第19話 聖女?

 森の中を銀と一緒に走っている、さっき落ちるときに木に激突して痛かったから、星の次に陽の力が有るのが植物、其の所為かもしれない。




 あいつは多分スパイ活動が疑われてたんだろう僕達を身代わりにしようと考えたんだな。




ーーーもう少しだとーーー


 「解った」


 龍である鈴木君の言葉は分かりにくい、彼も疲れるそうで銀が通訳してくれることになった。


 上をユウユウと飛んでいる鈴木君を見てもやもやした、乗せてくれないのか?、ちょっと期待したのに。




 途中何度か妖気になった氣を見たがこちらに関心はなさそう、あの時村を襲っていたのは何だったんだろうか。


 前方に氣の固まりが見えた、木々に同化する様にひっそりと蟠っている。


ーーーここだーーー


 「うん」


 


 近づくと斜面に窪みが有るのに気付いた、回りに木や石が落ちている、宣言の儀をするだけで結界に出来ただろう。


 窪みの中を確認して僕の心臓が拡大した、それはもう盛大にこれでもかと血液を送り出すのを止められなかった。


 自分の尼属性にうっすらと気付いてはいたけど、これは破壊的。




 同い年位のシスター姿で窶れてはいても美しさは際立っている、落ち葉だらけの窪みが輝く貝にさえ思える。


 気付かないうちに前に進んで結界に触れたからか自分を取り戻した、そして解った。


ーーー理解できたか?ーーー


 「うん、初めて見たよ。彼女は聖人だね」




 地球の歴史を探ったとしても数人しかいない聖人。


 現れるのはたいてい動乱の時で理を新しく出来る人だそうだ。




 「どうしちゃったの?」


ーーー分からない、今朝までかかってやっと結界に包めたと言っているーーー


 銀が上を見ながら通訳してくれる。


 周りに未だ妖魔や邪氣の気配が有る、大きな体で払いながらじゃ大変だっただろう木々を倒すと自分に降りかかるだろうし。


 結界に触っても微動だにしない、あれ?いつの間にか手袋をしてる、外してから触るとすんなり入れた。


 身なりを整えてから声を掛けたけど反応がない、デッキシューズをジャージのポケットから出して履きながら触ってもいいのか考える。




 銀があきれた顔で見てくるけどそんな世界の人間なんです僕は。




 「あのぉ、もし、大丈夫ですか?」


 「う・・・ん」


 肩をゆすったら少し覚醒しかけたけどそこまでだった。


 手を取って活力を流してみたけど駄目だった、試しに手袋をはめてみよう。


 うまくいった、活力を流しながら状態を確認したけど大丈夫そうだ壊れている細胞はなさそうで良かった。




 扉を出して中に入ってゴミ袋を二重にした、お湯を入れて湯たんぽを作るためだ。


 ここが森としても気温が低い、アスファルトが無いとこうなるのか。


 口をねじって輪ゴムで止めて折り返して更に輪ゴムを掛けて彼女の元に戻ってきた、眉が寄っている。




 お腹の当たりに湯たんぽを置くと落ち着いたように寝息を立て始めた、お湯袋を抱きしめだしたのを見て安心した。




 手を握って活力を続けて流していると薄っすらと目が開いた、あわてて手を離したけどひるんだ目で見られたぞ、やっぱりか。


 「あの、あの、私は聖職者なので!、いえ、あの我慢できないなら大丈夫ですけど・・」




 思った以上だったーー!。


ーーーはっはっはぁ、娘よこ奴には思い人がおる無いぞ?、ない・ーーー


 「なんで僕を見るんだよ、そんな度胸があるわけないだろ」


 ぐう~~~~~~っ。


 銀と二人で思わず見つめると真っ赤になっていく。




 「あの、その、はい、先に御喜捨を頂けましたら・・・」


 俯き加減で恥ずかしそうに言う彼女に確認してみる。




 「天獣と森獣がいるけど大丈夫?」


 僕の横に居る銀と後ろに居る鈴木君にやっと気づいたみたいで綺麗な目を見開いて後ずさろうとするけど窪みに居るわけで、あ、おい、逃げるな。




 「迂闊に動かないで!、ここから出ると危ないから」


 後ろ向きで縁を乗り越えていこうとする彼女の手を引っ張って戻そうとするけど本気の抵抗にあった。


 呪体の真反対になる聖人は不遇の目に遭いやすい、聖獣、霊体、邪氣、妖怪、そして祈祷師も好物と教わっている。


 だけどこの人は・・・・。


 


