第3話

 彼が急にありがとうって言うから。


 びびって、つぼみのことだとごまかしてしまった。またしてもめぐる血潮。駆け回るF1。心臓バック爆。


 彼は、陽キャという単語すら知らない世界のひと。なんか色々あるみたいで、さすがにぶしつけにふれるのもえぐいので特に言及はしてない。


 してないけど。


 彼は、顔が良い。


 わたしは正直、ひとめぼれなので、顔とか、正直、どうでもいいんだけど。


 でもたぶん、この顔の良いのが、なんか、あるのかなって。思わないでもない。ぱりぴ陽きゃぎゃるは空気読みはなまる120点だから。


 彼の隣にいられるのなら。彼がにこにこしているのなら。それでいい。こうやって、暖簾の中で、花のつぼみを眺めているだけでいい。


 そんな彼が死んだのは、次の日だった。

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