第2話 奴隷宣言

 ボーイッシュな女性は家に入ると階段を下りていき、重厚な扉を開け——そこの光景に、目を疑った。自分は今現実世界にいると理解しつつも、その光景は夢ではないかと思わず疑ってしまった。


 何人もの全裸の女性が手足を縛られ、透明な大きいケースの中に収納されている。口と尻の穴にはチューブが突っ込まれ、恥部にはカテーテルが挿入されている。人間が、さながら家畜になったかのような光景であり、彼女達の目は死んでいる。

 自分もこうなるのだと想像し、絶望する。両目から涙が溢れ、顔を濡らす。


「驚いた? まあ。あ、あの子は君と同じ新人ちゃんだよ」


 顎をしゃくって『新人ちゃん』を指す。『大体の人』という言葉に疑問を抱きつつ、その方を見遣る。


「ん゛ん゛————————っ!!」


 幾つものケースの前に三機ある大きな機械。その中心の機械に彼女はいた。ボーイッシュな女性はその前まで歩き、私にそれを見せつけるようにする——そしてその光景に再び絶望する。


 体の至るところに電流パッドが張られてそこから電流が流れ、搾乳機が彼女の乳首を引き千切れそうな程強烈に吸い上げる。さらに背中は二本の乗馬鞭で何度も叩かれる——まさに拷問の為の機械である。そして口に繋がるチューブが蠢いており、何かが流れているのが分かる。


「ちょっと前に捕まえたんだけど、酷く抵抗してきてねー。だからお仕置きをしてるの。あ、ちなみに、今このチューブの中を通っているのは、ここの子達のうんちだよ」


 涙を流し続ける彼女は、糞が口の中に入るたびにむせ、隙間から茶色い物体が飛び出てガラスの壁にびちゃりと付く。

 常人であれば食べたいと思わないそれを、彼女は無理矢理食べさせられているのである。このような悍ましい機械を、どうやったら思いつくのだろうか。


「こうやって皆に見せつけると、皆抵抗しなくなるから本当便利だよねー」


 本当に、そうだと思う。私も最早抵抗する気力など無い。抵抗してああなってしまうのなら、抵抗しない方がましだ。


 私はさらに奥の部屋へと運ばれる——先程の豚小屋のような部屋とは打って変わって、その部屋は何の変哲も無い部屋だった——無数の大人のおもちゃと拷問器具がある点を除けば。

 彼女は私をベッドの上に乗せ、跨ってくる。彼女の手にはナイフが握られていて、私のパーカーを掴んで切る。


「何で奴隷が服着てるのかなー?」


 真ん中が切断されたパーカーを彼女は両手で掴んでがばっと開ける。服に隠れていた下着を同様に躊躇いなく切り、私の胸が露わになる。次いで彼女は私から降り、私のズボンのベルトを取り、ズボンを下げて私の体をうつ伏せにする。


 ——今から、滅茶苦茶に犯されるんだ。


 そう思い、体は震えて涙が出そうになる。助けを求めたくても求められず、そもそも助けを求める友人もおらず——

 そこで、ふと昔友人だった彼女のことを思い出した。彼女の嫌悪の目が過り——

 

 ——ああ、こんな気持ちだったんだね。


 最早伝える機会など無い後悔の言葉を、心の中で呟いた。


「——ッん゛ん゛ッッッ!!!???」


 突然、尻に猛烈な痛みが走った。あまりの激痛に、陸に上げられた魚のようにびくんびくんとのたうち回る。その時、ある物が彼女の手に握られているのが見えた——乗馬鞭だ。痛いとは何となく分かっていたものの、ここまでの痛みだとは思っていなかった。


