第14話 即身仏
日曜日に誰も連絡が来なかった、後片付けやら、丸井眼鏡店に行って話を聞いたりしていて気にしていなかった。
目が元に戻って裸眼で登校できると喜んでたのに、こうなるとは。
「
「お気付きなっただろうか?暗闇に光る眼を持ち十数メートルを一飛で飛んでくる存在を」
「本当に70キロは出てたんですよ、それを買い物自転車で簡単に追い抜いて行ったんです、ドラレコの映像見てくださいよ」
「ホントなんですよー、あたしたちの彼氏が走り屋してて誘われたんで夜中に来たら足が四本の目が光ってる獣が頂上から駆け下りて来たのよ、ほらっ、ここ、此処に映ってるでしょ」
「ほら~太一ぃ、この自転車さー」
「太一さん凄いです」
「僕が気になるのはさー、背中の人だれ?」
「おまえ骨が伸びるのか?、それならそうと言ってくれ今度大きくなって一手頼む」
顔を手で隠して懇願する。
「ごめん許して、ほんとに」
世は正に大映像時代だ。それと茂田次郎!、言葉を選べ。
「ほら皆先生来たよ」
「起立ー、礼」
「おはようございます」
現国の山見先生は小さい、その上ロングヘアーなので日本人形みたいだと言う噂を良く聞く。
声も当然高くて可愛らしい、何時までも聞いていられる。
昨日僕も連れ出されて話を聞いた、母さんが元の時間の話は出来るだけしないでと言ったので全部じゃないはず。
まずあの船は国からのレンタルだそうだ、当然と言えば当然だ。
其のせいと言うかお陰と言うか、持ち込む物は厳重にチェックされるそうでレーザーは規制物扱い。
最初に手を掛けたのは良子さんの曾祖母キヨさんの姉、加々島坂代さん、この人が紹介した縁で佐一郎さんが結婚するはずだったそうだ。
その後まんまと来た敬一郎おじさんを見て欲が出た、今直ぐ力を手にしたくなった眺目がワームガンで拘束して船に拉致した。
そして力を貯めこもうとあのキューブを作ったそうだ。
実体のない物なら持って帰れると考えたらしい。
目しか動かせないオジサンは、アンジーさんが何とか逃がそうとしているのを見て覚悟を決めたのか、息しか出来ないはずの肺でキューブを持って来てと声に出して頼んだ。
眺目たちが勾玉の確認をしようと忙しくしている中で何とか持ち出すと氣で固めて何処かに消したそうだ。
母さんが言うにはあちらの世界に飛ばすときに歪を滑らせて座標的には母さんの元にちゃんと来たと。
母さんが誇らしく話すのを初めて見た。
流石に飛び石みたいにこちらには来なかったせいで向こうで苦労したらしいけど。
ついでに件の獣の事を聞いたら名前が銀と言う聖獣だと教えてくれた。
ただ本体ではなくて陽氣の固まりで妖怪に近いそうだ。
それで陰の邪氣と争って完全な陽体である石に成ったんだな。
最後に助けてくれた理由があるにか聞いたら明確には分からないそうだ。
お礼まで言われたんだけどね?。
解った範囲で語るとこうなる、整える土地を持つ聖獣は基本的に土地を移れない。遠くで母の氣を感じても簡単には向かえない。
オカルトで言えば生霊だろうか、やがて化身を作れるようになった。
消えては現れる氣とずっと蟠る氣が有ったのでそれに向かって化身を向かわせて長い旅の後ようやく見つけそうになったら、あいつらに食われたのか全ての気配が消えた。
それから四年、その場で陽体を散らしながら待っていた、マーブルの勾玉からのイメージはそんな感じらしい。
心残りが母さんなのか紅色の勾玉なのか聞いてみても胸の勾玉は何も答えなかった。
手掛かりがなにもないので簡単に行動しない方が良いよね。
そうか、急に力が減ったせいでバランスが崩れたからあの時、僕が呼ばれたんだな。
母さんが最後に呼ばれたのは五年ほど前のあの日でその後で問題の呪物が来たはずだ。
因みに僕の外泊禁止は呼ばれたときにどこに落ちるか分からないからだそうだ。