 「お願いします、まだ見たいのです、知りたいのです、早すぎます、許して・・・」


 「大丈夫、何もしないからっ、落ち着いてぇ」


 体を縮めて暴れる美女を抱きしめて氣を送り続けてやっと少し落ち着いたけどこちらに体を預けてきた。


 「御使い様、嬉しいです、経験はありませんが精一杯務めさせて頂きます」




 思わず押しのけて腰を引いた、祈祷師も好物ってこういう事か、早く施術しないと。


 「僕は山田太一です、落ち着いて聞いてください」


 「はいっ、ミリーと言います、あの、身を清めたいので、水が近くに無いでしょうか?」


 足元にある湯袋を見ながら頬を隠している、エロ過ぎるっ、まだその考えから抜けてないの?。




 話が進まないから半分端折ろう。


 「お腹に何か入ってますね?。」


 自分のお腹を抑えながら申し訳なさそうに言う。


 「二日間何も取っていません、もしや断食が必要でしたか?」


 「そうじゃなくて」


 「男性の氣は無いはずですっ!、あっ、まさか」


 「じゃなくてぇ、妖気が入ってるから捕りたいんですっ、いいですかっ?」


 キョトンとしてる、彼女は多分作られた聖女だ、聖域に近い人に妖物を埋め込んで無理やり陽に引き寄せている。


 「やっぱりあの時、・・お願いします、あのぉ、できれば清めてから」




 こちらの氣に染まっている服の上からは無理そうだし、特に急ぐわけでもないし取っ手を探し出してドアを開けた。


 一度中に入ってドアを閉めて念を送る、その後にメールを書いて送信する、でないとスマホを寝室に置いてるなんて普通にある人。




 「あ、あのぅ御使い様そこは一体?」


ーーー太一よ、鈴木が何か焦っているぞーーー


 「僕の家に繋がっています、少し待って」


ーーーなんだ鈴木よ?魔法使い?、珍しいなジミリカには多いがーーー


 「ジミリカって?」


ーーーサルカの南西にある私の本体がいる国だーーー




 イヤーな繋がりが出来て来たなぁ。


 魔法とは言っているが祈祷師らしい、術に攻撃特化した物が多くそう呼ばれているそう。


 「ジミリカって聖職者が少ない?」


 祈祷師だけ減るのは可笑しい、念のために聞きながらドアを開けた。


 ーーー少ないと言うより嫌っているな、主も苦労していたーーー


 「ふーん、お、来てる来てる」


 体型は母さんと同じで服をお願いしたらホントに来たけどこれは巫女服だよね、最近着なくなった奴だ。


 電話は繋がらなかった、電波が頻繁に切れてるようで番号が入れれなかった、ネットは一瞬間隔でリトライするためか繋がるけど。




 着替えを説明しながら生地を確認すると手織りで念が入れてある、さすがだよ、有難う。


 「それじゃあお湯の使い方も解ったよね、このドアは僕が閉めたら開かなくなるから上がったら待っててね」


 人が入っていると向こうでは見えても触れなくなるらしい。




 「何で嫌ってるの?」


ーーーぬう、太一に言わぬのは道理に外れるかーーー


 「?」


ーーー西隣のケール国が酷い神聖主義国でな、それと例の収術塊、あれが来て我とも悶着あったからなーーー


 最後は横を向いた、母さんが持ってた銀色のキューブだな軍事国家が有れを見つけたらそりゃぁしつこかっただろう。


 


 「話し合いは?」


ーーーその前に巨大黒猟になった邪氣に襲われてちりじりに逃げていきおったーーー


ーーーそれよりも腹に妖気が有るのは本当かーーー


 「うん、活力を食われたから」


ーーー人造聖女か聞いたことが無いと言っている調べてくれとーーー


 帰してくれないくせに。


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