第4話 初めての試練①

次の日…。


私は目を覚ますとサーニャはすぐに移動できるような格好になっていた。


「あっ…!ごめんなさい!すぐ準備します…!」


「いいよ、ゆっくりで」


私はサーニャに謝ると彼女は私の事を見ないで少し強めに言った。そして、小瓶に入った液体を飲み干す。

おそらくだが、サーニャは建前でああ言っているが本心は少し怒っているのだろう。弟子になった初日から失敗したな…と後悔しながら急いで身支度を始める。


「終わりました…!」


「うん、じゃあ行こうか」


サーニャに大丈夫だと伝えると彼女は数分前と同じように一言だけ言い、歩き始めた。

私はどこに行くか分からないのでとにかく付いていく事しか出来なかった。


森を抜け、私達は歩き続けた。

サーニャが先頭のため、とにかく付いて歩く事しか出来ない。


時折質問などして分かった事だが、サーニャが師匠のロゼッタを10年以上探して分かった事は「どこにいるか分からない」と言う事だ。


最初聞いた時私は頭の中に?マークが浮かんだが、サーニャはロゼッタを探す為に大きな街、小さな町、森の中、廃墟などさまざまな場所を何度も何度も回り、次の月に再び訪れたりもしたが見つからなかったらしい。

魔法を使ってロゼッタの動きなどを調べたりしたが、それすら出てこない。亡くなったと仮定してロゼッタの死体をも探したがどこにも出てこない。

ロゼッタはサーニャに認識阻害の魔法をかけていたのだろう。


だから、サーニャは魔法など使わずロゼッタを見つけだすのを何年も続けているらしい。

もう生きていないのでは?と思ったが、魔法学校で習った「魔法を使用した者が死亡した時、同時に魔法も解除される」というのを思い出した。

もしロゼッタが「それを」変える魔法ができる人でなければ今もどこかで生きているという事になる。


なぜロゼッタはそんな事をしてまで生きているのだろうか?

不思議で仕方ない…。


そんな事を考えながら歩いていると、私達はとある町へとたどり着いた。

この街の名は「モルベルン」というらしい。

おそらくだが、サーニャはこの街を何度も訪れているのだろう。


「よし、それじゃあエミリー。あなたはこのリストに書かれている物全て買ってきて」


サーニャは買ってきて欲しいものが書かれているメモ用紙を私に渡した。


「はい…!ってこれ全部ですか!?」


「そう、これ全部。あなただって見習いでも魔法使いなんだから頭で考えればどうすればいいか分かるでしょ?じゃあ、私はそこのホテルで待ってるから」


初めての試練だ…!と意気込み、中身を確認してみると、食料品や小物類など明らかに一人じゃ持ちきれない量の物が書かれており私は驚いたが、サーニャはそんな事お構いなしに指差した方のホテルへと歩みを進めた。


私は初めて来た知らない街でいきなり一人にされてしまった。

しかも大量の買い物リストを渡されて…。

困ったな…と思いながらため息をつくと、メモ用紙の裏に薄らと何か書かれている事に気が付き、めくってみると「ヒント 大きくて重いのなら…?」と「お金」と書かれていた。

私はよく分からず「お金」と書かれている所を触るとそこから小銭入れがヌルッと現れ、地面に落ちた。


「…?」


不思議に思いながら拾い上げ、中身を確認すると1000ペル(日本円で1000円)が二枚入っていた。

これで買えと言う事なのだろうか…?

私はとりあえずメモ用紙に書かれている物を探し歩き始めた。

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