第16話 マジックバッグ

森の小屋に戻ると夕方だった。


畑から野菜を収穫し、アイテムボックスから肉を取り出して夕飯を作る。今日のご飯はフレイムバードの野菜炒めだ。The男飯。うん、美味い。


さて、マジックバッグを作るとするか。じいさんの倉庫を探す、というのはもちろん口実だ。


材料は革袋、クロックバードの魔石、私のスキルのアイテムボックス。まずは革袋にクロックバードの魔石を入れる。その後、スキルを唱える。


「《錬金術》合成レシピ、アイテムボックスレベル10付与、作成、マジックバッグ」


約1年の森での生活で見つけた作り方だ。クロックバードの魔石がなくてもできるが、その場合、革袋が劣化してしまい、1月ほどで使えなくなってしまう。クロックバードの魔石を付与することで、革袋を長持ちさせるのだ。いろんな素材を使用した結果、これが1番無難な結果となった。


そもそも私はスキル《アイテムボックス》を持っているから、それを使えばいいじゃないかという疑問が出てくるだろう。スキル《アイテムボックス》は確かに便利だが、珍しさのあまり自分自身が狙われる可能性がある。そのため、代わりのものとしてマジックバッグだ。マジックバッグなら、盗まれてもまた作ればいい。代えがきくのだ。もちろん盗ませるつもりはないが。


作成したマジックバッグに《アイテムボックス》から魔物ランクGの素材を入れていく。これくらいでいいだろう。明日の朝、納品しに行こうかな。




翌朝、冒険者ギルドの買い取りカウンターへと向かった。昨日の朝いたおじさんだ。


「すみません、買い取りをお願いしたいのですが・・・」


「はい。ここに素材とギルドカードを置いてください」


「マジックバッグに入っているので、かなりの量になりますが・・・」


「でしたら、横の通路の奥から裏口を出て、解体倉庫の方へ直接お持ちください。そこでもらった査定の紙をこちらに提出すると精算します」


おじさんの言葉通り、解体倉庫へと向かった。中に入ると買い取りのおっちゃんがいた。


「おぉ坊主、どうした?買い取りなら表のカウンターに行きな」


「今日は大量の素材がありまして、こちらで出すように言われてきました」


「マジックバッグでも手に入れたのか?そこの開いてるスペースに出してくれ」


おっちゃんに言われた通り、マジックバッグから素材を取り出し、そこへ置いた。どれくらい出しても大丈夫かな。横目でおっちゃんの顔色をチラ見しながら、ひとつずつ置いていった。


20体置いたところで、おっちゃんの顔がニヤリとした。いわゆる、頑張って取ってきたんだな、という温かみのある顔だろうか。


40体置いたところで、おっちゃんの顔が引きつってきた。いわゆる、えっ?まだ出すの?という驚きのある顔だろうか。


60体置いたところで、おっちゃんの顔が固まってきた。いわゆる、状況を飲み込めないときの顔だろうか。


・・・どうしよう。マジックバッグにはまだ素材が入っているけど、いったん止めておいた方がいいかな。うん、そうしよう。


「こんな感じでどうでしょうか?」


「・・・」


「あ、あのー」


「・・・はっ!すまん、これで全部か!?」


意識を取り戻したおっちゃんは、素材の査定に入った。しばらくすると、落ち着きを取り戻したおっちゃんが声をかけてきた。


「坊主、マジックバッグはどうやって手に入れた?元々じいさんのか?」


「はいそうです。倉庫を整理していたら出てきました」


「そうか、大事にしろよ。査定に時間がかかるからしばらくしたら戻ってこい」


じいさんの倉庫から見つかったという設定、我ながら便利だと思う。空想上のじいさん、ありがとう。今後も言い訳に使わせてもらいます。


その後、おっちゃんから査定金額を書いた紙をもらい、買い取りカウンターへと提出した。総額は銀貨2枚、小銀貨3枚、大銅貨5枚となった。


・・・これってもしかして、ランクアップ試験受けられる?

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