第5話 故意か脳味噌お花畑か
話が終わって、すぐに水晶による能力測定の儀式が始まった。
これは異世界から召喚した者たちのスキルやジョブが解り、各種能力を数値化して見る事が出来るらしい。
クラスの皆は我先に並んでいたが、早いからと言ってなんら特典がある訳じゃない。急ぐ必要は無い。
俺はゆっくりと、一番後ろに並んだ。
何だか嫌な予感がするが…まぁ今更仕方ないだろう。
測定を終えた皆は、はしゃいでいたが、俺は憂鬱で仕方が無い。
「僕は白魔法使いだったよ、白魔法のジョブがあったんだけど?これアタリなのかな?」
「普通じゃないの?私は魔導士だったよ!最初から土魔法と火魔法が使えるみたい」
「いいなぁ、私は魔法使いだって、どう見ても魔導士より格下よね、魔法も火魔法しか無いんだもの」
そうか、てっきり俺は『皆が自分のジョブやスキルは解っている』と思っていたんだけど、何を貰ったのかここに来るまで解らなかったんだな...測定して初めて自分の能力が解るのか。
「気にする事はありませんよ! この世界では魔法使いになるにしても沢山の修行をして初めてなれるのです。最初から魔法のスキルが1つでもあり、魔法使いのジョブでも充分に凄い事ですよ」
「本当ですか? 良かった!」
会話を聞く限り、魔法使いや騎士等が多いみたいだが、それでもハズレではなくこの世界で充分に凄いジョブらしい。
それより良いジョブが恐らく、魔導士とかなのだろう、そう考えると勇者、聖女辺りのジョブが本当の意味で大当たりなのかも知れない。
聞き耳を立てて俺が聞いている限りでは、凄いと思えるようなジョブは今の所『魔導士』位しかでて無さそうだった。
「やった、私、大魔道だってさ、魔法も最初から4つもあるよ..当たりかなこれは」
『大魔道』名前からして凄いジョブの様な気がする。
どうやら魔法を使う、最高のジョブは大魔道なのかも知れない。そう考えると魔導士は少し良いジョブ位だな、本当に凄いジョブはやはり、 勇者、聖女、大魔道、賢者辺りだろう。大魔道のジョブを引いた平城さんを見た時に担当の人が驚いた表情を見せていた。
あくまで、そこからの想像に過ぎないが。
まぁ引き篭もりの俺にはクラスの人気者の彼女にステータスを聞くなど到底できない。
それ処か誰にも聞けない。
仕方ないな…ボッチだから。
果たして俺はどうなのだろうか?
『解ったわ…両親を生き返らせる事は出来ないわ…私の管理する世界じゃないとはいえ『騙された事に対する怒り』は良く解った…だったら、貴方や貴方の両親が『詐欺にあった事や物を全て嘘でなく本物にする』能力をあげるわ…頼むから、それで行ってよ』
そう言っていた。
これがスキルだとしたら…
最悪、残念が、俺はジョブが貰えてない可能性がある。
最悪、俺は『無能』みたいな存在の可能性がもある。
役立たずな俺は下手したら城から追い出されるかも知れない。
◆◆◆
「これは凄い、勇者のジョブがでたぞ」
検査の担当者の驚いた声が聞こえた。
なんで勇者のジョブが大樹なんだ…
あの女神は無能なのか?
剣聖が大河
大賢者が聖人
聖女が塔子。
あの女神は本当に頭がお花畑なのか?
只のキラキラ4人組を選んだだけじゃないか。
剣道部とかレスリング部の奴の方が良くないか?
そしてとうとう俺の番になった。
「なんだ、これはまさか『無能』がいるなんてな」
別の意味で検査の担当者が驚いている。
俺のジョブやスキル、数値は…
理人
LV 1
HP 17
MP 14
ジョブ:無能
スキル:翻訳、アイテム収納(収納品あり)
エクストラスキル: 偽りの真実(過去に両親、当人が騙された物限定 ※他人には見えない)
これは余りに酷すぎる…気がする。
あの、女神…本当に腹が立つ。
これが故意なのか解らないが…故意なら心根が腐っているし…故意じゃないなら脳味噌お花畑じゃないか。
これじゃどうにもならない様な気がする
良くライトノベルで『冒険者になる』なんて話もあるが、此処迄酷い状態じゃ…どう考えても、無理だろう。
あとは『偽りの真実』が何処まで言った通りか…それだけだな。
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