「何考えてるの? 奴隷の分際で。まさか逃げるつもり?」


 その言葉に、私は全力で首を横に振る。すると彼女は微笑み、何かを手に取る。


「ふーん、なら良かった」


 そう言って彼女は横たわる私に体を乗せ、尻の穴に何か——恐らくディルド——の先端を入れる。私の体はびくっと動き、彼女は笑う。

 彼女の手で口を塞いでいたガムテープが解かれ、口からは荒い呼吸が出てくる。


「そんなに息を荒くして——やっぱり、奴隷がお似合いだねー」


 彼女の顔が私の顔のすぐ傍にぐっと近づき、耳元で囁く。


「じゃあ、これから言うことを復唱してね。しなかったら——分かるよね?」

「は、はい……」


 彼女はにこりと笑い、また囁く。


「私は——」

「わ、私は……」


 髪の毛が力強く引っ張られ、思わず背をそる。


「声小さいなー。あれ、やられたいの?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいっ!」


 訳も分からず謝罪の言葉を叫ぶと、彼女は手を離す。


「それじゃあ続けようかー。私は——」

「わ、私は——!」

「——貴方に——」

「——貴方に——!」


 尻の穴に突っ込まれたものが、段々中へと入っていく。


「——服従を誓います」

「——服従を誓いますっ——お゛ッ!?」


 段々中へと入っていったそれは、宣言が終わると同時に一気に奥へと入り、思わず淫猥な声を零してしまった。彼女はそれの電源を付け、ウィンウィンと肛門と直腸の中で蠢く。


「はい、よくできましたー! こんなに濡らしちゃって——アナルだけだと、まんこが寂しいよね? ご褒美として、犯してあげる」


 そう言って彼女はズボンを脱ぎ——


「——え」


 そこには、馬の陰茎に迫る大きさのクリトリスがあった。その先端には穴があり、そこから精液、或いはそれに準ずるものが出てくるのだろう。


「何、それ——」


 人としてありえないそれに、私は竦む。怖い、逃げたい——でも、逃げようとしたらもっと悲惨な未来が待っている。


 彼女は私の尻を掴んで持ち上げる——それを、受け入れるしか無いのだ。

 焦らすように馬並みのクリトリスの先端を恥部に擦り付け——


「ン゛お゛ッッッ!!!???」


 下から私の体を突き上げるように、それが一気に挿入された。指しか入れたことの無かった私の恥部に痛みが走り、彼女のクリトリスが私の子宮をぐりぐりと刺激する。

 そして彼女は腰を振り、何度も子宮を突いてくる。突かれる度に、「あっ」「あん」という淫猥な声が喉の奥から突き出される。


「あっはは、可愛い声が出てる」


 彼女は笑いながらそう言い——そして、腰を振る勢いが増した。子宮は激しく突かれ、突き出される淫猥な声も大きくなる。


「んー、じゃあ、今から声を出したら駄目にしようかな?」


 彼女は再び勢いを増す。その耐え難い激しさに声を出してしまいそうになる私は、布団を噛んで声を出さないようにする——が、荒い鼻息も、「ん゛っ」という喘ぎ声も、止まらない。


 そして腰を振る勢いは最高潮になり——お互いに、絶頂した。精液なのか、別の何かなのかは分からないが、彼女のクリトリスから何か温かいものが出て、それが膣の中を満たしていくのは分かった。


 恥部から馬並みのクリトリスが引き抜かれ、へたり込むように持ち上げられた尻を下ろす。体から力が抜け、呼吸は荒く、汗、唾液、恥部の中の液体など、色んな体液が白い布団を濡らし——


「っあ゛っづぅっ!!!???」


 背中に何か熱いものが垂れてきた。思わずびくっと体を激しく動かし——そんな私の体の上に、彼女が乗ってくる。開けてしまった口がこじ開けられ、猿轡がねじ込まれる。


 彼女はテーブルへと手を伸ばし、私はそれを見る——彼女は燭台を手に取り、私に見せつけてきた。


「声出したら駄目、って言ったよね? だけど声出しちゃったよね? だから、お仕置き」


 微笑んで彼女は言った。その理不尽な宣言に、私の顔は絶望に染まる。


「でも、私も鬼じゃないからねー。熱い、って言えたら止めてあげる」


 鬼じゃない、という言葉と共に放たれた宣言。しかしそれも、猿轡をねじ込まれた私にとっては鬼の言葉である。


「それじゃあ——」


 彼女は私の背中に溶ける蝋を垂らす。ぽた、ぽた、と背中に落ちていく度に高熱が襲い掛かってくる。


「ん゛ん゛ぅ! ん゛ん゛ぅ!」


 いくら「熱い」と叫んでも、猿轡のせいで上手く言えない。それでも、涙を流しながら叫んでしまう。


「何言ってるか分かんないなぁ。あ、もしかして蝋燭だけじゃ寂しい?」


 その言葉に、私は首を全力で横に振る——が、


「首振ってどうしたの? 興奮してるの? 言いたいことがあるならはっきり言ってよ。その口は何の為に付いてるの?」


 彼女は口に出さないと聞いてくれなかった——いや、奴隷の私の言葉など、そもそも聞く気が無かったのだろう。仮に出すことができたとしても、だ。


「ん゛ぅ!!!???」


 私の尻が乗馬鞭で叩かれる。激痛が走り、私の体はびくんと跳ねるように動いた。


「あ、嬉しそうだね! やっぱりこれが欲しかったんだ!」


 わざとらしく嬉々として彼女はそう言うと、乗馬鞭で何度も尻を叩く。それと同時に体は跳ねるように動き、苦悶の声が零れる。


 蝋を垂らし、鞭で打ち——その責め苦は、拷問のようなプレイは、何時間も続いた。私が苦悶の叫びを上げても、涙を流しながら激しく体を動かしても、失禁してしまっても、彼女はその手を止めようとはせず、ずっと笑いながら私を責めた。

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