第92話 魔物の生態系異常3
「もう少しで見えてくるよ」
「了承した」
水エリアに魔物ランクAがいることがわかり、私たちは周りを警戒しながら移動した。もうすぐ森エリアから水エリアに出るところだ。
森エリアが終わり、水エリアに入ると身を隠す木々はなくなる。そうなると、こちらから見えるということは相手からも見えるということだ。すぐに戦闘になってもいいように、私たちはそれぞれ武器を手にした。
「あれは・・・子供?」
「師匠、どういうことだ。魔物がいるんじゃないのか」
スキル《探索》を使用して近くの状況を確認してみたが、どうやらその子供が『魔物ランクA ???』みたいだ。
川で水浴びをしているようだ。見た目は私よりも幼く、8歳ぐらいの男の子だった。髪は青色で、服を着たまま水浴びをしたのか、全身が濡れている。
「そこにいるのはだーれ?」
「「!?」」
こちらの姿が見えたのか男の子は声をかけてきた。会話が出来るようだ。魔物と表示されたのにどういうことだろう。異世界転生小説では、こういう知能が高い魔物はすごく強いという展開が多い。気を引き締めながら返事をした。
「私たちは冒険者だよ。君はここで何をしているの?」
「ぼく?ぼくは水浴びをしているところ。ねぇ、これ以上、近づかないでね」
さて、この子の正体を探らなければいけないけど、どうしたものか。見た目は幼い男の子。会話も出来るようだし、魔物退治でいきなり戦闘というのも気が引ける。ただ魔物ランクAと表示されたからには強いの魔物なのは間違いないけど・・・
私が考え事をしていると、エリーナがニヤリとして剣を構えた。
「・・・風魔法 《疾風》・・・」
「ちょっ、待っ!」
咄嗟の出来事に私はエリーナを止めることが出来なかった。相手は魔物とはいえ見た目はただの男の子だ。会話が出来るのにいきなり敵対行動を取るとか信じられない。辺境の街フロンダで私と会ったときと同じ状況じゃないか!と呆れながらも、エリーナの動きを見る。
風魔法で加速したエリーナは、一瞬で男の子のところにたどり着くと、剣を上段から振り下ろした。
男の子は驚きはしたが、エリーナの剣に向けてそのまま右腕を上げた。普通なら腕を斬られてしまう動作なのだが、男の子の右腕に鱗模様が現れてくると『カキンッ』という音とともにエリーナの剣を受け止める。
「なに!?」
「いきなりなにするの!?ぼく怒るよ!」
そういうと男の子の体が光に包まれた。エリーナは自分の剣が防がれたことに驚き、警戒のために急いで距離を取った。
光に包まれた男の子の体は次第に大きくなり、体長というか全長3mぐらいで、体は青色、背中には小さな翼があり、四足歩行の構えでこちらに怒りの表情を向けている。
「グワアアァァァァ!!!」
そう、正真正銘のドラゴンだ。
鉱山エリアの兵は『ぐわぁー』という鳴き声が聞こえたと言っていた。実際に体感すると迫力が100倍違う。重低音の空気の振動が体の奥底に響き、確かに強い魔物の気配を感じる。。
「火魔法 《
「グワアアァァァァ!!!」
エリーナは9つの火の玉をドラゴンに向けて放った。青いドラゴンはそれを見ると、咆哮とともに水球を発生させ、火の玉にぶつけて相殺した。
火と水がぶつかり合うことで水蒸気が発生し、視界が悪くなったところでエリーナが青いドラゴンに向かって走り出した。
青いドラゴンはその場で1回転して尻尾を振り回すことで風を起こし、水蒸気を晴らすとともにエリーナめがけて尻尾をぶつけにいった。
「あまい!!」
エリーナはそう言うとすぐさま青いドラゴンの尻尾をジャンプで躱し、そのまま上段から剣を振り下ろした。
「剣術スキル《一刀両断》!!」
「ギャッ!!?」
青いドラゴンは、最初にエリーナの剣を自身の手で防いでいたが、スキルによる強化をした剣は危険だと本能的に察した。
エリーナの剣が青いドラゴンの脇腹に刺さりそうになると、青いドラゴンは体を無理にひねり、水飛沫を上げながら転がってエリーナの剣を避けた。
これによりお互いにまた距離ができたが、次の攻撃に移るべく、どちらもすぐに体制を整える。
エリーナは水飛沫が落ち着く前にその場を駆け出した。青いドラゴンも体制を整え、爪を強化するスキルを使用して迎え撃つ。
1人と1匹は再度接近して、今にもぶつかり合おうしていた。
そんな危険なところに、瞬時に割り込む存在がいた。エリーナと青いドラゴンの間に現れたのは・・・
◇ ◇ あとがき ◇ ◇
人物紹介
【スグル】
主人公。
【エリーナ=ロンダルタント】
王都調査員の護衛騎士だったが、スグルに弟子入りを希望。冒険者ランクA相当の実力があるが、冒険者支援制度(師弟関係)を利用するために冒険者ランクFとして登録した。
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