第14話 意外
昨日姉ちゃんと一悶着ありながら入手した12枚の下着を持って、藤原さんの家へ向かう。
俺は早速インターホンを鳴らした。
「'はい'」
俺は事前に決めていた合言葉を言う。
「柏餅。」
玄関の戸が開く。
「持ってきた?」
「はい、持ってきました。」
「じゃあ行くわよ。」
今から売りに行くようだ。
ちなみにさっきの合言葉は単純に藤原さんの好物らしい。
これを言う必要性は全くない。
言われた通り藤原さんについて歩くこと、約20分。
想像していたような怪しい店なんかではなく、所謂普通の古本屋にしか見えない。
「さあ、来て。」
俺は言われるがままついて入る。
中に入ると一般的な"本屋っぽい匂い"の他に、かすかにホコリとカビが入り混じったような匂いがする。
「店長ーーっ!」
藤原さんが叫ぶ。
すると店の奥の方から小柄な人影が見えた。
「おう、ミサキ。そっちは彼氏かなんかか?」
60手前くらいに見える初老の男が話しかける。
「違うよ、こんなの。こんな馬鹿、彼氏候補にもならないわよ。」
いちいち失礼な女だ。だが突っかかっていける程余裕がある俺ではない。
「ミサキ、今日はどうした?薬か?」
「女子高生の下着。12枚買い取ってくれる?」
「珍しいなぁ。そっちの男の子が持ってきたのか?」
「そうよ。ほら、出しなさい。」
いやいや。気になる事が多すぎる。"ミサキ"ってのは多分藤原さんの下の名前だろう。そして薬ってなんだ。この女、違法薬物の取り引きもしてるのか。つくづくとんでもない奴だ。
…いかん、先にブツを出さなければ。
紙袋に手を突っ込んでそっと下着を取り出す。
「おぉ~。なかなかの使用感だな。こりゃ一枚5千円は下らんぞ。」
「いい具合なのね。よかった。それで、いくらで買い取ってくれるの?」
「一枚6000円でどうだ。」
予定よりも高く見積もってくれたみたいだ。
「6000円✕12枚。7万2000円ね。いいわ、その値段で売る。」
「おう、毎度ありぃ。」
こうして俺の姉ちゃんの下着は俺の手によってどこの馬の骨かも分からない変態の手に渡る事となった。
店を後にして二人で歩く。
「はい、これ。」
藤原さんの手には2万2000円が握られている。
「これは…?」
何の金だ?払うのは俺のはずだぞ。
「私が要求したのは5万円。要求以上の値段で売れたのならお釣りは返すわよ。」
意外だった。
ただのクズでワルな女だと思っていたら、そういう部分はきっちりしてたりするんだな。
「じゃあ、私は今からあの娘の家に向かうわ。後で連絡するからその紙袋だけ貸して。」
俺が姉ちゃんの下着を入れてきた紙袋を片手に、藤原さんはあの娘の家へと向かった。
ついに見られるぞ。
期待に胸は膨らむばかり。
俺はもう、待ち切れない。
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