が現れ、包丁を突き出した。


威圧感しか感じることのできない、低い声で、あたかも予想していたように口を開いた。



俺は息をするのを忘れて、ただその男を見ていた。




「極悪人め………」


彼の手がブルブル震えている。




「……そんなにもてあそんで、何が楽しい」


男はボロボロの服を着ていて、異常に痩せている。



水筒が倒れた。いつのまにか手に握力が入っておらず、せんべいも落ちた。






「鬼畜め、生きて帰れると思うなよ」


彼の頭から、怒りによるものなのか、血が垂れてきた。


俺は動くことができなかった。頭が働いていなくて、感覚がなかった。

いつのまにか痙攣けいれんを起こしていた。


何か喋ろうとしても、言葉が出ない!



「なぜなら、極悪人お前らは、俺の敵だからなぁ!!!!!!!」


男が包丁を投げた!



俺は目の前で起きたことを理解する前に本能で避けた。




包丁は俺の横で、壁に刺さっている。



「潰すつもりで投げたけどなぁ、運が良いなぁ!!

お前ぇ、極悪非道なことをして、そんなに運が良いんだなぁ!

俺を舐めてんのか」


男の腕から、包丁が生えてきた。


間違いなく人間ではない。



………じゃあ誰なんだ!目の前の男は誰なんだ!



「そ、その、あなたはっ、誰」


俺は震える口を開いて言った。いつものように喋れない!


「……俺は善良な人間だ。お前と違ってなぁぁ!」


「私、はあなたにっ、何か、何かしたでしょうかっ!」


「………んだと?」


彼の目が急に開いた。






まずい状況かもしれない。



「俺をここまで弄んどきながら、知らないとは言わせるかっ!

お前を潰す!絶対にぃ!!!!!!」


俺は水筒やせんべいを置いて、懐中電灯を持って走った!



出口は!出口はどこだ!



あった!








は⁉︎………鍵がかかってんのか⁉︎








「おい逃げるんじゃねーよ卑怯者!!!!!!」



何か飛んできた!その直後、壁に何かで切られたような傷がついた。


あいつは間違いなく俺のことを憎んでいる!



鍵を見つける必要があるのか⁉︎



…………いや違う、ロケットの部品が必要らしい。


出口の扉に、ロケットの部品が全て揃わなければ開かないと書かれていた。

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