第4話 異世界にて何か引っかかる

俺が目を覚ますとそこは…レンガで作られた部屋の中だった。


どの位広いんだ…体育館並みの大きさがある。


他の皆はもう既に目を覚ました後だ。


多分、俺が一番最後に起きたようだ。


「良かった、なかなか目を覚まさないから驚いたぞ」


俺の傍に緑川先生が居た。


引き篭もりで…外に出る時は半グレの強制労働だけ…


そんな奴を気に掛けてくれる奴は教師しか居ない。


それより…これは夢じゃなかったんだ。


思い出せ…宗教詐欺を行う奴は狡猾だ。


気をつけないとすぐに騙される。


あの女神イシュタスは…


『解ったわ…両親を生き返らせる事は出来ないわ…私の管理する世界じゃないとはいえ『騙された事に対する怒り』は良く解った…だったら、貴方や貴方の両親が『詐欺にあった事や物を全て嘘でなく本物にする』能力をあげるわ…頼むから、それで行ってよ』


そう言っていた。


恐らくはこれが俺の能力…恐らくスキルだ。


何か落とし穴がある気がする。


だが、それは何かが今は解らない。


「最後の一人が目覚めたようですね! これから重要な話をします、事情が解らないかも知れませんが、まずは私の話を聞いて下さい!」


驚く位に綺麗な女性がこちらに歩いてきた。


地球では見ない水色に銀色を混ぜた様な綺麗な髪、セミロングでウェーブが掛かっている、見るからに豪華な装飾品から考えると…彼女は王女に違いないな。


「ようこそ! 異世界の戦士の皆さん、私はこの国の第一王女ライアと申します。あちらに座っているのがこの国の王ドラド6世になります」


流石は王族威厳があるし、気品がある。


だが、そう言う奴こそが人を騙すんだ。



そんな風に思っているとただ一人の大人緑川先生が手を挙げていた。


「こちらの国の事情は全部女神イシュタス様から聞きました。そして私たちが戦わなくてはならない事も...だが私以外は生徒で子供なんです..できるだけ安全なマージンで戦わせて欲しい。そして生活の保障と全てが終わった時には元の世界に帰れるようにして欲しいのです」


流石、緑川先生、担任だから話が巧いな。


此処は任せた方が絶対に良いよな。


だけど…俺は『この国の事情』なんて何も聴いてないぞ。


「先生、この国の事情ってなんだ?」


「後で話してやるから、今は聞いていてくれ」


「解りました」


「勿論です、我々の代わりに戦って貰うのです。戦えるように訓練もします。そして、生活の保障も勿論しますご安心下さい。 元の世界に帰れる保証は今は出来ません。ですが宮廷魔術師に頼んで送還呪文も研究させる事も約束します」


帰る方法はこの世界の人間も知らないのか…


帰っても闇金に虐げられる生活をするだけだから…闇金の借金がチャラになっただけ案外良かったのかも知れない。


「解りました、それなら私からは何もいう事はありません、他の皆はどうだ? 聞きたい事があったら遠慮なく聞くんだぞ」


同級生が色々な事を聞いていた。


どうやらここは魔法と剣の世界、俺の世界で言うゲームの様な世界だった。


葛見が質問していた。


「ですが、僕たちはただの学生です、戦い何て知りません、確かにジョブとスキルを貰いましたが本当に戦えるのでしょうか?」


「大丈夫ですよ、ジョブとスキルもそうですが召喚された方々はこの世界に召喚された時点で体力や魔力も考えられない位強くなっています、しかも鍛えれば鍛えるほど強くなります。この中で才能のある方は恐らく1週間位で騎士よりも強くなると思いますよ」


マジか…だが、何故だか俺には引っ掛かりがあった。


俺は皆と同じなのか?


体力や魔力は果たして強くなっているのか?


俺との約束は違った


『解ったわ…両親を生き返らせる事は出来ないわ…私の管理する世界じゃないとはいえ『騙された事に対する怒り』は良く解った…だったら、貴方や貴方の両親が『詐欺にあった事や物を全て嘘でなく本物にする』能力をあげるわ…頼むから、それで行ってよ』


最悪の事態を考えろ…もしかして俺はこれしか貰えてない可能性がある。


「それなら安心です...有難うございました」


いや…安心じゃ無いよ。


俺は皆と違う可能性があるんだからな。


「どうしたんだ理人! 顔が青いぞ!」


担任の緑川が俺に話しかけてきた。


「いや、何でもないです」


こればかりは今は解らないな。


「もう、聞きたい事はありませんか? それならこれから 能力測定をさせて頂きます。 測定といってもただ宝玉に触れて貰うだけだから安心してください...測定が終わったあとは歓迎の宴も用意させて頂いております、その後は部屋に案内しますのでゆっくりとくつろいで下さい」


不味いな、聴かないと…


「ジョブを貰ってない場合はどうすれば良いんでしょうか?」


全員の顔がこちらに向いた。


「とりあえずは測定を受けて下さい。ジョブの無い人間なんてこの世界には居ませんから安心してください」


安心なんて出来ない…


とりあえず、説明は終わってしまった


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