set up you

せっとあっぷゆー

　さぁ、脱ぎ捨てよう。

　本物の服も、心の服も、顔の仮面も。

　すべて、すべて、脱ぎ捨ててしまおう。

　現れた姿に、鏡越しのあなたはガッカリするでしょう。

　光の消えかけた瞳。

　くすみと荒れた肌。

　傷んだ髪の毛。

　瞼の下のクマ。

　どれも、これも、こんなはずでないのに。

　あの頃はこうじゃなかった。

　あの頃はそうじゃなかった。

　あの頃は、あの頃は、あの頃…。

　恐ろしいほどの苦しみに。

　恐ろしいほどの悲しみに。

　恐ろしいほどの怒りに。

　鏡の前で苛み佇むあなた。

　本当に、一日、お疲れさま。

　たくさん頑張って。

　たくさん我慢して。

　たくさんをやり遂げて。

　たくさんを守って。

　誰でもない。

　あなたにしかできないことを。

　今日もしっかりやり遂げました。

　あなたの代わりなんていません。

　あなたは世界でたった一人のあなたなのだから。

　その身を癒すため。

　その身を整えるため。

　ゆっくりお風呂に浸かりましょう。

　柔らかなシャワーでも良いのです。

　じっくりと時間をかけて。

　いつも以上に時間をかけて。

　お湯を、ぬるま湯を、水を、その身に浴びましょう。

　こびりついた垢を落とし。

　固まったこころを溶かし。

　隅々までの疲れを。

　すべて流してゆきましょう。

　涙を流し。

　声を上げ。

　汚い言葉も吐きましょう。

　誰にも遠慮しなくて良いのです。

　たくさん溜まったものを。

　たくさん詰まったものを。

　たくさん付いたものを。

　たくさん、たくさん、落としましょう。

　全てを流し終えたなら、素敵な香り、お気に入りの香りを身にまとい、水滴をすべて吹き上げて、お気に入りの布に包まれて、柔らかい寝床に入りましょう。

　夢の海に漕ぎ出でて…。

　癒しの海を漂って…。

　ゆっくりと…。

　ゆったりと…。

　瞳を閉じて眠りましょう。

　明日はやってくる。

　でも、それは仕方のないこと。

　だって、あなたの命のある証だから。

　だからこそ。

　体を癒し。

　心を癒し。

　そして、新しい、懐かしい、夢を掴むため。

　ほんの少し変化を加えてみよう。

　大丈夫、あなたにはできる。

　これだけ頑張っている。

　あなたがいるのだから。