第6話 仮説
それから数分後、私はサーニャが待つホテルにたどり着き部屋の中へと入る。
「お帰り、買ってきたのはその辺に置いといて」
サーニャは私が帰ってきたのを気配か物音で察したのか、私の事を一度も見ずにお帰りと言った。
買った物をテーブルの上に置いている時にサーニャが真剣な顔でA4サイズの紙に何か書いている光景が目に入る。
その紙は遠くから見ても分かるぐらい大量に何かが書かれており、サーニャは万年筆で斜線を引いたり何かを書き足している。
「サーニャさん…それってなんですか…?」
「これはロゼッタがどういう状態なのかの仮説を立てて、魔法で解決出来ないかをこの紙に書き出してるの」
「見てもいいですか…?」
「いいよ、殴り書きだけど」
私はサーニャに何かを聞き、紙を見てもいいと許しを得た。
紙袋を畳み、テーブルの上に置くと私はサーニャの隣へ移動してびっしりと文字か書かれた紙を見た。
中身は詳しくはよく分からないが、解読できるものでいうとロゼッタの魔力のコントロール方法や気配の消し方と持ち時間、どの町で痕跡が見つかったか、どの位見つかったかなどサーニャなりにロゼッタの事を書き出しているようだ。
サーニャもロゼッタの魔力がどれほどのものか想像付かないからだろうか、魔力の消し方の持ち時間の予想時間3分の上に斜線、6分の上に斜線…6日…一ヵ月…と彼女が予想したものが全て斜線されている。
普通の魔法使いなら長くて一日が限界なのだから、ロゼッタの魔力は予想出来ないのだろう。
「これって、基準ってあったりするんですか?」
「基準?ないけど。というか、ロゼッタの魔力量は一般的なのが一切適応されないから大袈裟に予想立てなきゃだめなの」
「大袈裟に…」
「そう」
私はサーニャの言った「大袈裟に」というワードになぜか恐怖を感じてしまった。
サーニャと出会う前の町で何気なく取った依頼書、数分前に会ったロゼッタ…。私は彼女を殺さなければいけない…。
どうやって?どうやって殺す?自分から触れる?出来る?魔法でやるしか?魔法を当てられる?当てられたとして、どうなる?ダメージは入る…?
そもそも…ロゼッタの事を私は殺せる?
色々と考えたところで答えは一つだ。私は、ロゼッタを「殺せない」。
今の私の魔力ではロゼッタにかすり傷を与える事すら無理だろう。
それよりも、私に人殺しなんてできるのだろうか?
数分前に会って、魔法を教えてもらった相手だ。そんな相手を殺せる?
「エイミー…?エイミー?」
「…っあ…!すみません…」
「あんた大丈夫?急に深刻そうな顔してぶつぶつ言い出したと思ったら、呼んでも反応しないし…。今日は休んだら?」
「…は…はい。すみません…」
私は気づかないうちに一人の世界に入ってしまったようだ。
いつものあれだ。何度もやめようと思っても勝手にやってしまう。本当に嫌になる…。
私はシャワーを浴び、サーニャに「おやすみなさい…」と言うとベッドの上で寝る事にした。
サーニャは「うん」とだけ言い、ロゼッタの仮説立てを再開させた。
Magical Reve ~A Cruel Promise~ 柏木桜 @spesio
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。Magical Reve ~A Cruel Promise~の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます