第3話 協力者
翌朝、俺は窓の外を眺めていた。
大量に転がった空き缶や丸めたティッシュのゴミに囲まれて、どうすればあの娘をもっと知る事が出来るか。どうすればあの娘をもっと感じられるのか。考える。
そして飲みかけのジュースを飲み干した時、思いついてしまった。
「あの娘と仲がいい生徒を学校で探そう。」
当時中学生だった俺は、クラスに馴染めず教室の端っこで絵を描いたりして過ごしていた。
そんな陰のオーラを撒き散らす俺なんかがあの娘に近づける方法は、
"嫌われても辛くなく、かつあの娘と接点がある生徒を探すこと"
だった。
早速俺は学校に向かい、あの娘と仲がいいのは誰なのかを見極める事にした。
毎日毎日、悟られぬよう監視。
一週間ほどあの娘を遠目に監視して、やっと分かった。
一番仲がいいのは藤原さんだ。まずは彼女と仲良くなることで情報が集められるかもしれない。
だが俺には突然話しかけて仲良くなれるほどコミュニケーション能力に自信はない。
そこで思いついたのが、
SNSで藤原さんを見つけ、興味がありそうな話題をみつける事だった。
その日、帰宅してすぐに全く興味の無かったSNSをインストールし、2時間かけて探し回ってやっと発見。
数少ない情報から芋づる式に手繰り寄せ見つけたアカウント。
いいねの傾向を見ているとどうやら動物が好きらしい。
これだ。
日曜日になり、文具屋へ行ってガラでもないような可愛らしいハムスターの消しゴムを買った時は死ぬ程恥ずかしかった。多分一生忘れないだろう。
休み明け、学校で藤原さんの席の近くを通りわざと消しゴムを落とした。
「あっ、消しゴム落としたよ!…」
かかった。
藤原さんは俺のハムスター消しゴムを数秒凝視した後、
「えっ、これ私も持ってる!」
そう言ってふわふわのペンケースから全く同じ消しゴムが出てきた。
「本当だ!俺もハムスター好きなんだよね」
とっさに出た嘘にしては上手くやれたと思う。
しかもまさか全く同じものを持っているとは。
思わぬ幸運だ。
そして俺と藤原さんはその日一緒に下校する事になった。
意外も意外、割と話が合うじゃないか。
話している内に、なんだかこの人になら多少気持ちを漏らしても良いような気がして。
というか少しでも誰かに話したい欲求に負けて、
あの娘の事が気になっていると話した。
勿論それ以上は何も言っていない。
すると藤原さんは機嫌よく、
「え~!ホントに!?じゃあ内緒で二人がくっつくお手伝いしてあげるよ!」
とはにかんだ。
"ホントに!?"なんて俺が言いたいくらいにトントン拍子で事が進む。
だが素晴らしい事だ。
俺は計画通りあの娘のあらゆる情報を探った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます