第18話 拘束された
今日は月齢十二日だったかな?、月がかなり細いせいか僕の気力も落ちている。
銀の陽体に憑依される前よりも気弱になっている気がする、少し露出が多い私服の美人が長い髪を後ろに回す仕草をまともに見れない。
「ご馳走様、そうだ、目的を忘れていたわ」
カップを下に置いてこちらを伺う彼女を見る、そりゃそうだ、話が聞けたから納得してたけど。
「出来たらここから離れるか見つからないようにして、特に聖騎士に」
それは無理そうだよ、後ろにいるもの。
「団員がここで何をしている?」
聖騎士は全員騎士爵以上の爵位持ちらしいけど、声が横柄だな。
「あ、え、ああっはいっゲレダ様!、こちらは御使い様で太一様です。お話を伺っておりました」
白に金の装飾の入った鎧の男が片膝をついたカナさんを明らかに見下している、駄目なやつだな。
銀の装飾の兵が三人来た、近づく前に立ち上がってドアをしめる、小さいドアだし斜め左から来た騎士たちには良く見えなかったはず。
「何を隠したっ!」
正面に居たゲレダは別だけど、そう思いながら目を直視してしまった。
「二度言わせるかっ!!」
がつっ!。
顔面を殴られたけど痛そうだな徹甲を抑えて後ろに少し下がっていった、腹じゃなくて良かったぁ。
「こいつは術師かっ、捕まえろぉ!!」
「おやめ下さい、彼は御使い様ですっ」
「御使いは女だろうがっ、第一いらんわそんな物!!」
なお言い募ろうとしたカナさんに手のひらを見せて止めた、何時でも脱出は出来そうだし。
嫌がらせのごとくキツく後ろ手に縛られたけど何も感じない、大丈夫そうだ。
「すみません、すみません」
村の収容所に着くまで何度もカナさんが謝ってくれたけど迂闊なことは言えないし困ってしまった。
退魔石の付いた首輪を付けられたけどやっぱり僕には効果がないみたいだ、服を着たお腹とかだとどうなったんだろう。
収容所は小さめの小学校みたいな感じで手前に各種施設が有り奥が収監棟になっているみたいだ、呪氣が凄い。
呪氣と言うと聞こえが悪いけど只の名前だから、御経なんかもこれに含まれる、式神作りには必須になる。
入り口で離れていく銀飾鎧を一人連れた金飾鎧を観測すると吐き気がするほど綺麗な薄灰色、人一色のろくでなしかも知れないな。
聖騎士たちは位置的には呪術師に近いな、聞いた範囲だけど
時計の文字盤で例えると欲が零時、六時が星や石になる、呪術師は五時半ぐらいで要体は六時半、容易に染めることが出来る。
この世界に祈祷師はいないらしく攻撃特化の術師になるそう、つまり聖騎士がいないと氣を操る人がいなくなり何が起こってもおかしくなくなる。
出来るだけ祈祷の文化を広めるのもいいかもしれない、カナさんが三時の位置で丁度良いんだけど。
収監棟に向かう途中で黒い服のおじいさんと会った、十字架に似ている物を掛けている、神職者なら十時の位置ぐらい?。
居るじゃないか、そうだたしか鎧に聖氣を込めていると言っていた。
人廻りが祈祷師で陽体廻りが神職、氣の巡りは同じはずだ。
「おや、これはよくお越しいただきました」
おじいさんが僕の胸元を見て呟いた、後ろの騎士に何か感じたようで小声で。
服の中の勾玉は少し小さく薄くなっているから目立たないはずだけど氣を探られたかな?。
「先日はよい供物を頂いて皆喜んでいました、ありがとうございます」
軽く会釈して僕の後ろに気を向けてから続けた。
「騎士様よろしくお願いしますね、それでは良い一日を」
「お、おう」
後ろの鎧が一瞬ビクついた、熟練者にはかなわないよね。
おじいさんが隅の白い建物に向かって歩いて行った、窓にマル君が見えた、元気そうだ。
収監棟には行かずに右の方にある小さめの豆腐建築の方に向かった、薄汚れた呪詛の残りが見えるぞ。
いつの間にか金飾鎧が戻ってきている、報告と何か下卑た感じの匂いがする、メイルを被って何か隠してるみたいだ。
入ってすぐ左の部屋、十二畳ほどの部屋に入れられて椅子に縛られれた、足が幾らか前に出る形になっている、知ってる、拷問椅子だ。
