第3話 一筋の光明
あれから何日、いや何十日過ぎたのだろうか。時計も窓も無い為、時間の経過が分からない。奴隷扱いされている私にはそれを聞く権利も無く、それでも一度聞いてみたことがあるが、激しい拷問を受けただけで結局時間や日付を知ることはできなかった。
私は今、他の人と同様に透明なケースの中にいる。口と尻の穴にチューブを、尿道にカテーテルを挿し込まれている。定期的に薬と一緒に何か——食感としてはペースト状の食べ物に水を含ませた感じで、味は色んな食べ物が合わさったような感じで不味い——が送り込まれ、排泄物は勝手に吸引されていく。
私の体はずっとケースの中で拘束され、数日——或いは数十時間——に一度解放される。拘束されたまま滅茶苦茶に犯されたり、拷問されたりし、それが終わるとまたケースの中に入れられる。
チューブとカテーテルを挿し込まれ、食べ物と思しき何かを流し込まれる——最初こそ苦しかったが、今では何とも思わない程度には慣れてしまった。殆どの時間拘束され、体に肉が付いていくことを感じ、ただただ犯される為に解放されるのを待つだけであった。
きっと、私の心はもう壊れてしまったのだろう。しかし、それでも私は残った理性を失わないよう、ここから脱出する方法を考える——その方法は無い、と心のどこかで分かっていても。
今日も、上の階からボーイッシュな女性が降りてくる。彼女は私の方へと歩いてきた。ケースの扉の鍵を解除し、吊るされるように固定された私の体が解放される。
「今日は君の番だよー。いやぁ君もだいぶ仕上がってきたねー」
彼女は私をお姫様抱っこし、隣の部屋に連れて行ってベッドに放り投げる。私の拘束を解くと、彼女は横たわった私の体のだらしない贅肉をつまみ、まるで香りを楽しむように顔を私の腹に埋めて思い切り息を吸った。顔は結構強く当てられ、少し苦しい。
「それじゃあそろそろ——」
どん、という爆発のような轟音が、扉の向こうから耳をつんざいてきた。扉の方を振り向くと、少しして同じ轟音と共に扉が吹き飛ばされ、その先にいる人が見える——そこには、ゴスロリに身を包んだ女性が立っていた。
「いい臭いがするって思って来たけど——その子ね。本当、今すぐ食べちゃいたいくらい凄く美味しそう」
そんな彼女に、ボーイッシュな女性は睨んで叫ぶ。
「ちょ、ちょっと! 他人の奴隷は奪わないって、暗黙の了解でしょ!?」
彼女は今、はっきりと他人の奴隷と言った。他にもこういった人達がいる、ということなのだろう。しかし、ある仮説を抱いていた私は、驚きと同時にその説が補強されたというありがたさも感じ——いや、それどころでは無い。
危険な状況ではあるが、無いと思っていた脱出のチャンスでもある。私は彼女達の出方を窺う為に、あえてベッドに横たわったまま二人をじっと見る。
「その子が誰かの奴隷で、自分がそれを奪ってしまった——なんて可能性も、否定できないんじゃないの?」
「服を着て、金とかスマホとかを持っている奴隷なんている訳無いじゃない!」
怒るボーイッシュな女性に、ゴスロリの女性は嘲笑うように微笑む。
「いや、そうでもないよ? 奴隷に普通の生活をさせてる人、ワタシは二人知ってるよ? 視野が狭いねー——だ・か・ら。その視野を広くしてあげる」
その瞬間、彼女の後方でガラスの割れる音がした。二度、三度——と割れる音が響き、透明なケースが次々と破壊されていくのが音で分かる。ボーイッシュな女性が焦った表情で咄嗟にそっちへと向かい——ゴスロリの女性が、彼女の首にスタンガンを突き刺した。
「があっっっ!!!???」
彼女はその場で倒れ、痺れて体を動かすことができない。そんな彼女を馬鹿にするように見下してゴスロリの女性は笑って言う。
「あはっ、スタンガンはワタシ達のマストアイテムだよ? もしかして忘れちゃった?」
彼女はフリルの付いたハンドバッグからガムテープを取り出してボーイッシュな女性の腕に巻き、拘束する。そして自分のスカートの中に手を突っ込み、下着を脱いでスカートを捲り上げる。
「——!」
ボーイッシュな女性と同じような、馬の陰茎のクリトリスが露わとなった。まるで勃起しているように、びん、と伸びている。彼女はボーイッシュな女性のズボンと下着を脱がせ、同様に馬並みのクリトリスが露わとなる。
「こっちの視野も広げないとね? 堕としてあげる」
「い、いやっ、やめ——お゛ん゛っっっ!!!???」
彼女の言葉を遮るように、ゴスロリの女性は勢いよくクリトリスを挿入し、激しく腰を振る。二人の荒い呼吸と喘ぎ声が響き——
今だ、と感じた私はベッドから飛び上がって全力で駆けだした。ゴスロリの女性は「あ」、と私のことを忘れていたかのように声を漏らす。
ベッドの部屋を出て透明なケースの部屋を通り——その時に一瞬、横をちらっと見た。
「——ッ!?」
彼女達と同じ馬並みのクリトリスを持つ全裸の女性達がいた。首輪に繋がれ、アナルには尻尾のついたおもちゃが挿入され、まるで獣の交尾のようにケースの中にいた女性達を犯している。床にはハンマーが捨てられている。ガラスを破壊する為に使ったのだと、さっきの音で理解する。
犬のような女性達はセックスに夢中なあまり、私の存在に気づいていないようであった。乱交の場となった部屋を通り抜け、一階へと上がり、玄関を出て——遂に私はこの養豚場のような、地獄のような家から脱出できた。
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