第17話 意外な弱点


武器なら持っている。


『伝説のブラスナックル』だ。


ただ、これが本物だった場合…果たしてどれらか解らない。


この伝説という物が曲者で、青く輝くブラスナックルを持つ主人公は父の時代の漫画の主人公には結構居た。


恐らく、勿論、当時の雑誌があれば書いてあった絵でどちらか解る。


だが、ブラスナックルの説明書には絵が無い。


果たしてどれだろうか。


最強のパターンは神すら倒し得る最強の武器。


最悪のパターンは伝説の不良が使っていただけの普通の武器だ。


どちらに寄るか、それによってこの武器の真価が問われる。


解る方法は無いか…


◆◆◆


そんな訳でまた冒険者ギルドに相談をしに来ている。


「こんにちは理人さん、今日はどう言ったご用件でしょうか?」


「この世界に鑑定という魔法はあったりしますか?」


「ありますよ…よくご存じですね、それで何の鑑定でしょうか? 素材や食料は銅貨1枚、武器や宝石等その他の物は銀貨1枚になります、ギルドで買い取る場合は無料になります」



「実はこの武器なんだが、どうだろうか?」


「なんですか? それ」


「ブラスナックルという武器なんだ! 人から貰った物で素材が解らない、お願い出来るかな?」


「解りました…銀貨1枚になります」


俺は銀貨1枚を払いブラスナックルの鑑定を頼んだ。


「それでは…鑑定」


受付嬢がやるのか?


「どうですか?」


「相変わらず、異世界の物は解らないですね…どうぞ」


差し出された紙に書いてあったのは…


名前:伝説のブラスナックル

素材:隕石から作られた特殊合金

特殊能力:めちゃくちゃ頑丈で壊れない

属性:無し

※ RPGを採用


甘くはないな。


神と戦った物じゃ無かったな。


多分、1980年代のゲームにこんなのがあったのか。


まぁ知らんけど。


最強の武具じゃ無かったのは残念だけど、これなら使えそうだ。


「ありがとう」


俺はお礼を言ってギルドを後にした。


◆◆◆


城門を出て歩いて1時間、近くの森に来た。


この辺りは割と弱い魔物がいるという話だった。


ゴブリンにオーク…まぁ初心者が相手にするような魔物だ。


暫く様子を見ていると…前方からゴブリンが現れた。


見える、秘穴が見える。


一応ブラスナックルを嵌め嵌めて無い方の指で思いっきり秘穴を突いた。


人間に使うのと違い思いっきりついたら…


「ぎゃぁぁぁぁーーー」


簡単に絶命した。


いけるよ、これならいける。


そう言いながら2体のゴブリンも追加して合計3体。


余裕で倒せた。


そしてオーク…


「ぶもぉぉぉーーー」


これも秘穴が見えたが、頭部をはじめ幾つか秘穴が見えない部位があった。


「ふぅ…きぇぇぇぇぇーーー」


「ぶごぉぉぉーー」


何とか倒せた。


ヤバいかも知れない。


確かに『経絡秘穴の全て』は人間の秘穴の本。


つまり、獣の秘穴は書いて無かった。


オークの豚の部位には秘穴が見えなかった。


この先、獣系の魔物が出てきたら、使えない可能性が高い。


オークもどうにか3体倒してゴブリンと併せて6体、初めての狩りだからこれで良いだろう。


帰ろうとした時だった。


「ぐわぁぁぁぁーー」


魔物じゃない…只の熊だ…


不味い、不味い、不味い…秘穴が見えない。


こうなったらブラスナックルが通用するかどうかだ!


この体は前の世界なら、カンフーマスターで筋肉も鍛え上げられている。


だが、前の世界には…表の世界では精々が熊を倒す程度。


虎やライオンと戦える格闘家は居ない。


秘穴が見えない以上は…このブラスナックルが通用するかどうかだ…


「うらゃぁぁぁぁぁぁぁぁーー」


怖い…だが、ファルコンアイのおかげで身についた『見切りの極み』のおかげで躱せている。


唸りをあげて熊の腕がブンブン唸りをあげている。


躱せる事は躱せる。


だが、如何に鍛えぬいた体であっても、それは前の世界レベル。


当たれば、大怪我は必至。


当たれば終わりの戦いを繰り返し…攻撃を加え、何とか倒し切った。


駄目だ、たかが熊に此処まで手古摺るようでは…獣系の魔物には通用しない。


なにか対策が必要かも知れない。












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