第3話 野次馬根性に年齢とか関係ないから。

あのあと家にこっそりと帰って寝て、普通に学校に行こうとした。

しかし、事件の関係で急遽2日間休みになった。

その間自分の気持ちを落ち着けていた。。

久しぶりの学校は、当然のように噂で持ち切りだ。

「おはよー、優護。」

誰かと話すと顔に出そうで、課題が終わっていない生徒を必死で演じていた。

「大竹、おはよ。」

目の前に経ったのは同じバスケ部の大竹だった。

彼はいつものように話しかけてきた。

「斗亜とこず恵の話、大変だよな。街頭インタビューとか始めて遭遇したよ。」

「答えたのかよ……。」

「いやいや、断って逃げたよ。今の時代、すぐ何かあったらSNSで拡散されるのに言えるわけ無いじゃん。」

「ああ、そう。」

「てか優護、珍しいな。いつも授業中に課題やるのに。」

「思ったより今回は苦戦してたんだよ。」

こず恵も斗亜もデートは絶対に市外、電車とバス乗り継いで行くような場所にして、待ち合わせも現地にしていた。

クラスでは話さない、電話はするなら親が寝ているかいないとき。

文面のやり取りは後々の証拠になるから話は全部電話か、デートのたびにしていた。

バレていない。顔に出したら今までの努力は水の泡だ。

でも、怖い。

遺書に書いていたら……?

死人に口は無くても、遺書は残る。

ならば、誰よりも早く遺書を見つけて処分しなければ。

「……そういえばさ、こず恵って怪我の度合い軽かったらしいよ?」

「ひょ?!」

あまりにも驚きすぎて変な声が出た。

さっき決意を固めたばっかりなのに。

「死んだんじゃなかったのか?」

「優護も信じてたのか。デマだよ、デマ。」

「意識は?」

「さあな。こず恵も斗亜も誰とも連絡しないらしいからね。まだ意識戻ってないんじゃない?」

「……そうか。」

心臓が痛いくらい鼓動が早まるのを感じる。

今、この瞬間も何もバレていないか。

気をつけなければならない。

いや、本当に勘弁してくれよ。

人に二股の話がバレたらどんな目で見られるのか。

「ほらー席につけー。」

教室に担任が入ってきた。

大竹は隣の席に座った。

「すでに連絡したが、この学校で騒ぎがあった。」

淡々と話す。

「事実確認の最中だから外部には話さないように。もし、知っていることがあれば僕ら教職員にーー。」

誰も彼もが、嬉々とした目でお互いを見る。

こんなものはただのゴシップだ。 

どこから漏れたかわからないが、やっぱり付き合っていたらしい。

何から何までおかしい。

俺ってもしかして、騙されていた?

二人が付き合ってたということ?

俺と二股してた?

顔色が悪かったのか、大竹が声をかける。

「おいおい、優護。体調悪いのか?」

「昨日からちょっと具合がよくないだけだよ。」

「保健室行ったらどうよ?今日、小テストとかないはずだし。」

たしかに、大竹から見て顔色が悪いなら他のやつから見ても同じだろう

「ああそうだな。」

俺は立ち上がって

「体調悪いんで保健室行きまーす。」

それだけ宣言してさっさと教室を出た。

授業の声だけが響く廊下を歩いて保健室に入った。

「あれ?誰もいない?」

どうやら保健の先生は離席しているらしい。

「とりあえずは、現実はちゃんと見ないとな。」

ため息をつく。

一番近くの保健室のベッドに転がって欠伸をした。

「……今、わかることだけでも調べておいたほうがいいよなあ。」

ぼんやりと思考を巡らせる。

警察や学校のほうがすでに色々調べ終わっているだろう。それでもできることはしなければ。



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