幾らかは大地の氣が導いてくれるけれど無茶はしてくれないらしい。
この町と向こうの町の位置関係は大体掴んでいると言っていた。
今度呼ばれたら走って確認して来いって事だと。
北海道だぞ無理だろと思ったら、聖獣同士のつながりである程度分かるので二三の土地に行って確認すればいいそうだ。
鈴木さんの言葉を思い出せば確認は必要だと分かるうん、しょうがない。
スマホをペン付きの物に変えよう。
聖獣の力加減はどうなのかも聞いた、前回龍の鈴木さんが辛そうに見えたからだけど二度目は大丈夫らしい、氣の質を合わせるのが大変だと。
特に祈祷師は陽の側の術を使うために少し混ざる、氣の色が紫なのはその為だ。因みに祈祷師の真裏は妖怪だそうだ、まじか。
地球は人間が複雑なおかげで陰陽の天秤の動きがとても穏やからしい、対して向こうは埃一つで傾くほどシビアなんだとか。
間違ってはいけないのは穏やかとは事が起こると修正がしにくいと言う面も持っている。
だから気を付けないと修復不能になる可能性があると釘を刺された。
「太一、おいっ、斎藤が困ってるぞ」
「あ?、ああっごめん、これ対の着物無かった?」
放課後に帰る準備をしていたら古着屋の斎藤 隆に呼び止められて古い子供用の襦袢を見せられていたんだった。
「いや、来たのは半月ほど前らしいけど聞いてないよ?」
「そう?、これ自体は大丈夫だよ、払えたから。」
「サンキュウッ、これ飲んでくれ、有難う」
そそくさと襦袢を手提げ袋に詰めて頭を下げながら帰っていく斎藤を見送った。僕に頼むのを余り知られたくなさそうだ。
「ちゃんと四本あるー」
良子さんが脇から出てきた、サービスしよう、あれ?後ろめたいこと無いよな。
「二郎さんは放課後居ませんものね」
志路さんも横の椅子を持ってきた。
今度は冷静に机に手を入れて、こちらでは扉に関係なく中を弄れる、クッキーの箱が有った。
コーヒー牛乳のパックとクッキーで小腹を満たすか。
「大ちゃんなんか不思議そう?」
懐かしい呼び方するね良子さん?。
「大ちゃんって何ですか」
志路さんの目がきりっとしてる。
「ふっふーん」
「小さいころ太いって読めなかったんですよ」
「そう、そうなんですね」
「で、何が不思議なんだ?」
有難う、なんか有難う重太。
「即身仏って知ってる?」
「高何とか山」
「空何とかさん」
「いや具体例じゃなくて何をなしたか」
「欲を絶って、何も食わず飲まずに座禅を組んだまま召されたんだよな?」
「そう、父さんが言うには折角、陽の域に行ったのに戻って来ることの方が多いらしいけど」
「え、戻るって」
志路さんがパックにストローを刺しながら聞いてきた。
「成功すれば亡くなる刹那に仙人やひょっとすると聖人に成れるんだけど・・・・」
「辛いものなぁ」
クッキーを食いながら言うと説得力が上がるね重太。
「おかしくなってそれを飛び越えて妖に成る事も有る位に」
「わかった!!、そんな氣が付いてるのにあんなに簡単に散らせるわけ無いよね」
良子さん正解。
「まあ、他にないそうだから安心だよ」
「そう言えば二郎県大会出場決まったって」
「此の間の試合は二位だったっけ?」
「なんで太一が勝てるんだ?」
「太一さんは古武道の指導を受けてますよ?」
「僕は見たもん、持ち上げるだけで投げ終わってたり、手が有り得ない曲がり方したり・・うぐうううぅ」
良子さんの唇柔らけぇ、くそ、駄目だよ情報は力を生むんだ、習ったでしょ。
「はははは、駄目だよ皆、母さんに怒られるよ?」
良子さんが真っ赤になってこくこく頷いているから手を口から話した、この手どうしよう?。
良子さんが志路さんに長し目を送っている、なんだ?、何か怖いぞ。
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