第13話 姉ちゃん

一応、最大限の注意を払いながら姉ちゃんの部屋に忍び込む俺。

一瞬でも素に戻ると頭がおかしくなりそうだから、音を殺すよりも可能な限り勢いに身を任せる。

というのも俺の姉ちゃんは高二にして凄まじいイビキをかいて寝るのだ。

だから少々物音がしたくらいでは起きないはず。

ゆっくりとタンスの引き出しを開けて、うっすらと部屋のなかに差し込む街灯の明かりだけを頼りに入れ替えていく。

その時だった。


「ぐぁ…。」


そうだった。姉ちゃんは時々、自分のイビキのうるささで起きるんだ。

まさかの凡ミス。

気づかれてるのかは分からない。


「…なんでここに居る、の…?」

ヤバい。なんとか言い訳したらセーフにならないだろうか…?

「しかもお姉ちゃんの下着…見てる…?」

これはアウトなやつだ。

作戦失敗か。

「そのー…。どういうつもりか知らないけど、見たいなら言ってくれれば見せてあげるんだよ……?」

ん?なんだこれ。どういう意味なんだ?

「あのさー…。その…。

弟のあんたでももう、14歳なのよね…?」

まさか。違う意味でヤバい。

「女の子に興味あってもおかしくないっていうか…。

お姉ちゃんに興味もってくれてちょっと嬉しいっていうか…。」


最悪だ。姉ちゃんが俺に向かってモジモジしてやがる。暗くてよく見えないけど女の顔してるやつだ。

こうなったら一か八か、ゴリ押ししかない。

「姉ちゃん、ごめん!実はずっと前から姉ちゃんが好きだったんだ!」

どうだ、効いてくれ!


「え…あ…う、うぅぅ…。」

多分これは猛烈に照れている声だと思う。

なんとか効いたみたいだ。

一応言っておくが、そんなもん全くもって嘘なんだが。

この状況ならこれしかない。

この隙に全部入れ替えてさっさと撤退だ。


なんとかなった、のか?

とりあえず姉ちゃんから調達した下着を一枚ずつビニール袋に入れ、見えないように紙袋で隠したあと、俺も眠りについた。


朝、意外にも姉ちゃんの態度は普通だった。

「おはよー。昨日なんかあんたに告白される夢みたんだけど。ぶっちゃけヤバいよね。」

誰がどう見てもヤバいのは俺なのだが危機が去ったならまあ、良かった。

いよいよ今日、6セット12枚の下着を一枚4000円で売りに行く。

まずは藤原さんの家に行かなければ。

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