エピローグ

「殿下、少しだけ外してよろしいでしょうか」

学園の剣術大会の日、丁度昼休憩の時間。

レミアムはそう言い、席を立つ。


「ああ、構わない」

俺がそう答えると、レミアムは嬉しそうに微笑み、頭を下げてから婚約者の元へ走る。


後ろ姿しか見えない2人が、とても眩しかった。


(俺が闇に近いところにいるから、光の世界にいる2人が羨ましいのか?)


生まれた時より、人から疎まれた命。

俺の精神は、かなり病んでいたと思う。


それゆえ人のちょっとした仕草や、態度に過敏になったとも言える。


「殿下」

ジュリアスは、そんな俺を労るように肩に手を置く。


「ジュリアスか」

「あちらに昼食を用意しております」

すでに学園を卒業しているジュリアスは、俺の執事兼護衛ということで、学園に出入りが許されていた。


レミアムが羨ましかった。

継ぐべき家でも両親とも仲が良く、しかも婚約者までいる。


俺やジュリアス、チェスターは、家から疎まれているから、本来親がまとめてくるような婚約話なんてなかった。


(あの世界に、俺も行けるのだろうか)


この薄汚れた俺でも、光輝く未来なんてあるのだろうか。

その為には――ここから逃げ出せねばならない。


「俺、父上や宰相の言う通り、留学するわ」


全てを諦めていた。

この闇から抜け出せないと。


だけど、逃げ出すチャンスがあるなら逃げ出したい。


あの光輝く世界を見てみたいと。


「畏まりました」

ジュリアスはそう答えると、俺の留学はすぐ決まった――。

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