第93話 魔物の生態系異常4
山脈都市マトンの外にある水エリア。そこに今回の魔物の生態系異常の原因と思われる『魔物ランクA ???』がいた。
しかし、その姿は魔物ではなく、ただの男の子だった。この状況についてスグルが考え事をしていたところ、突然エリーナが飛び出していった。
辺境の森の修行で魔物ランクAとの戦いをお預けされたからなのか、私が止めるヒマもなく、エリーナはここぞとばかりにお馴染みの風魔法 《疾風》を使って、男の子に戦いを挑みにいったのだ。
すると男の子は光に包まれて青いドラゴンに変身した。もしかしたらこっちの姿の方が本体なのかもしれない。
とは言え、このままエリーナと青いドラゴンを戦わせるわけにはいかない。なぜなら青いドラゴンは男の子の姿のとき、会話が出来ていたからだ。
敵対するにしても話せるのであれば、まずは話を聞いたほうが良いだろう。そうと決まれば、まずは現在進行形で戦っている2人を引き離さないとね。
「体術スキル《身体強化》」
2人を止めるにしても私が怪我をせずに迅速に対応出来るように、まずは自分自身を強化した。
準備を整えて2人の方を見ると、エリーナは剣術スキル《一刀両断》を使用していた。青いドラゴンはそれを避けると爪を強化するスキルを使用して迎撃の体勢をとる。
私は素早く移動してエリーナと青いドラゴンの間に入った。
「「!?」」
突然現れた私にエリーナと青いドラゴンは驚き、一瞬隙ができた。私はそれを見逃さずにそれぞれの体に触れ、続けてスキルを使用した。
「体術スキル《発勁》!!」
私の体内を気が駆け巡り、触れた相手に気を放つことで衝撃を与えるスキルだ。
身体強化で威力が上がっているので、万が一にも2人に怪我をさせないように注意をしながら技を放った。
エリーナと青いドラゴンは衝撃に耐えきれずにそれぞれ逆方向に飛ばされていった。
「2人とも、まずは話をしようか!」
私はそう伝えるが、興奮さめやらぬ様子のエリーナと青いドラゴンは体勢を立て直すと、すぐにでも攻撃に移れるように臨戦状態を維持していた。
うん、怪我はしていないようで良かった。
「師匠、このままやらせてくれ!今回の魔物騒動の原因だろうから、私に討伐させてくれ!」
「グルゥァァア!!」
エリーナは相変わらずの返答だが、青いドラゴンは何を言っているのかわからない。雰囲気的には『邪魔するな!』とかだろうか。
・・・んー、変身といてくれないかな。
「討伐するにしても話を聞いてからでも遅くないよ。青いドラゴンがどうしてこの辺に現れたのかわからないでしょ。青いドラゴンもいきなり攻撃してごめん!話を聞いて!」
「グルゥァァアアア!!」
「師匠!どいてくれ!」
青いドラゴンはお構いなしに攻撃を仕掛けようとしている。ドラゴン語はわからないが、雰囲気的には『うるさい』とかかな。エリーナは青いドラゴンを迎撃しようと、剣を構え直した。
(このままでは落ちついて話も出来ないな)
「はぁ・・・スキル《威圧》」
以前、辺境の街フロンダから山脈都市マトンに向かう商人の護衛任務をしたとき、私はトラブルに巻き込まれた。そのとき冒険者ランクCのランドにスキル《威圧》を使ったことがある。
スキル《威圧》は視界に入った人や魔物の中から対象を選んで、レベル差と込める魔力に応じて相手を怯ませるスキルだ。
ランドのときは相手が気絶してしまったが、冒険者ランクA相当のエリーナと魔物ランクAの青いドラゴンなら、気絶まではいかずに戦意喪失ぐらいで済むだろうと私は考えた。
・・・のだが。
「「バシャァン」」
エリーナは膝から崩れ落ちるように倒れ、青いドラゴンもその場で力が抜けたかのように横倒しになった。
奇しくも、ランドと同じような状態になったのだった。
・・・どうしてこうなった。
◇ ◇ あとがき ◇ ◇
人物紹介
【スグル】
主人公。
【エリーナ=ロンダルタント】
王都調査員の護衛騎士だったが、スグルに弟子入りを希望。冒険者ランクA相当の実力があるが、冒険者支援制度(師弟関係)を利用するために冒険者ランクFとして登録した。
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