第3話

 部屋に戻れば案の定、誰もいない。


 シャルーアの生徒は付属の寮暮らしが義務付けられている。

 合計で4つの寮があり、ここは1年生専用寮のアーファン寮。

 他には2年生専用のドゥファン寮、3年年生専用のトレファン寮、4年生専用のキャトルト寮だ。

 

すべての寮が常人では考えられない規格外の大きさであり、それぞれ女子棟、男子棟、教師棟がある。

 基本的には1階が食堂および広場、2,3階が女子棟、4,5階が男子棟、6階が教師棟だ。

 1つの部屋に4人暮らしであり、各属性が1人ずつランダムで同居人が決められる。

 アタシの部屋は3階だ。


 さ、説明はここまでにして、何か軽いものでもつまも。


 冷蔵庫を開けてみると、ホールのチョコタルトが入っていた。

 作った本人の許可は得ていないけど、一切れくらい食べても咎めないだろう。

 一切れを皿に移し紅茶の茶葉を選んでいると、ガチャリとドアの開く音がした。


 どうやらシェフ様のお帰りだ。



「あー! アロアが私の作ったチョコタルト食べようとしてる!」


「ミーテムも食べる? 紅茶淹れるよ」


「いや私が作ったんだけど。まあいいや、お願いー」


「ウィーシェフ」



 もう一切れを皿に移し、ティーカップも用意する。

 どうせなら合う紅茶にしようと茶葉を探す。

 そうだな……。チョコタルトなんだから濃厚な味わいだろう。となるとウバかな。


 瞬間、後ろから抱きしめられる感覚がする。



「紅茶ソムリエやってる?」


「ウバにしたよ。濃厚なチョコにはよく合うさわやかな紅茶。ミーテム離れて、重い」


「もー、つれないなぁ」



 出会って一週間の同居人に紅茶ソムリエと呼ばれてしまうほど、私は紅茶好きだ。


 そして帰ってきたとたん後ろから抱きしめてくるこのやばい奴は、ミーテム。

 地属性の魔法使いで、だいぶ距離が近い。大人っぽい上品な顔立ちとダークブロンドの髪の持ち主であり、出るところが大きく出ているミーテムに後ろから抱き着かれれば世の大抵の男は虜になるんだろうが、あいにくアタシは女だ。

 まあ、ミーテムは料理が好きでよくお茶菓子を作ってくれるから、同居人の中では仲がいいと言えるんだろう。


 逆に__



「お、またお茶会やってる」


「甘いものの何がいいんだかな。剣に勝るものなどないだろう?」



 こういう熱血的なタイプは苦手だ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る