最終話 朝、20分の考え事

あの時のカメラに納められた映像をようやく見る時が来た。

この胸の苛立ちはこの映像を見ることでしか発散出来ないのだろう。

きっとこの瞬間の為に、過去の俺はあんなに苦労して撮ったんだ。


古いメモリーカードをパソコンにセットする。

久しぶりのこの感覚。

心臓が張り裂けそうな程の胸の高鳴り。

指を震わせながら、複数枚に分かれたファイルの一番上をクリックする。


「…嘘だろ……」


そこにはあの娘の背中しか映っていなかった。

そして何故か安心した。

おそらく俺は、ここで本当にあの娘の裸体を見てしまったら。

俺の事なんて知りもせず好きな男と高級なレストランに居るあの娘の体を見てしまったら。

きっと、罪悪感で潰れてしまってだろうな。


…なんて事を思い出した今日、2023年の午前5:21。

それなりにいい朝だ。

タバコを吸いながら隣に居る彼女と肩を寄せあって、呟いた。

「愛してるよ、ミサキ。」

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朝、20分の考え事 尾谷金治 @haya-punk

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