第10話 藤原さん
「あんた、空き巣でもしてんの?」
呆れ切ったように俺に問いかける。
「あぁ…その…」
何も言い返せない。通報されてこのまま罰金だか少年院だかの天罰を下されて終わりだ。
と思った直後。
「知ってたけどね」
俺は頭が真っ白だった。
知ってた?何を?どこからどこまでを?
もはや殺して欲しいとまで思った。
「あんたがここの向かいにある汚いビルから双眼鏡持って眺めてるのも知ってた。
だから今日留守にするってことも、あんたが空き巣か盗撮でもするもんだと知ってて教えた。」
完全にやらかした。ハメられた。
だとしても疑問はある。あの娘の親友である藤原さんなら尚更、俺の企てに気づいたのなら先にあの娘には俺が来る事を知らせておいて、警察を呼んで待ち構えたりも出来たはずだ。
いや、俺が今日ここに来る確証が無かっただけか?
動かない体を放置して脳ミソをフル回転させて考えた。
「私、あんたを警察に突き出したりなんてするつもりないよ。」
意味が分からない。だが少し安心もした。
「なんでか分かる?」
分かるはずがない。
「な、なんで…?」
俺は訊いた。
「あの娘を守るためよ。」
…流石の俺でも思考停止した。
「あんたみたいな変態に狙われてたなんて知ったら、いくら犯人が捕まっても一生トラウマになるわよ。あの娘。」
確かに言われてみればそうだ。
ほとんど何の接点もないただのクラスメートの男が、自分の後をつけ下着を盗み、盗撮用のカメラを設置しようとしていたなんて聞いたら普通の女の子なら恐怖でしばらく立ち直れないだろう。
「黙っといてあげるからさっさと元通りにして、今から私のウチに来なさい。」
どういう展開なんだかさっぱりだが、今まで下らない事をダラダラと話していた藤原さんは本性ではなく、上っ面を繕っていただけだという事だけは分かった。
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