第18話 俺はこの世界の常識を知らない
「本日はご相談ですか? それともご依頼ですか?」
「魔物と獣を狩って来たので買取りをお願いしたいのですが」
不思議そうな顔をしてこちらを見ている。
「手に何も持ってないですが…ああっ異世界人だから『アイテム収納』のスキルをお持ちなのですね。それなら横のカウンターにお願い致します」
俺はアイテム収納から獲物をとりだして置いた。
「ゴブリン3体にオーク3体に…熊ですか? あの、切断されたような跡が無いのですが」
ちょっとだけ恰好つけて拳を掲げてみた。
「拳士なので拳で殴りあってみました」
「撲殺した…そう言う事ですか?あの…装備は?」
「拳士なので!このままです」
「え~と…今日もギースさんは居ますので後でまた指導を受けた方が良いですよ…」
「何故か解りませんが、解りました」
「絶対に受けて下さいね…オークが1体銀貨2枚 ゴブリンが1体銀貨1枚なので全部で銀貨9枚(約9万円)になります。熊は銀貨2枚で引き取りますが、こちらは本来は猟師(ハンター)ギルドのお仕事なので積極的には狩らないようにお願い致します…それでは金貨1枚と銀貨1枚ですお受け取り下さい」
結構稼げるんだな。
日給で11万円か…凄いな。
「結構稼げるんですね!」
「あの…冒険者の仕事は自己責任です! 私は指導する側ではありませんが理人様、凄く危ういですよ! 私からも話して置きますから絶対に指導を受けて下さいね」
「解りました」
俺は銅貨3枚を払って再びギースさんの指導を受ける事になった。
◆◆◆
「受付のハルから話は聞いたが…お前は馬鹿だったのか?」
「え~と、どういう事でしょうか?」
どう言う事か解らない。
「あのなぁ~理人、お前はなんで狩りに行くときに『装備』を何も身につけないんだ?」
「拳士ですので!」
「お前、今の状態じゃオークの一撃があたれば大怪我をするし、ゴブリンの爪でも掠れば教会行きになるぞ」
「ですが、結構軽装な方も居るじゃないですか?ギースさんだってかなり軽装ですよね」
「ああっ、これか触ってみるか?」
あれ、随分とごわごわしている気がする。
「随分と固い気がします」
「これはな、只の服じゃ無くて『冒険者用の服』だ! ジャイアントスパーダ―の糸から作られた物で狼の牙でも裂けない…軽装の鎧より丈夫なんだぜ」
「本当ですか?」
「ああっ、見た目と違うんだよ! 防具屋を紹介するからちゃんと揃えた方が良い」
「ありがとうございます」
「それと拳士だから接近戦もするんだろう? ちゃんとポーションも揃えろよ」
確かに必要だよな…
「確かに必要ですね」
「その通りだ、良いか? 俺はお前に冒険者としてやれると言ったが、それは『ちゃんと装備して薬品を揃える』それが前提だ…ちゃんと防具屋に相談して薬屋で必要な物を一式揃えるんだぞ」
「はい」
確かにそうだ…
「他にも何か聞きたい事はあるか?」
「獣や獣の魔物に対抗するコツはありませんか?」
「今俺が言った事で大丈夫だ…良いかよく見ろよ」
そう言うとギースさんはナイフを取り出し、自分の腕に刺したが刺さらなかった。
「?」
「どうだ? 冒険者用の服ならナイフ位なら通らない…俺のは上等品だからワーウルフの牙すら通らない…ちゃんと装備したら安い装備でも獣の攻撃位は耐えられるぜ。その辺りは防具屋に相談して『何処までの魔物に耐えられる装備』か聞いて買うと良いぞ」
「ありがとうございます」
「これもまぁ、金も貰っているし、ギルドの新人教育の一環だ。あとはソロだと何かと困るから、暫くしたら仲間を作った方が良い」
「仲間?」
「冒険者はパーティを組む奴が殆どだぜ! 当然だろう?」
俺の場合は特殊すぎる…仲間は難しいかもな。
「秘密を守ってくれそうな仲間を手にする方法はありますか?」
「それなら、奴隷一択だな」
「奴隷?!奴隷商もあるんですか?」
確かにそうなのかも知れないが、見た感じ奴隷商は無かった気がする。
「王国と聖教国には無いな…帝国では普通に何件もある…だがな奴隷制度はこの世界共通であり、此処王国でも奴隷商が無いだけで奴隷制度はある…奴隷が欲しいならスラムでスカウトすれば良いぜ、男女どちらも選り好みしなければ案外簡単に探せる」
スラムで…
「奴隷になりたがる様な人は居ないでしょう?」
「異世界人の理人には解らないだろうが、スラムじゃ飯にすらありつけない奴が沢山居る…奴隷になれば生活を見るのは主人の義務だ。選り好みしなければ、案外あっさり見つかる。だが、奴隷にした瞬間沢山の義務が生じる、それも考えて行動するんだな」
「解りました…ですが奴隷と契約するにはどうすれば良いんですか?」
「勿論、ギルドで行っているぜ、良い相手が見つかったら連れてくると良い…だが、それより先に『防具』『薬品』『道具』こっちをちゃんと揃えろ、じゃないと本当に死ぬぜ」
「そうします」
「また解らない事があったら何時でも聞いてくれ、有料だがな」
「また頼むかも知れない」
クソ、何も説明されないで追い出されたから、知らない事ばかりだ。
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