僕の横に金飾鎧ゲレダが来て後二人が泣き叫ぶカナさんを連れてドアの方に下がった。ろくでなし決定。
オカルト動画絡みで幾らかは知っている、どS野郎は服の上から加虐しないらしいからにっこり笑ってカナさんを落ち着かせる。
「調子が良さそうじゃないか、ぇえっ」
その後一応尋問されたけど答える内容もないわけで、半袖、半パンの僕の急所は次元の理と言うチートに守られて数回の暴力も何も感じず愛想をする理由もなかった。
最後にハンマーで脛を殴りつけて手首を捻ったのか両手を体で包むようにして蹲った。
今の僕はこの結末の持って行き方を考えている、拷問をマル無視して。
一応状況は一つの答えに向かっている、いくら異世界でもこれはない。
「見て、見て、ちゃんとっ、ほらっ。聖氣入りの武器でも傷一つできないじゃないっ分からないのーーー!!」
ゲレダがヘルムを落として銀髪を乱れさせ荒い息をしながら眇めでカナさんを見て立ち上がった。
パーーン!。
フルスイングの平手打ちだやりやがった、この状況での危害は帰す気が無いことを意味する。
だけど人の命だ、かなりきてしまったけれど何とか耐えた。
それなのにまだ続きがあった。
「貴様らが間者じゃない証拠を見せろっ!」
一級品の卑怯者だ、無いものを見せろと平気で言う。
しかしどうしよう、此処まで来たのもこの言いがかりを回避したかったからなんだけど。
「セグナっ、ここでその女の身体検査をしろっ必ず密書があるはずだっ!」
「は、はいっ」
一人は女性だったのかっ、それなのにここで?!、いけない、例の裁判の処刑器具を思い出した、呪ってはいけない、駄目だ。
呪いは人の心を容易く均一化する、落ち着けいつでも助けることが出来る。
胸がむず痒くなった、そうだこいつがいた!!!。
ーーーー聖に入り俗なるを散らせ急急如律ーーーー
「貴様はしゃべるなーーっ」
ごきんっ!。
学習出来ない奴だなぁ、ハンマーで僕の頭を殴って蹲ってる。
ぐおおおるるるる。
「うわぁぁぁぁっ!!」
「ひいっ、なに?なに、どうして?」
「貴様らうるさいっ・ひぃ」
蹲っていたゲレダが顔を上げて息をのんだ。
僕も驚いた大きさが前と全然違う、この部屋の半分を占めている銀色の獣。
「久しぶり、銀」
ーーー遅いわーーー
「森獣様っ!!」
カナさんが歓喜の声を上げる。
再開の間もなく銀がゲレダを窓から外に放り出した。
ガッシャーン、ドザアーゴロゴロ。
「いきなりだね、話を聞いてからでも良かったのに」
束縛帯を引きちぎって歩み寄ると銀がため息をついた、なんだろう?。
ーーーー奴の右手を見ろーーーー
窓に近寄ってみると紙きれを持っている、ああっ、仕込みかっ!。
「森獣様、森獣様、何がいけなかったでしょうか?」
「お静まり下さい、なにとぞ」
二人の銀飾鎧がヘルムをとって手を合わせている、二人とも女性だった、あの野郎なら有り得るな。
「どうしたーっ、何があった」
銀の鎧に白い装飾の上品な鎧に赤い線が入った肩当を付けた男が建物から出てきた。
その遠く後ろから鈴木君も飛んできている、忙しいな。
「あ、あのう太一様?」
窓に足を掛けたまま振り返ってお願いをする。
「ゲルダの右手に証拠が有るから確保して、それと老神父もグルだと思うから調べて」
段取りはゲレダとして要体を仕込んだのは誰かってことだよね。あのタイミングで子供二人が村外れに居たことも考えると怪い。
「「「はいっ!」」」
僕は靴を脱いで足裏に教わった術を掛ける、祈祷師はどうしても陽の術を纏わす、そうすると星の陽氣に吸い取られるそうだ。
向こうの理に居るのに僕の移動が遅いのはそのせいだった。
ーーー陽を含め陰を纏え急急如律ーーー
足の裏に何も感じなくなった、力を籠める。
一気に百メートルはジャンプした、龍が急ブレーキをかけてとどまった、丁度その辺に落ちるな、銀もきている。
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