第2話 高校生の自己認識って地獄か?

こず恵は大人しい子だった。

いつも1人で教室の隅で本を読んで過ごす。

でも、人一倍「自分だけら特別」と思いたかったらしい。

彼女にとって優れてることは、勉強ができること、運動神経がいいこと、お金があること、そして恋人がいることだった。

おそらく、恋人がいる人間があまり多くないこの環境学校で「周りには自慢しないし、積極的には話さないけど恋人がいる」っていうのは優越感を覚えたはずだ。

俺も人より優れている証拠がほしかった。

そういう意味でとてもそそられた。

恋人は手段だ。

でも、ちょっと違う。

その彼女に対して黙って別の恋人がいることが何よりも優越感を覚えた。

斗亜は、「恋愛に興味がある女の子」だった気がする。 

いや、本当は性に興味があるけど誤魔化すための恋愛だったかもしれない。

付き合ったのは、こず恵が先だが初めては斗亜だった。

色々考えたが、一番最悪なのは俺だ。

でも、斗亜もこず恵も酷い。

俺と付き合ってた癖に何、考えてやがる。


「はあ……。」

また自転車を漕ぎ出す。

田んぼ道の中、カエルの合唱がこだまする。

こず恵のことも、斗亜のことも嫌いではない。

多分、恋愛的にも好きだ。

こず恵は一緒にいると安心する。

勉強は教えてくれるし、デートも率先して誘ってくれる。

学校では地味だが、私服はかわいい。

そして、1番嬉しかったのは俺に一途だった。

俺には斗亜がいても、こず恵には俺しかいない。

それが最高の優越感だった。

きっと他の誰もできないことをやっている、それだけで日常が輝いて見える。


斗亜は、いわゆる不思議ちゃんだった。

クラスの人間誰とでも話すが、誰とも若干距離があるとつねに感じていた。

いつもふわふわしていて的を得ない話し方にも原因があったかもしれない。

斗亜が俺に告白してきたとき、「付き合ってること誰にも言いたくない。」というから喜んで承諾した。


それって誰にもバレずに二股ができるってことだから。

でも、それが偶然でこんなことになるのか?

もしかして、隠しておきたいことが周りにバレたとか?

「あ……。」

俺は急に不安になって携帯のメッセージアプリを一通りを確認した。

友人、家族、クラスメイト、部活の先輩、一つ一つ丁寧に確認する。

特に変わったことはない。

隠しておきたいことは俺も一緒だ。

メッセージを見る限り、俺の見えるところでは二股の話は出ていない。

一安心すると同時にため息をついた。

「これからどうしよっかな……。」







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